日下部保雄の悠悠閑閑

オートモビルカウンシル2024

初代パジェロ。ラダーフレームの1t積ピックアップトラック「フォルテ」をベースにして作られた斬新なSUV

 今年も幕張で開催されているオートモビルカウンシルに行ってきた。クルマを文化としてとらえるユニークでカーグラフィックらしいイベントだ。2016年からコロナ禍でも開催されているが、今年はFMなどで事前告知されていたので来場者も多かったようだ。

 メーカーではトヨタ、マツダ、三菱自動車、日産、ホンダがそれぞれ歴史的に価値あるブースを出展していた。ニューモデルもショーの華だが、過去の遺産はめったに見ることができないだけにオートモビルカウンシルは大切な場だと思う。

 三菱自動車のブースに行くと最新のトライトンから初代パジェロ、パリダカ・パジェロ、ギャランVR-4、ランサーエボリューションVI、ランサーエボリューションXを含めた歴代のラリー車を展示していた。

 初代パジェロは意外と小さかったのが分かる。自分との最初の出会いはタイヤかラリー車のテスト、あるいはその両方だったかもしれないが、東北のダートラ場で、発表されたばかりのパジェロに乗せてもらったことがある。オフロードと言ってもいわゆる良路のダートが主戦場だったラリーカーにとっては凹凸の激しい路面は未知の領域。こんなジープみたいなのが走るのかと思っていたら予測を超えてはるかに軽快で速かった。ラダーフレームで丈夫そうだし、どんなところでもガンガン行けるというのが新鮮だったパジェロはその後ラリーレイドで花開いたが、目の前にある2ドアのショートボディを見ているとそのときのわだちやハンドルに伝わってくる感触まで蘇った。

 その隣には2002年パリダカの増岡パジェロがあった。偉大な先輩のプレッシャーをはね返してパリダカ優勝はさすがだ。

2002年「アラス-マドリッド-ダカール」で優勝した増岡浩選手のパリダカパジェロ

 偉大な先輩とはもちろん篠塚健次郎さん。今年逝ってしまった健次郎さんを追悼するのは1992年アイボリーコーストのギャランVR-4だった。過酷なことではサファリ以上と言われるアイボリーコーストは健次郎さんの真骨頂を示したラリーで、ライバルはメルセデス・ベンツのSLだった。詳しいことはレジェンド・メカニック、故東海林哲郎さんの「油まみれのラリー人生」にも紹介されており、さすがの東海林さんも閉口するほどのラリーだったが、粘り強くそして速かった天才ならではの偉業だ。

ギャランVR-4。篠塚健次郎選手のアイボリーコースト優勝車。ランサーエボリューションに続くWRC三菱自動車4WDラリーの最初のモデルがVR-4だった
VR-4のフロントノーズ。当時からドライブすると長いなと思ってたけどやはり長かったな

 そして1000台が発売された最後のランサーエボリューションXのファイナルエディションが1台だけ販売されたというのもニュースだ。1台だけとはいえ三菱自動車のスポーツ4WD技術の粋が詰まった戦うクルマを手に入れられるなんて夢のようだ。

ランサーエボリューションVI。三菱自動車のエースだったトミー・マキネンのサンレモラリー優勝車。4度のWRCドライバーチャンピオンを獲得した。ほんとに強かった。向こうに見えるのはランサーエボリューションFinal Edition

 アイルトン・セナがサンマリノGPに散って30年、その軌跡をたどるマールボロ・マクラーレン・ホンダやJPSロータス97Tルノーもこうしてみると感慨深い。あのV12の泣き叫ぶようなエキゾーストノートは衝撃的だった。

セナ30周年追悼展示。マクラーレン・ホンダ MP4/6、マクラーレン・ホンダ MP4/5B、JPSロータス、ロータス97Tルノー。タバコの莫大な広告宣伝費が使えた時代。F1とは切っても切り離せなかった。ホンダとセナも切り離せない
ホンダ・AT型ワンダーシビックのグループA車両。1987年の中子/岡田組

 幻の2シーターミッドシップ、マツダRX500は1970年のモーターショーで展示されたコンセプトカー。久しぶりに目にした。そしてジャパンモビリティショーでデビューしたEVスポーツカー、ICONIC SPも何度見ても美しい。2ローターのレンジエクステンダーなマツダの次世代スポーツカーの提案だ。

何度も紹介しているEV+ロータリーエクステンダーの未来型スポーツカーのICONIC SP。何度見ても美しい

 ゴルフ50周年記念展示や、ストラトス、ランボルギーニ・ミウラ、カウンタックなどを生み出したマルチェロ・ガンディーニの追悼記念展示も数多くの名車の一部を見ることができた。見るべき名車はまだまだたくさんあるが今日はこの辺で。

MR2は今見てもコンパクトにまとまったデザインが素晴らしい。FFのパワートレーンを使ってミッドシップスポーツカーを作るのは常套手段だが、よくまとまってハンドリングも楽しかった。ときどき街で見かけると見とれてしまう
日下部保雄

1949年12月28日生 東京都出身
■モータージャーナリスト/AJAJ(日本自動車ジャーナリスト協会)会員/2020-2021年日本カー・オブ・ザ・イヤー選考委員
 大学時代からモータースポーツの魅力にとりつかれ、参戦。その経験を活かし、大学卒業後、モータージャーナリズムの世界に入り、専門誌をはじめ雑誌等に新型車の試乗レポートやコラムを寄稿。自動車ジャーナリストとして30年以上のキャリアを積む。モータースポーツ歴は全日本ラリー選手権を中心に活動、1979年・マレーシアで日本人として初の海外ラリー優勝を飾るなど輝かしい成績を誇る。ジャーナリストとしては、新型車や自動車部品の評価、時事問題の提起など、活動は多義にわたり、TVのモーターランド2、自動車専門誌、一般紙、Webなどで活動。