日下部保雄の悠悠閑閑

ダイハツ・ミライースのラリー車

ミラ イースラリー車、ターボエンジンに5速MT。元気いっぱい、意気揚々とスタートしていく!

 ダイハツに吹く風は今も向かい風だが、全日本ラリーの第1戦、三河湾ラリーで楽しいダイハツ車を発見した。ダイハツの最廉価車、ミラ イースのラリー車である。

 ミラ イースは軽量ボディと燃費のいいエンジン+CVTのエコカーとしてデビューした。東日本大震災の年の夏に燃費競争をしたのが懐かしい。現在のミラ イースも軽量ボディで燃費のよさからカンパニーカーとしても人気がある。そのミラ イースを使ってラリー車に仕立てたのがDGR。モリゾウさんの「もっといいクルマ作ろうよ」の声の下、ダイハツで誕生した社内組織でカスタムパーツなどのサポートする少人数で素早い動きが強みの集団だ。

 モータースポーツ活動はダイハツらしくコペンやロッキーでラリーをしていたところに昨年起こった不正問題。みんな下を向いているんじゃないかと思ったが、今年のオートサロンで出会ったダイハツドライバーの相原さんはいつもの元気を取り戻していた。

サービスパークでドライバーの相原さんと……Dの文字が逆でした。

 それが三河湾ラリーのミラ イースだった。軽自動車は1メーカーで多くの車種をそろえているがプラットフォームの種類は少ない。つまり車種間でパーツの互換性があるためミラ イースにはないモデルも作れることになる。

 サービスパークで会った相原さんはいつもの元気でミラ イースのラリー車を紹介してくれた。エンジンはミラ イースにはないコペンのターボエンジンに、ミラ イースにはない5速MT。駆動方式はFF。これだけでも十分楽しそうだ。

フロントはコペンラリー車から流用した6ポッドのブレーキ。よく入ったね
タイヤはADVAN NEOVA 165/55R15。スポーツタイヤで摩耗も少ない

 サスペンションはオリジナルのレイアウトのまま車高調整式のショックアブソーバーとスプリングを組み合わせている。

 今のラリーは大部分がターマック。サスペンションストロークはそれほど必要ないかわりにブレーキはノーマルの片持ち式から6ポッドに変更されていた。久しくラリーから離れている身としては4ポッドでもいけそうだが、今のラリーはいかにブレーキに負担をかけていることか。もっともFFなのでリアは負担がかからないためドラムのままだ。タイヤもADVAN NEOVAの165/55R15で競技用タイヤでないのがエコだ。

エンジンルーム。ミラ イースにはないターボエンジン。簡単なエアダクトが設けられていた

 車重は6点式ロールバーも入れて700kg強に仕上がっており、軽さが命の競技車にとっては大いに魅力的だ。

ドライバー席。ロールバーは6点式でシンプル
コ・ドラ席。5速シフトレバーのノブはジュラコンで操作しやすそう。トリップ下の計器は何だか分からない

 しかしポンつけでできるほど競技車は甘くない。エンジンルームの熱対策には苦労しているようでAピラーの前には熱気を逃がすエアダクトを追加している。エンジンルームでは効率的にフレッシュエアを取り入れる簡易式ダクトを取り付ける一方で熱対策にいろいろ工夫を施されている。

 ラリーでは低速で負荷のかかるコースでエンジンルームに熱がこもったのかトラブルが出たようだったが、開発は始まったばかり。きっと近いうちに問題を解決してくれるだろう。

 ミラ イースに期待するのはラリーコンプリートカーでも200万円以内という想定価格やD-SPORTの扱い店では割賦販売も可能(?)というだけではない。もしキットで販売できれば中古のミラ イースと組み合わせて格安なラリーカーを作ることだって可能かもしれない。

 三河湾ラリーでもコース幅は狭く、全長の長い3ナンバー車は苦しそうだった。軽自動車なら強みを発揮できるチャンスもありそうだ。

 2輪駆動で軽量ボディ! 限られた出力! 考えるだけで楽しい。DGRの皆さん、そして相原さん、夢を運んでください!

ミラ イースラリー、夢を運んでください!
日下部保雄

1949年12月28日生 東京都出身
■モータージャーナリスト/AJAJ(日本自動車ジャーナリスト協会)会員/2020-2021年日本カー・オブ・ザ・イヤー選考委員
 大学時代からモータースポーツの魅力にとりつかれ、参戦。その経験を活かし、大学卒業後、モータージャーナリズムの世界に入り、専門誌をはじめ雑誌等に新型車の試乗レポートやコラムを寄稿。自動車ジャーナリストとして30年以上のキャリアを積む。モータースポーツ歴は全日本ラリー選手権を中心に活動、1979年・マレーシアで日本人として初の海外ラリー優勝を飾るなど輝かしい成績を誇る。ジャーナリストとしては、新型車や自動車部品の評価、時事問題の提起など、活動は多義にわたり、TVのモーターランド2、自動車専門誌、一般紙、Webなどで活動。