日下部保雄の悠悠閑閑

2024年のメディア対抗4時間耐久レース、いろいろ

グリッドでスタート前の孤独な時間を過ごす小林編集長。1人残して皆ピットに帰ってしまった

 今年もメディア対抗ロードスター4時間耐久レースの季節がやってきた。1989年、NAロードスターが誕生して以来、現行のNDに至るまで4代35年にわたるメディア対抗4時間耐久レースが、最も長く続くワンメイクレースとしてギネスに認定されるかの大切な1戦にあたる。

 しかも今年のNDロードスターは2023年10月に大幅改良が発表されて2024年に発売された新型モデルになり、グレードはモータースポーツベース車のNR-Aに統一され、使われる燃料もカーボンニュートラル燃料が初めて使用されるなど節目の年でもあった。

 新しいレースカーはエアコンもADAS系も助手席も装備したパーティレース仕様と共通だ。これまでの車両よりも70kgほど重くなっている。初めてのカーボンニュートラル燃料の燃費もこれまでのデータを受け継げるか不明だ。

 今年のチームメイトはCar Watchの小林編集長に、いつもお世話になっているパーティレース出身のISHIKAWAさんと石川琢也さん、それにe-Motorsportsの世界では超有名な川上奏さん。

 予選は後者の3人は担当できず、小林編集長が固辞したために自分がやる羽目になった。予選アタックは年イチレーサーに荷が重い。前日に走った印象ではますます迷うことばかりだ。

ボンネットに貼られた5人のドライバーネーム。頑張る!

 エンジンのパワーが出るのは最初の3周ぐらいと聞いており、タイヤも温度上昇中が最もタイムが出やすいので早く切り上げようと思ったが、思うようにタイムが上がらない。なんだか感覚がずれている。結局15番手に落ち着いた。出走は20台だからグリッドは後ろから数えた方が早い。耐久レースでも予選は大事なのに悔しい。

 曇り空の中、16時7分にスタートフラッグが振られた。スターターの小林編集長はペースよく、燃費を保ちながら順位を少しずつ上げていく。2023年のレースでコツをつかみ、今年は3ワイドになっても屈しない走りだ。

 50分を消化して自分にバトンタッチ。しかし無線のコネクトに失敗し、交信不能のままピットアウトした。無線がないと情報が入らずペースも順位も分からない。

 使えるCN燃料は60Lで燃費よく早いラップを刻むのが命題だ。事前のインフォメーションでは5000rpmぐらいで燃費が悪化するらしい。ラップタイムも分からないが燃費計を目安として走ることにした。引っ張りで5500rpmシフトとしたが、燃費が落ちると5000rpmシフトにして5速まで入れることもあった。

 ところでなぜか切ってあるはずのDSCが効いて減速してしまう。いろんな警告灯が点灯していたのでOFFと信じていたのと、下手に手探りでスイッチを触ってONになったら嫌だなと思っていたが、持ち時間の半分以上を走ったところで「やっぱりおかしい」と意を決してロールバーに隠れているスイッチを手探りで押してみた。

 メーター上にTRACKモードが点灯して俄然走りやすくなる。DSCのOFFスイッチはこの下にあるらしいがほとんど介入しないし、雨もパラつき始めたのでこのままにした。

 後で聞くと小林さんはじめ、他の3人のドライバーも「TRACKモードに助けられた」とコメントしていたのでレースでも使える有効なモード、特にウェットで効果絶大だったようだ。

 ヒヤヒヤもので時計を見る回数が多くなったころ、ピットからみんなから「帰ってこい!」の合図。各ドライバーの走行時間はペナルティの対象になるので大切なんです。

 途中で他車にグラベルに押し出されることもあったが、状況から多分7~8番手ぐらいでバトンをつなぐことができたと思う。

コントロールタワーのポジションボードに表示された18時20分ごろのポジション。この日は曇りで早く日が暮れた

 両石川さんはウェットの中、燃費を重視しながら安定したペースで走り抜きアンカーの川上さんに託す。夜、しかもウェットの筑波は初めてとのことだがe-Motorsportsの第一人者はすごい。点滅する燃料警告灯の中でもペースを落とさず、他車が残り10分を切ったあたりから燃料切れで停車する中、7位でチェッカーを受けた。

フィニッシュ近くの64号車、1コーナーの進入。ドライバーは川上奏(かなた)選手で、最後のスパートをかける。編集の塩谷氏が付けたライトは判別しやすい
1コーナーの中盤の64号車。後ろの頑固一徹号は桂伸一さん。各チーム思い思いのデコレーション

 川上さんに聞くとe-Motorsportsではステアリングワークはジワリとユックリ操舵するのが鉄則なんだとか。実車と変わることはないし、むしろ丁寧だと思う。ビックリでした。

 終わってみれば自分の反省点はテンコ盛り。予選の走り方はアマアマで、多くのクルマを置いたことでトラフィックの中タイムロスをさせてしまった。

 DSCの件は全く言い訳できない。固定概念は抜けないものだが、早く操作すればよかったのだ。もう少し順位を上げられたかもしれない。そもそも走らせ方も予選同様アマイ……と、毎年反省することばかりだがロードスターのドライビングはやっぱり楽しい!

 ベストカー、念願の優勝おめでとう! そしてマツダの毛籠社長はじめ役員チーム、忖度などするチームは1つもない中で4位入賞は素晴らしい。

 このロードスター耐久レースが業界に与えた影響は計り知れないほど大きいと思う。

日下部保雄

1949年12月28日生 東京都出身
■モータージャーナリスト/AJAJ(日本自動車ジャーナリスト協会)会員/2020-2021年日本カー・オブ・ザ・イヤー選考委員
 大学時代からモータースポーツの魅力にとりつかれ、参戦。その経験を活かし、大学卒業後、モータージャーナリズムの世界に入り、専門誌をはじめ雑誌等に新型車の試乗レポートやコラムを寄稿。自動車ジャーナリストとして30年以上のキャリアを積む。モータースポーツ歴は全日本ラリー選手権を中心に活動、1979年・マレーシアで日本人として初の海外ラリー優勝を飾るなど輝かしい成績を誇る。ジャーナリストとしては、新型車や自動車部品の評価、時事問題の提起など、活動は多義にわたり、TVのモーターランド2、自動車専門誌、一般紙、Webなどで活動。