日下部保雄の悠悠閑閑

人とくるまのテクノロジー展、雑感

人とくるまのテクノロジー展2024に行ってきた。パシフィコの案内看板

 公益社団法人自動車技術会が主宰する「人とくるまのテクノロジー展」。2024年も駆け足で回ってきた。年々出展社が増えてスペースも拡大している。テクノロジー展の主体は部品メーカーで普段は直接見えない自動車産業の原動力が分かる。初日は特に来場者数が多かったので盛況だった。

 最初に入ったD館では多くの部品メーカーを横目で見ながらいすゞにたどり着いた。エルフのEVトラックを展示しており、ラダーフレームだけにバッテリやパワーユニットの位置関係がよく分かる。

いすゞELFのEVシャシー。小型トラックでルーティン配送には向いている。ラダーフレームのEVレイアウトは分かりやすい

 乗用車メーカーが入る会場にはトヨタ、ホンダ、日産、三菱自動車、マツダ、スバル、スズキがあってにぎやかだ。OEMは車体も持ち込んだ展示なのでスペースも広い。トヨタはクラウンセダンのHVとFCEVのカットモデルで2つのパワートレーンのレイアウトが分かりやすかった。

クラウンFCEVのカットモデルを後ろから見たところ。水素タンクが顔を出している

 一方のホンダはCR-VのFCEVがサラリと置いてあった。人だかりがすごくなかなか近寄れない。ホンダのFCEVの歴史はクラリティから始まって長い。

CR-V FCEV。何気に展示されてたCR-Vの燃料電池車。人だかりでやっとパワーユニットのてっぺんだけ撮れたけど、よく分かりませんね

 三菱自動車はアイデア募集というユニークな作戦。確かにどこのメーカーも開発リソースが不足しており人材確保に躍起だ。

トライトンで元気な三菱自動車はアイデア募集中。確かに叡智が集まっているので面白いかも

 スズキは例のメタンから作るバイオ燃料で走るインド製のアルトの展示で、地に足を着けたスズキの活動は感心する。

 マツダはロータリーの活路を見いだしてMX-30推し。そして日産は次世代の個体電池へのロードマップを示してBEVの先駆らしい展示だった。わずか3年ぐらい後に走り出す。

 OEMのそばにあった太陽誘電というメーカー。認知度アップにライト付けボールペンを配っており、その光に吸い寄せられてブースに行く。そっけないデザインの電気自転車が置いてある。永久機関のように1000kmも走るという。モーターを前輪に付けたのがミソで、シンプルに回生が取れるので充電ができ、航続距離が長い。重いバッテリを持って充電する回数が減らせるというわけだ。多機能メーターには電池残量以外に発電量や人間の消費カロリーを表示して「環境」と「健康」に優しいとうたっている。確かに自転車の使い方は目的地に着いたら帰ってくる。上れば下るわけだ。エネルギーを全部回収なんて虫のいい話はないが確かに充電回数は減るだろう。で、前輪をモーターアシストするのでドライバビリティはどうなんでしょう?

 太陽誘電はコンデンサなどに強みがある電子部品メーカーで、制御コントローラーに強みがある。ちょっと面白そうだ。

サイクリングイベントでは紹介されているフロントモーターで回生機能を持つ太陽誘電の電動自転車。認知度アップにいいアイデアだ

 隣にあるのは自立式ロボット自転車で名をはせた村田製作所。タイヤのサイドウォールにタグを埋め込み、それを読み取ることでタイヤの管理ができる技術を展示していた。タイヤ製造時にタグを埋め込み、通信でタイヤのデータ管理ができる。そのタグが走行中のストレスにも耐えられるなんてすごいと思ったら、ダンロップではトラック用タイヤで採用しているという。物流業界では結構画期的なことではないだろうか。ほかにもいろいろと紹介があったが、ここはプレゼン力も高いと感じた次第。

個々のタイヤ管理ができるシステムが実現したのは、この村田製作所のタイヤに埋め込めるタグのおかげ。耐久性、信頼性を確保してミシュラン、ダンロップが採用している。特に物流業界では安全管理に役立ちそうだ

 人とくるまのテクノロジー展、チョイっとかじっただけだけど見応えありました。

ヤマハの自律型オートバイのプロトタイプ。これなら自分にも乗れるかも。二輪車の夢を広げてくれる。
日下部保雄

1949年12月28日生 東京都出身
■モータージャーナリスト/AJAJ(日本自動車ジャーナリスト協会)会員/2020-2021年日本カー・オブ・ザ・イヤー選考委員
 大学時代からモータースポーツの魅力にとりつかれ、参戦。その経験を活かし、大学卒業後、モータージャーナリズムの世界に入り、専門誌をはじめ雑誌等に新型車の試乗レポートやコラムを寄稿。自動車ジャーナリストとして30年以上のキャリアを積む。モータースポーツ歴は全日本ラリー選手権を中心に活動、1979年・マレーシアで日本人として初の海外ラリー優勝を飾るなど輝かしい成績を誇る。ジャーナリストとしては、新型車や自動車部品の評価、時事問題の提起など、活動は多義にわたり、TVのモーターランド2、自動車専門誌、一般紙、Webなどで活動。