日下部保雄の悠悠閑閑
全日本ラリー選手権開幕
2024年3月11日 00:00
2024年のラリーシーンが開幕した。第1戦は「RALLY三河湾2024」、トリッキーなターマックコースで一部グラベルもあるが、ほぼメインステージはターマックになる。
この開幕戦は、カヤバラリーチームにとってクルーも含めたオールカヤバの初戦となる記念すべき1戦。コ・ドライバーの穴井謙志郎選手は「初戦の目標はJN1の後ろ、速いJN2の中に混じってシングル」という現実的かつ高い目標を立てていた。私としては無事に帰ってこれれば大出来だ。
車両はGRヤリスでJN2をJN1仕様にしたもの。タイヤは細くなるがリストリクターは1mm大きくなり出力は上がっている。隣でサービスを受ける奴田原選手は日本で3台目のGRヤリス・ラリー2を手に入れたがラリー直前に手元に届き、ラリーそのものがシェイクダウンとなった。
豊橋近くのサービスパークと関連企業ブースは、ヨットハーバーの隣にある海浜緑地の大きな公園に置かれた。天候さえよければ海と広い空。気持ちのいいのんびりした取材になるはずだ。ラリーもコンパクトにまとまっており約80kmのSSで争われる。
隣でサービスを受けている奴田原車のGRヤリス・ラリー2をのぞく。元タスカエンジニアリングの山田チーフメカに、「届いたばかりで、ホントに走れるの?」と聞いてみたら、「アジャストすればいいだけで、それほどすることないんです」との返事。コクピットはJN2車両よりも整然とレイアウトされ、サスペンションから溶接も丁寧なボディワーク、小さな3気筒エンジンを効率よく収めたエンジンルーム。ながめているだけで気持ちがいい。ラリー車でもトヨタの仕事はすごいと思った。TPS(Toyota Production System:トヨタ生産方式)は、フィンランドのラリー車生産ラインでも活かされているのか! ラリー2はファクトリーを出た時点で使用部品が決まっているので、当然と言えば当然だが素晴らしい。
ラリー車がタイムコントロールに出て行った後はヒマになる。ブースをのぞきながらKYBのテントに戻ることにする。各ブース、工夫を凝らして子供から大人まで楽しめるコンテンツをそろえ、さりげなく企業PRにもなっている。
コバイライネン選手のスポンサーである「AICELLO(アイセロ)」は、環境にも優しい組成でできたフィルムメーカーだということを初めて知った。優勝候補のコバライネン選手は、静脈瘤の手術で今シーズン序盤を休養することになったが、幸い早期の手当で復帰は早そうだ。ピンチヒッターは久しぶりの国内ラリーとなる田口勝彦選手。
ラリーサービスで懐かしい顔に会った。元ADVANラリーチームのドライバーで、1980年代に9年にわたって英国RAC(ロイヤル・オートモビル・クラブ)ラリーで一緒に走った大庭誠介先生。ADVANの後輩、奴田原選手の表敬訪問だ。
その大庭先生がSSを見に行こうと誘ってくれ、サービスパークから20分ほどのSSを見に行った。ヒメハル2と呼ばれる6.5kmのSSだ。細い! ラリー車が1台でいっぱいなほどだ。こんな道でラリーをやっているのかと正直ビックリした。それでもトップグループのラリー2は速い! 風のように眼前を駆け抜けていく。
初めてのGRヤリス・ラリー2に手こずっていた奴田原選手が快調な音をたててやってくる。最初のSSで勝田(範彦)さんにめいっぱい離されていたが、それ以降はジワジワとペースを上げている。SSのタイムを見ているだけでクルーの頑張りが届くようだ。速いペースで姿を見せたと思ったらいきなり泥に乗ったのかブレーキが間に合わず、われわれの見ていた脇道をエスケープゾーンとしてフルブレーキでやっと止まった。バックギヤに入れてやっとオンコースとなる。10秒以上ミスしただろうか。福永シュコダに離されて4位でLEG1を終える。
カヤバ号も丁寧にラインを狙って無事通過! ボディもキズ1つない。それを確認してホッとしてサービスに戻る。石倉/穴井組はクラス7位、総合11位でLEG1を終了。トップから4分離されるが初期の目標を半分以上達成して喜ばしい。
LEG2は10kmのSSが4本あり、コース幅も広くなるという。速度が上がるとリスクも大きいがトップは堅調な走りをする勝田(範)さん。2位はラリー直前に完成した新井(大)選手のシュコダR2、見ていたLEG1のSSでも一番元気よくて走りが鋭い。LEG2は1つのSSで1位を取り、約20秒差の2位でシュコダのラリーを終了。今年のラリーは面白くなりそうだ。
奴田原選手はと言えば、サイドブレーキが効きっぱなしになるというトラブルに悩まされた結果4位でラリーを終えた。
そしてカヤバ号は無事完走してクラス6位、総合10位となった。トップとは9分半の差だが、その差を埋めていくのはまだ先。初戦としては上出来の入賞だ! おめでとう!!
というわけでラリーを楽しんで豊橋を後にした。