日下部保雄の悠悠閑閑

グッドドライバーレッスン

ADVAN号がグッドドライバーレッスンの参加者を迎えてくれます

 テーマは自分で決めていいので、と言われて駄文を重ねてとうとう300回を超えるまでに達した。6年をゆうに越した回数だからお付き合いしてくださった編集部、それに大切な読者の皆さま、ありがとうございます。

 近況報告ではアウディ・Q8 e-tronやヒョンデ・KONAに試乗したが作業が遅れており、この原稿も恐る恐る書いております。

 試乗の合間を縫って、裾野市運動公園で行なわれたグッドドライバーレッスン(GDL)を取材しに行ってきた。旧知のラリードライバー、奴田原文雄選手が主宰するNPO法人が、自治体、警察、トヨタの販社、GAZOO、そしてトヨタモビリティ財団のバックアップで開催する安全運転講習だ。TOYOTA GAZOO Racing Rally Challenge(通称:ラリチャレ)の開催前日に行なわれ、モータースポーツができる地元への還元がコンセプトだ。金曜日の午前中、楽しみながらあっという間に終わる。

 9時過ぎからユニークで簡単なストレッチで身体をほぐし、3グループに分かれて、ラップトップPCで行なえるシミュレータによる運転特性のチェック、自分のクルマでの一時停止やブレーキ、視界など基本的な動作確認作業。最新の自動ブレーキやC+walkなどを順番に体験するプログラムが組まれている。

ストレッチ用に組まれた風船ブレーキ。適当に踏むと割れそうでつい慎重になる。ま、本当の風船じゃないので割れないけど
立ち乗りと座り乗り、いろいろな種類のあるC+walk。前者はキックボードより安全性が高そうだ。後者はナンバーはないが歩道は走れるという。工場施設内移動などが視野に入っている。ラゲッジスペースもあって便利そう

 ストレッチはプロのインストラクターの指導で、後方視界に大切な身体をねじる運動にはゴムバンドが使われる。ブレーキ操作で使う股関節のひねり、スクリーンに現れる信号に反応するABペダルの操作、10分ほどのストレッチだった。

 身体は正直で毎年わずかずつ変化している。自分の場合は右肩を痛めてから運動量が圧倒的に減っていたのを改めて実感した。風船を使ったABペダル操作はともかく、誰でも日常の中に取り入れてもよさそうだ。

 シミュレータは保険会社の三井住友海上が開発したもの。ARと組み合わせてPC上に出てくる道路をゲーム機のようなハンドルでトレースし、その四隅に現れる信号の色でブレーキとアクセルを操作する。ゲームの経験はほとんどないので、とんでもなく難しい。何をどうすればいいのかと迷う。終盤でようやく要領が分かったが案の定、診断は悲惨なものだった。しかし指摘のあった複数の判断を迫られた時の反応が鈍いという点を注意してみようと考えた。確かに以前より反応時間が遅い気がする。

 実技はブレーキラインで止まる正確性や、視界の確認動作がちゃんとできているかをチェックする。ここは奴田原君など顔なじみの人たちがそろって運営する。簡単なコースでも工夫が凝らされており、盲点を突いたレイアウトになっている。限られた施設で短時間でコースと作るのは大変だと思う。ご苦労さま。

 次は販社さんのスタッフが最新のアクアを使った自動ブレーキや自動駐車を同乗体験する。自動ブレーキはあいかわらず攻めており、ぎりぎりの距離で止まる。20km/hぐらいで壁に接近するが、何度体験してもホントに止まるのか不安になる。安心してください! とは言われるものの……。

 自動駐車はアクアの試乗会で地下駐車場の狭い枠の中、まわりは高そうなクルマの中ですごい速さでハンドルを切り返して正確にまっすぐ止まったのに驚いた。いつもまっすぐ止まれない自分としてはホントにすぐに使いたい機能だ。しかも操作が簡単。現行アクアからのトヨタ車に装備されている。

アクアの自動駐車。簡単で速く正確。自分も欲しいぞ!

 そのほかにも以前取材したトヨタのシートクッションがあった。こちらは座面のサイドサポートの厚さを調整して右足の位置を矯正するもの。単純だが効果が高く、正確なドラポジをサポートする。対応車種もかなり多くなっており、地道に啓蒙活動を続けていてうれしい。

右足位置矯正サイドサポート。地道に装着可能車を増やしている。シンプルだが効果的だ

 最後は昔、JTCC時代にセルモのお手伝いをしていた、いつも明るい安藤さんが登場してタイヤ漫談……じゃなくて空気圧や摩耗の重要性を楽しく聞ける講座で終了。

タイヤ空気圧と摩耗について面白く聞かせてくれる「いつも明るい」安藤さん

 楽しい半日は高齢者にフォーカスしたイベントになっていたいたが、ここで体験するのは年齢、性別にかかわらず自分の運転をチェックする場になっている。多くの人に体験してほしいと感じた次第。ヌタちゃん、頑張れ!

 帰りは毎年トヨタはじめメーカー各社の首脳がお詣りする蓼科山聖光寺の交通安全のお守りをいただきました。

日下部保雄

1949年12月28日生 東京都出身
■モータージャーナリスト/AJAJ(日本自動車ジャーナリスト協会)会員/2020-2021年日本カー・オブ・ザ・イヤー選考委員
 大学時代からモータースポーツの魅力にとりつかれ、参戦。その経験を活かし、大学卒業後、モータージャーナリズムの世界に入り、専門誌をはじめ雑誌等に新型車の試乗レポートやコラムを寄稿。自動車ジャーナリストとして30年以上のキャリアを積む。モータースポーツ歴は全日本ラリー選手権を中心に活動、1979年・マレーシアで日本人として初の海外ラリー優勝を飾るなど輝かしい成績を誇る。ジャーナリストとしては、新型車や自動車部品の評価、時事問題の提起など、活動は多義にわたり、TVのモーターランド2、自動車専門誌、一般紙、Webなどで活動。