日下部保雄の悠悠閑閑

すぐそこのレクサスに乗る

ステア・バイ・ワイヤも搭載されるRZ

 今秋から次々と登場するレクサスに乗った。試乗記事は別稿に譲るとして、ここではRZのステア・バイ・ワイヤと水素エンジンバギーにも触れよう。

 RZのステア・バイ・ワイヤは春に乗せてもらった。そのときから半年、H型タイプのハンドルを持った進化したステア・バイ・ワイヤを走らせた。RZのノーマルタイプのハンドルはトリッキーなクランクコースでハンドルをグルグル回す必要があるが、ステア・バイ・ワイヤではステアリングギヤレシオを可変させることで、操舵角を90度ぐらいまででクリアできる。そう、春に乗ったRZよりも違和感が少なくなった。前回はドギマギしながらパイロンの端を踏んづけるなどH型ハンドルに翻弄された。そもそもハンドルを切るタイミングすら把握できなかったのだ。

 今回は慣れれば使ってみたいと言えるまでに仕上がっている。ハンドルを回すことは厭わないが、ステア・バイ・ワイヤだと瞬間的に修正舵を当てるのが可能になるかもしれない。氷上ではどんな反応を示すか興味が湧く。

 また、H型ハンドルのために造形されていたとしか思えないメーターレイアウトは本来の見やすさを取り戻し見やすい。

 まだ長距離ドライブできるのかも分からないが、少なくともS字コーナーなどのトレース性には自信がもてた。慣れてしまうともっと価値を見いだせそうだ。

RZの異形ステアリング。以前試乗したときよりもぐんと扱いやすくなった

 もう1台、GX試乗のタフなコースの横では奇妙な乗り物が置いてある。近未来のレジャービークルとして開発されたパイプフレームの極端に短いバギーだ。何するんだろうと思っていたら、最初はこれに乗るんだと説明された。「エ!? これ乗るの?」しかも自分が最初? フェイスマスクとヘルメット、グローブを渡されてモタモタ着装しているうちに、ドライバーシートのベルトに縛られた。隣にはインストラクターが乗る。2シーターだったのか!

水素エンジンバギーとKYB製別タン・ダンパー。バギー車は苦手だったけど手軽で面白かった!

 何だっけと考える間もなく、イグニッションを入れてヤマハ製エンジンをスタートさせる。乾いた音を上げてブワーンと回り出す。そうだった、これは水素で走るバギーだ。

 コースも全く未知数。インストラクターから右、左と指示されながら獣道のようなコースを進む。路面を見るだけで回転計まで目が届かない。ちらと見るとだいぶ余裕がありそうだ。

 モーグルもギャップも大したショックもなく走る。タイトなヘアピンもプッシュアンダーにならずにグイと曲がる。オー! だんだんと要領が分かってきたぞ。路面を気にせず視線を先にして速度を上げていく。パドルシフトもバンバン使う。面白いじゃないか! たっぷりしたストロークを持つKYB製の別タンはハイドロスストッパーがついているのか余裕の悪路走破性だ。特に動き始めからの減衰力が効いて滑らかに走る。

 2周目に入るとコースも何となく覚えてきて、少しだけペースを上げる。ただし調子に乗って雨の筑波のシクジリはしないようにマージンを多めに取ることを肝に銘じた! つもり……だ。

 バギーは快調に背中で乾いた音を響かせ、悪路をなめるように駆け抜ける。水素エンジンはS耐の水素カローラで鍛えられて、ガソリンエンジンのシリンダヘッドを直噴化することで実現できる大きな可能を秘めている。

 バギーに積める小さな水素タンクでは長い距離は走れないが、軽いボディとよく動く足まわり、それに絶妙なパワートレーンで手軽に楽しめた。あっという間の2周を終了して、今度はインストラクターの横に乗せてもらう。さすがに手慣れたもので、「オー! そこまで行けるか!」と感じてますます面白くなった。

Over Trail Project。こんなクルマやあんなクルマも皆アウトドアに集合!

 このバギーはレクサスの掲げるアウトドアライフ「Over Trail Project」の一部に組み込まれる予定で、近い将来一般にも公開されるはずだ。このProject、なかなか面白いゾ。

レクサスの渡辺さんがルーフのテントを展開しようとしてます
レクサス1台で冷蔵庫からキッチンまで何でもそろえるアメリカ流アウトドアライフ。もちろんルーフテント備えてます
日下部保雄

1949年12月28日生 東京都出身
■モータージャーナリスト/AJAJ(日本自動車ジャーナリスト協会)会員/2020-2021年日本カー・オブ・ザ・イヤー選考委員
 大学時代からモータースポーツの魅力にとりつかれ、参戦。その経験を活かし、大学卒業後、モータージャーナリズムの世界に入り、専門誌をはじめ雑誌等に新型車の試乗レポートやコラムを寄稿。自動車ジャーナリストとして30年以上のキャリアを積む。モータースポーツ歴は全日本ラリー選手権を中心に活動、1979年・マレーシアで日本人として初の海外ラリー優勝を飾るなど輝かしい成績を誇る。ジャーナリストとしては、新型車や自動車部品の評価、時事問題の提起など、活動は多義にわたり、TVのモーターランド2、自動車専門誌、一般紙、Webなどで活動。