日下部保雄の悠悠閑閑

ジオランダー A/T4 G018と空気圧

ジオランダーG018。バラエティに富んだ試乗車の中の2台。荒れた道ほどサマになるジープ・ラングラーとパジェロの血を引く三菱自動車・トライトン

 タイヤメーカーはいずれもオフロード用タイヤのブランドがある。例えばブリヂストンはDUELER、ダンロップはGRANDTREK、横浜ゴムはGEOLANDARだ。海外メーカーではピレリのScorpionが知られ、ミシュランはブランドを分けてBFGoodrichが担当する。いずれもいかにも強そうなブランド名でオフロードをイメージしやすい。

 これらのオフロードタイヤはシリーズに泥濘用からオンロード志向まで多くのバリエーションをそろえる。オープンパターンが多くライフサイクルが長いのもクロスカントリー車と同じだ。

 横浜ゴムのGEOLADARのA/T G015がモデルチェンジしてG018になったタイミングなので少し紹介する。AT(オールテレーン)は凍結を除きどの路面でも対応できるという守備範囲の広いオフロードタイヤでリプレイス用として広く使われている。

最新のジオランダー G018を試してみました

 G015のパターンはエッジを効かせるためにブロックにもストレートグルーブを含む溝が多かった。一方、G018はG015を少しオフロードよりに振ったG016(X-AT)のテイストを入れたダイナミックなパターンとなった。G016はブロックが大きいことから剛性が高く、オフロードではトラクションも強い。G018はオンロードでの荒れた路面でもしなやかで乗り心地も柔らかい印象だ。タイヤも10%ほど軽く、燃費にも優しい。またG015と比較すると接地形状がショルダー部まで広げられており、トラクションは十分だ。

 またG018のハンドリングはオフ/オンを問わず穏やかでジワリとグリップする感触でトライトンやハイラックスのようなピックアップトラックからRAV4まで一貫して共通する印象だった。

 オフロードでの特徴はパターンをトラクション方向にエッジを効かせて、サイプも3D構造でちぎれなどの摩耗に対応しており、オフロード試乗で周回を重ねた後の摩耗も綺麗だった。

ホワイトレター。タイ工場でG018の製造工程で手間がかかっていて驚いた。紫外線にも負けず、汚れてもすぐに落ちるノウハウが詰まっている
その黒抜き版。さらにもうひと手間

 オンロードでのパターンノイズも意外と小さいのはパターン配列の成果だ。またすべてのサイズで凍結路以外のスノー性能を確保するスノーフレークマークを取得しており、その性能もG015に比較してかなりレベルアップしているという。このクラスには4WDが多いのでまさに全天候型だ。

 試乗したのは乗用車用では見慣れないLT表示。タイヤ規格はJATMA(日本自動車タイヤ協会)か欧州のETRTO(European Tyre and Rim Technical Organization)がメジャーだが、北米はTRA(Tyre andRim Association)でパッセンジャー用タイヤはPがサイズ表示の前に付き、小型トラック用はLTと表示されるため、今回のG018は北米規格で開発されたことが分かる。

 で、小型トラック用は乗用車よりも重いことや、積載時の負荷にも耐えられる必要があり、タイヤが頑丈に作られる。乗用車用の構造では特に表示されてないことが多いが3~4プライぐらい。これがLTになると6~10プライと頑丈になって、空気圧もこれに合わせて高く設定されている。今回のG018でも試乗車は330kPaとPCで見慣れた目ではギョとするような数字だがタイヤを安全に使うための適正空気圧で、同じサイズのPCよりは50kPaぐらい高い空気圧を必要としている。つまりPC規格なら270kPa前後ぐらいの空気圧になるが、実際にはクルマの使用条件などで適性空気圧は変わってくる。

 もう1つ重要なのはロードインデックス。タイヤが許容できる最大質量を示し、速度の許容レンジ、SとかZの記号の前の付けられる数字だ。89Vとか72Hなどと表示されている数字で、ミニバンにサイズだけ見て装着するとロードインデックスが不足してしまうこともあるので注意。

G018に表記されていたタイヤ表示。TRA規格表示で示されている。LTはLight Truck規格。サイズは265/70R17 121/118はロードインデックス、Sは速度レンジ、10PRという乗用車用と違って倍近いプライ数で頑丈に作られています

 以前にエスティマに履いたタイヤがしっくりこないと思ったらロードインデックスがわずかに不足していた。確認選択のミスだった。その後ミニバン用タイヤのRV2(今はRV3に進化している)に履き替えたらビックリするほど収まりがよかった。ロードインデックスへの認識不足です。

 タイヤについてのお話でした。

前日の雨で泥と化したコースをかき分けながら走るトライトン。G018 A/T4の泥はけも良好だった
日下部保雄

1949年12月28日生 東京都出身
■モータージャーナリスト/AJAJ(日本自動車ジャーナリスト協会)会員/2020-2021年日本カー・オブ・ザ・イヤー選考委員
 大学時代からモータースポーツの魅力にとりつかれ、参戦。その経験を活かし、大学卒業後、モータージャーナリズムの世界に入り、専門誌をはじめ雑誌等に新型車の試乗レポートやコラムを寄稿。自動車ジャーナリストとして30年以上のキャリアを積む。モータースポーツ歴は全日本ラリー選手権を中心に活動、1979年・マレーシアで日本人として初の海外ラリー優勝を飾るなど輝かしい成績を誇る。ジャーナリストとしては、新型車や自動車部品の評価、時事問題の提起など、活動は多義にわたり、TVのモーターランド2、自動車専門誌、一般紙、Webなどで活動。