日下部保雄の悠悠閑閑
ホンダのコンパクトSUVに乗った
2024年4月15日 00:00
タイに行ったのも何かの縁、今度はタイで開発されてインドで生産されたホンダのグローバルコンパクトSUV、WR-Vに乗れた。
ホンダのアジア開発拠点はタイにあり常時500人以上が常駐し、主にアジア市場向けの車両開発を行なっている。
ホンダのプラットフォームの考え方は柔軟で生産場所、需要に応じて異なる車種のプラットフォームを組み合わせて作られる。今回のインド生産のWR-Vは前半はフィットをベースにし、後半はインドネシア向けの3列シート車、BR-Vから作られた。フィットはセンタータンク方式だが、WR-Vもその名残で前席下が盛り上がっている。実際のタンクはBR-Vの位置、つまりリアシートの下に置かれた。
サイズはコンパクトとはいえ意外と大きく、4325×1790×1650mm(全長×全幅×全高)でホイールベースも2650mmと長め。ヤリスクロスよりひとまわり大きい。大柄なインド人でもゆとりをもって座れるサイズだ。以前インドに行ったときに見たクルマはいつも人で満載だったので納得だ。
エンジンはフィット用の1.5リッター+トルコン付きCVTで1230kgを走らせる。出力は87kW(118PS)/142Nmで余裕があるとは言えないが、日本での使用条件を考えると必要十分だ。
駆動方式はFFのみ。ハイブリッドの設定もない。シンプルに価格を抑え、そのかわりに安全装備やHonda SENSING、6エアバッグ、オートエアコン、7インチディスプレイなどフル装備だ。豪華じゃないがスタンダード以上の装備が備わる。
Zグレードの本体価格が234万9600円で装備の割には安価な価格設定だ。乗せてもらったZグレードはオプションのホンダコネクトや9インチナビ、ETCを装着しても268万8400円だった。
広いキャビンでは後席の前後長は少し短めでフラットだ。これも多人数で長時間乗るときには座りやすそうだ。インドでは後席の必需品、リアベンチレーターも標準装備だ。
前席は比較的ワイドでクッションストロークが大きい。質感は質素だが雑ではないのが好ましい。
操作系もいたってシンプル。エアコンやオーディオ関係も迷わない。つまり取説を見なくても自分でもすぐに使えます。
加速時はエンジンが「頑張ってます!」とばかりによく回る。ノイズはそれほど大きくない。そういえばロードノイズも共鳴音が抑えられているので煩わしくない。
乗り心地は小さなショックは感じられるもののシートが吸収している。さらに大きな凹凸乗り越しではサスペンションがよく動いている感触だ。さすがに対角線での段差乗り越しでは少しバタバタするものの気にならない。ボディ剛性は硬いというよりもボディ全体でいなしているようで適度に前後がバランスしている印象だ。
インド生産と言えばスズキが小型セダンのバレーノを逆輸入していたが、品質の高さに驚いたことがある。残念ながら現在は途絶えているがサプライヤーも含めてインドで自動車産業が着実に成長しているのを感じた。
それ以来のインド産の日本車、WR-Vは道具として使いこなせるタフさを感じた。上昇しているとは言え、まだ安い良質な労働力と新しい工場はこれからもアジア産の日本車が増えることを予感させる。正直、予測を超えた出来でした。