日下部保雄の悠悠閑閑

羽田事故と能登地震

金沢~和倉温泉を走る観光列車「花嫁のれん号」。輪島塗のような艶やかな塗装と整えられたキャビンであっという間の時間だった

 2024年もアッと言う間に1月が経過した。衝撃だった能登地震、驚愕だった羽田の航空機事故。いずれも時間が経つにつれて明らかになることも多かった。

 羽田の事故は不思議で悲惨な事故だった。大型機を運航している友人のパイロットは着陸時の大型機のパイロットはHUDに集中していて、夕闇濃い滑走路にいる小型機には気づかないのでは、という意見だった。航空機が秒単位で発着する羽田で不運が重なった事故は悲しいばかりだ。

 能登地震も次第に被害状況が明らかになって想像以上の惨状に恐れ驚く。情報の伝達が遅れたのは通信の切断と道路が寸断されたのが大きかった。13年前の東日本大震災では鉄路が崩れたところでもクルマは行けたところが多かったが能登の特殊な地形はクルマさえもさえぎるところが多かったようだ。

 以前に旅した輪島の朝市は跡形もなく焼けてしまったことに呆然とした。朝市は活気があってにぎやかなばかリでなく、人が優しかった。長男の結婚宣言をこの地で聞いたことでも印象深い。その柔らかくも力強い能登に魅せられてその後も能登を旅した。

 金沢から和倉温泉へ行く七尾線を走る「花嫁のれん」は華やかな加賀の豊かさはこちらまでおすそ分けをもらったように幸せな気持ちになった。さらに和倉温泉を通り越して海岸沿いを終点の穴水まで走るのと鉄道はのんびりしたもので、景色のよい所では速度を落として能登の海を見せてくれた。そこは古くから変わらない日本の自然を見るようでちょっと感動だった。

七尾~穴水間を走る「のと里山里海号」。観光列車でユックリ、のんびりと湾沿いを走る。ピッタリのネーミングだ
和倉温泉でお風呂に入るのはドナタ?

 穴水は震源に近かったこともあり、家屋の倒壊がひどいと聞く。ニュースから流れる映像は能登地震のすさまじさを伝えて心が痛み、つい目をそらしてしまう。

 しかし復興の足掛かりも始まっている。七尾線も間もなく金沢から和倉温泉までの全線で開通。穴水までも4月に開通するという(海沿いの被害が伺い知れる)。鉄道、道路が開通すると普及は加速度的に進むに違いない。

 気安く完全復興なんて言葉は使えないが、能登の人は粘り強いという。残念ながら直接応援に行っても邪魔になるだけだが、普通に旅することで力になれればよいと思う。

トバ。最近よく来てくつろいでいらっしゃいます。ネコが寝ている姿は和みます
日下部保雄

1949年12月28日生 東京都出身
■モータージャーナリスト/AJAJ(日本自動車ジャーナリスト協会)会員/2020-2021年日本カー・オブ・ザ・イヤー選考委員
 大学時代からモータースポーツの魅力にとりつかれ、参戦。その経験を活かし、大学卒業後、モータージャーナリズムの世界に入り、専門誌をはじめ雑誌等に新型車の試乗レポートやコラムを寄稿。自動車ジャーナリストとして30年以上のキャリアを積む。モータースポーツ歴は全日本ラリー選手権を中心に活動、1979年・マレーシアで日本人として初の海外ラリー優勝を飾るなど輝かしい成績を誇る。ジャーナリストとしては、新型車や自動車部品の評価、時事問題の提起など、活動は多義にわたり、TVのモーターランド2、自動車専門誌、一般紙、Webなどで活動。