日下部保雄の悠悠閑閑

時代に沿って変わりゆくロータス

ロータス・エメヤ。アンヴェール前に随分大きなクルマだと感じたけど、実際にLサイズのグランドツーリングカー。しかも4ドアだった

 ライトウェイトスポーツカーの盟主と言えばロータスだった。ケータハムにつながる走るためだけにあるクラブマンレーサーで世に知られ、続く軽量/高剛性(当時としては)のXボーンフレームを使ったエランで当時のスポーツカーマニアは胸を躍らせた。

 創業者であり天才デザイナー、コーリン・チャップマンの黄金時代から紆余曲折を経て今はジーリー傘下にある。とはいうものの、ロータスはロータス。これまで培ってきたスポーツカーメーカーの矜持は今も変わらず、開発生産拠点も同じく英国にある。

アイルトン・セナのロータス ルノー 97T。1.5リッターV6ターボは1000PSともいわれるパワーを出していたという。重量540kgはとんでもない軽さ。今のF1に比べるとコンパクトで空力も極めてシンプルだ

 さて、過日借りだしたロータスの原点ともいうべきケータハム 170Rはスズキのターボエンジンを積んでマフラーはサイド出し、ウインドシールもないという、クルマは腕っぷしで走らせるというスポーツカーの原点みたいなクルマだった。

ケータハム 170Rのコクピットはすべてアナログ。タンブラースイッチとシンプルなメーターがすべて

 そして今年の暮れに日本にやってくる最新のロータス、Emeya(エメヤ)はロータスとしては第2弾のBEVになるGTカーだ。すでにELETRE(エレトレ)というBEVのSUVがラインアップされていた。完全なリサーチ不足だ。

 4ドアのロータスって考えてもいなかったが、その歴史上初めてのオリジナル4ドアセダンということになる。大きい、地上高が低い、高価は苦手意識があって近寄らなかったので、いかにこの分野に疎くなっていたか改めて思い知った。そして、ためらっているうちにロータスはスーパーカーメーカーに成長していた。

 バッテリは102kWhという大容量。それにともなって重量は2480kg(英国数値のようでドライバー1名、75kgを含んだ数値)という重さ。ボディサイズも5139×2005×1459mm(全長×全幅×全高)と超ハイパフォーマンスモデルらしくビッグだ。さすがにアルミモノコックでも重い。駆動方式は巨大なトルクを受け止めるモーターによる4WD。

 エメヤは3種類のグレードがあり、基本モデルと装備を充実したエメヤ Sは総出力450kW/710Nm。トップエンドのハイパフォーマンスモデルとなるエメヤ Rでは675kW(918PS!)/985Nm(!)で、0-100km/hは2.78秒で走りきるという。標準モデルでは4.15秒。Rの重量は2575kg(ドライバー込み)だがこの強烈なトルクには100kgほどの重量増は歯牙にもかけない。ホイールベースはミニバンにも匹敵する3069mm。後席のあるロータスだけでも驚きだが広くて豪華だった。

ドライバーインターフェース。スッキリとしたディスプレイが中央にある。ドライバー前にはほとんど何もない。必要なものはHUDに映されるのかな
タップリした後席。センターコンソールにはコントロールパネルがある

 ロータスは変わっていく。2028年までにすべて電気で走るラグジュアリーブランドを目指すとしているが、エメヤを見るとなるほどと思う。

 一方、いつも旧車レースで乗せてもらっていたエランが恋しく思うのでした。

レーシングエラン。俊敏なライトウェイトスポーツカー、エランのレース仕様。狭いコクピットが懐かしい
日下部保雄

1949年12月28日生 東京都出身
■モータージャーナリスト/AJAJ(日本自動車ジャーナリスト協会)会員/2020-2021年日本カー・オブ・ザ・イヤー選考委員
 大学時代からモータースポーツの魅力にとりつかれ、参戦。その経験を活かし、大学卒業後、モータージャーナリズムの世界に入り、専門誌をはじめ雑誌等に新型車の試乗レポートやコラムを寄稿。自動車ジャーナリストとして30年以上のキャリアを積む。モータースポーツ歴は全日本ラリー選手権を中心に活動、1979年・マレーシアで日本人として初の海外ラリー優勝を飾るなど輝かしい成績を誇る。ジャーナリストとしては、新型車や自動車部品の評価、時事問題の提起など、活動は多義にわたり、TVのモーターランド2、自動車専門誌、一般紙、Webなどで活動。