日下部保雄の悠悠閑閑
2台のEV
2024年9月23日 00:00
ICEからBEVへの転換期にあって、フィアットは少なくとも日本では1年半も新型車が出ていない。久しぶりに二子玉川で発表されたのはフィアット・600eで、長い人気を誇るフィアット・500のエッセンスを継承したデザインは秀逸で街中でも振り向かれる存在になりそうだ。
「セイチェント」と呼ばれるバッテリEVは54kWhのバッテリを積み、WLTCモードで493kmの走行距離とされている。モーター出力は62kWで前輪駆動だ。駆動方式はBEVになってから搭載の自由度が増してRRも増えたが、フィアットは500eの流れをくんで現行では荷室スペースをかせげるFFだ。個人的にはトルクが大きく瞬発力の高いBEVはRRが向いているんじゃないかと思うところもあるが、制御で自由に設定できそうだ。
フィアットのシンプルで明るいセンスにはいつも心惹かれる。わが人生で一度だけフィアットを所有していたことがある。初代パンダだ。古い小さなエンジンをそれこそブン回して、正真正銘のキャンバスシートに座って、ポンポン跳ねるリアサスの突き上げをハンドルにしがみつくように運転していた。
リアシートもキャンバスで、シートの支点を変えると簡易ベッドになるので、まだハイハイしかできない長男を乗せてキャンバストップを開け放ち、海岸沿いの道を走ったのはいい思い出だ。とっても快適じゃなかったけど楽しかった。イタリア人は人生を謳歌するのが上手だがクルマも同じだなと痛感した。
あれから数十年。BEV時代のセイチェントはどんなフィアットを見せてくれるのだろう。
一方、ボルボのグローバルカー、EX30にやっと試乗することができた。BEV専用で、今後グループ傘下の多くの車種で使われると思われるBEV専用のプラットフォーム。こちらはRRを基本とする。
69kWhのバッテリで航続距離560kmだが、試乗は高速道路が多かったので350km付近を目安に充電ポイントを考える。幸い休日でも下りサービスエリアの充電スポットはすいており、90kWと150kWの急速充電をしながら目的地の新城まで行けた。この仕事でも充電するチャンスはあまりなく、特に公共の150kW急速充電は新鮮。ゴーと音がしてコーヒータイムで80%充電が可能だった。そんなことはないが音をたてて電気が流れ込んでいく錯覚をおぼえた。
EX30は北欧のボルボらしいクリーンな内外装が好ましく、ほとんどの操作がセンターディスプレイから行なうようになっている。例えばドアミラーもそうだし、グローブボックスのフタもここから開く。何もそこまでと思い戸惑ったが、数日館間付き合っているうちに慣れてしまった。
ハンドリングや挙動の落ち着きなど発展途上だが、市街地では視界や取りまわしなどとても扱いやすかった。こちらは近いうちにインプレも掲載予定です。