日下部保雄の悠悠閑閑

中国雑感

CRH。ドイツ型のようです。東海道新幹線ほどじゃないけど、かなり頻繁にやってくる

 BYD・ATTO3が日本で型式認定を取り、助成金の対象車種になったことから300万に近い価格のBEVとなったとのリリースが出た。型式認定を取るのは日本に根づいていこうとするサインと受け取った。ATTO3は熟練のメーカーのような完成度で、もはやコピーを作っていたころのBYDではなかった。しかも中国では日本では知られていない中国メーカーがたくさんある。

 今年の秋に日本導入が予定されているSEALとまだ日本に進出していないGeely(ボルボの親会社と言えば分かりやすい)に乗る機会もあったが、いずれもデザイン力が高く内外装ともシンプルながら上質感があり、工作精度も高くソツなくまとめられている。またクローズドコースでのチョイノリでは直進時の保舵感もしっとりして、ターンインからアウトまで乱れが少ない。

 GeelyのLサイズSUVのZeekrは2.5tの重量でドッシリしたところがクルマの性格をよく把握していると思う。

 中国車はまだブランド力がないものの、この質感で小型BEVが入ってきたらかなり話題になるだろうと思う。日本車が絶対の信頼性を誇る新興国でもBEVでジワジワと攻勢をかけており、インフラ次第では手強い相手になりそうだ。

 さて、宿遷市から上海までは中国新幹線、CRHで上海まで約3時間の旅。CRHにはいろいろなタイプがあるようだが、鉄道に詳しい仲間はドイツ型と言っていた。このほかにもフランス型、カナダ型もあるらしい。日本の新幹線も売り込みをかけていたが、完全な技術移管は行なわれなかったために限られた路線で一部車両が走っているようだ。全部受け売りです。

列車によって2つのネーミングがあるようです。行き先が違うのかな?

 新幹線のチケット購入は身分証明書が必要で日本人はパスポートで予約してもらった。それに駅構内に入るには荷物検査があり空港並みにセキュリテイは厳しい。

 1列が日本の新幹線のように3座2座で分かれている。シートクッションはちょっと不満だったが、CRH自体が新しく路線の地盤がしっかりしているので揺れがほとんどない。乗車したCRHはそれほど速度を出していないこともあり、車窓からゆったり流れる川や移り行く景色をながめるのは楽しく快適な旅だった。車内販売もたまに回ってくる。

いくつもの川を見ながら列車は上海を目指す。ゆったり流れる川を見ていると悠久の中国を感じる

 広いホームに入るときは速度をビックリするほど落としていたのが印象的だ。ついでに言えばホームドアはない。

 中国新幹線は路線によっては寝台車もあり、遠くウルムチまで行くという。聞き間違いでなければ6000kmというからやはり中国は大きい。

 やがて上海虹橋駅に到着。空港に直結している新幹線なんて素晴らしい。

上海虹橋駅。ホームが広いのがうらやましい

 以前、上海浦東空港に降りたときはリニアに乗って龍陽路駅まで20分ぐらいで到着した。車内にある速度計は400km/hを超えて「お~」となったが、それも一瞬で、速度を落とし始めても速度計が下がるのが追い付かず、やがて隣の高速道路を走るタクシーに抜かれてしまったのはご愛敬だ。まだリニアは200km/hで走っているはずなのに……当時の龍陽路駅には地下鉄もなくてタクシーに頼るしかなかったが、今はどうなっているのだろう。

 で、上海虹橋空港は広く、ホテルが指定したパーキングはどこにも表示がない。通りかかった港内タクシーの運転手さんが何か言っている。言葉の分かる人が聞くとどうやら「連れてってやるから乗れ」と言っているらしく、ワイワイと乗り込むと「え、こんなとこまで!?」とかなりの距離を走って空港の端にあるパーキングに到着。到底重い荷物を転がしながらたどり着くのは無理だった。シェシェ! 中国は広い、やっぱり。

構内タクシー。大量の荷物と大量の人を積んで、速足程度の速度で走り回る。たまにこちらが腕を引っ込めないと歩行者に当たる
日下部保雄

1949年12月28日生 東京都出身
■モータージャーナリスト/AJAJ(日本自動車ジャーナリスト協会)会員/2020-2021年日本カー・オブ・ザ・イヤー選考委員
 大学時代からモータースポーツの魅力にとりつかれ、参戦。その経験を活かし、大学卒業後、モータージャーナリズムの世界に入り、専門誌をはじめ雑誌等に新型車の試乗レポートやコラムを寄稿。自動車ジャーナリストとして30年以上のキャリアを積む。モータースポーツ歴は全日本ラリー選手権を中心に活動、1979年・マレーシアで日本人として初の海外ラリー優勝を飾るなど輝かしい成績を誇る。ジャーナリストとしては、新型車や自動車部品の評価、時事問題の提起など、活動は多義にわたり、TVのモーターランド2、自動車専門誌、一般紙、Webなどで活動。