日下部保雄の悠悠閑閑

中国クルマ事情

中国の都市は色とりどりのLEDでライトアップしているところが多い。これは宿遷市のホテルからの夜景です

 中国にはAJAJ会員で行った北京モーターショーの取材が最後だったからもうずいぶん前のことだ。その中国にショックアブソーバー、TEINの取材に行ってきた。中国は数年で変貌すると言われており、1990年代の半ばから2010年代の20年間でそれを実感した。

 中国には簡単に行けた時代から、今はVISAの取得や中国版LINEであるWeChatへの登録など戸惑うことが多かったが、TEINの手助けもあって四苦八苦しながらも申請書が完成して無事にVISAが取得できた。慣れないこともあり大変でした。

 久しぶりの国際線は中国東方航空。初めて乗る飛行機はエアバス320で、小型でポピュラーな飛行機らしい。上海までは3時間強で沖縄より少し遠いぐらいだ。

 入国審査はそれなりに厳しく行列も長いが、ま、こんなものかな。

 上海から約560km離れた江蘇省宿遷(しゅくせん)市までの移動は、トヨタ・コースターで約6時間の旅。中国の歴史小説に何度も登場する徐州はさらに西へ100km。それでも中国の地図から見るとほんのわずか線を引いたに過ぎない。中国は広い。

平地が多い中国では広い川がゆったり流れ、しかも多い。古代から水運が発達したのも分かる

 おかげで道中いろいろなクルマを見ることができた。以前の上海は日本車とフォルクスワーゲンが多くを占めていたが、今回の道中では圧倒的に中国ブランドが増えていたのに驚いた。

 中国には50社ともいわれる自動車メーカーがあるとされ、大手だけでも10指を簡単に折ることができる。さらに競争は厳しくなっており全く見たこともないクルマばかりだった。

 上海、北京、広州などの巨大都市では青ナンバー(ガソリン車)を手に入れることが難しく、緑と白のグラデーションの電動車(BEVとPHEV)はすぐに発給される。電動車の補助金はいったんなくなったが、電動車が数を増やしている理由の1つだ。

電動車ナンバー、白にグリーンのグラデーション。デザイン的にはちょっとと感じたけどどうでしょう

 1級都市と呼ばれる大都市以外は青ナンバーの取得はそれほど厳しくなく、人口700万の宿遷市では青ナンバーが圧倒的に多い。それでも電動化の波は大きくなる一方だという。

 気になる充電網は上海では大規模急速充電基地がかなりあるものの、地方に行くとそれほどでもないように感じた。今年春節では地方移動で大規模な充電渋滞が発生したと言われるがそれもありそうな話だ。

上海では電動車が青ナンバーを上まわっているが、地方都市ではガソリン車を示す青ナンバーが多くなる

 上海で見かけたカローラも日本にはないPHEVだったが、政策として中国メーカーとの合弁で中国に進出していた日系メーカーのシェアはかなり落ちている印象。中国メディアとの対談では若年層ほど中国メーカーを選ぶ傾向が高く、日系メーカーの購買層は年齢が上がっているという。どこかで聞いたような話だ。

 その中国メーカーはコピー車は急激に姿を消し、今ではオリジナルデザインで各社が存在感を示している。今回ハンドルを握ったのはTEIN試乗車の吉利汽車(GEELY)やBYD SEALだけだがその実力はかなり高い。かつての日本車のコピーから脱して新しい道を歩み始めている。問題は信頼性や経年変化だが、エンジンやトランスミッションがないだけに彼らには追い風が吹いている。

宿遷市で見かけた新車の3輪車。超小型の3輪車はよく見かけるが小型車に相当する3輪車は初めて見た。BEVかは確認できなかった

 さて、中国では地方に行くほど高層マンションが林立する。が、人の気配がない。よく見ると建設中で中止していたり、完成しているように見えて中がガランドウだったりする。エアコンの設置もない。

地方に行くほど高層マンションが立ち並んで壮観。ただ人が生活している気配がなく、マンションバブルを目の当たりにしてショックだった

 日本でも報道されている、深刻なマンションバブルを実感した瞬間だ。一説では人口の3倍のマンションが建っていると言われるから、スケールの大きさはすさまじい。世界経済にも影響を与えるこの問題はこの先どうやって収束していくのだろうか。

 中国雑感はまた今度。感じたのは長い歴史の中で中国人民はしなやかに、したたかに生きているということだった。

まだお店も少なく、平日の夕方で閑散としていたが、美しい古い蘇州の街並みを伺い知ることができる
蘇州は水路の発達した都市で、それを利用した池も再現されている
中国の人はゲームが大好きで、時間があるとカードやサイコロ、将棋などをしているそうだ。このお2人の勝負はいつ決着するのでしょうか?
日下部保雄

1949年12月28日生 東京都出身
■モータージャーナリスト/AJAJ(日本自動車ジャーナリスト協会)会員/2020-2021年日本カー・オブ・ザ・イヤー選考委員
 大学時代からモータースポーツの魅力にとりつかれ、参戦。その経験を活かし、大学卒業後、モータージャーナリズムの世界に入り、専門誌をはじめ雑誌等に新型車の試乗レポートやコラムを寄稿。自動車ジャーナリストとして30年以上のキャリアを積む。モータースポーツ歴は全日本ラリー選手権を中心に活動、1979年・マレーシアで日本人として初の海外ラリー優勝を飾るなど輝かしい成績を誇る。ジャーナリストとしては、新型車や自動車部品の評価、時事問題の提起など、活動は多義にわたり、TVのモーターランド2、自動車専門誌、一般紙、Webなどで活動。