日下部保雄の悠悠閑閑
ラリー北海道
2024年9月16日 00:00
全日本ラリー選手権第7戦、ラリー北海道に行ってきた。国内7戦あるラリーのうち、グラベルラリーは北海道の2戦のみ。ラリー北海道は帯広を起点に行なわれ、クロカン車のXCRクラスもあり参加車両はバラエティに富んでいる。
ハイスピードグラベルラリーのため、敬遠するチームもある一方、ラリーはグラベル! と待ち望んでいたチームもある。ワンミスがクラッシュにつながるリスクもあるが、北海道らしい広大なグラベルコースはやっぱり魅力だ。
今年、TOYOTA GAZOO Racingは全日本ラリーチーム(TGR-WRJ)とオーストラリアラリー選手権(ARC)で実績を残すTOYOTA GAZOO Racing Australia(TGRA)との交流を図るため、育成ドライバーの大竹直生選手がオーストラリアへ行き、ハリー・ベイツ/コーラル・テイラーのGRヤリス・ラリー2が全日本ラリーに挑む。ベイツ選手は2度のARCチャンピオンとなった実力派で、今年もシリーズのトップランカーだ。
TGRは各地域との交流を図り、国内ラリーをさらに活性化するという目標を立てている。海外からトップクラスの参戦者が増えると日本のラリーには大きな刺激となる。国内ラリーが世界に開かれる夢のような取り組みだ。
GRヤリス・ラリー2は復帰したコバライネン選手やADVANの奴田原選手など5台が走る。そしてチャンピオンに王手をかけたシュコダ・ファビアR5の新井大樹選手との競い合いも注目だ。
コースは5つのSSを2回ないし3回ずつ、計12SSを2日間で走る。観戦に行ったのは名物コースの4.63kmの陸別(リクベツ)と6.12kmの音更(オトフケ)。
初日の陸別は帯広起点のラリーでは必ず走る有名なコース。観戦エリアも広く、3回も走るために観戦ポイントを変えて見ることができる。展示エリアには北海道のおいしい屋台も出展して楽しい。ラリーに力を入れるKYBブースもあって来場者は多い。
そしてレジェンドドライバー、ユハ・カンクネンが同じSSをデモランするという企画が盛り込まれていた。車両はなんと!TTE時代のST185セリカ。カンクネンのサイン会もあり、ラリーファンにとっては忘れられないイベントになったと思う。
陸別で自分が見ていた観戦ポイントはラリー車までは遠いものの高速で走り抜けるのが見られ、車体の上下動や音によるアクセルワークなどそれぞれ特徴があって面白い。
新井大樹選手はピッチングが少なくアクセルを開けている時間が長い。すでにSS5までに首位へ抜け出す。
初めて見るベイツ選手も速い! 速度があまり落ちないしエンジンの音も変わらない。後でリリースを見るとポップオフバルブが不調だったようだが、スマートな走りに見えた。
奴田原選手もあいかわらず無駄のない走り。珍しくタイトコーナーでテールスライドしたが自信を持って攻めている印象だ。サービスパークに戻ってきて「ラリー2は楽しい!」とうれしそうだった。
残念ながら応援していたJN1のKYB号(ラリー2ではなくGRヤリスの改良型)は前のSSで転倒、デイリタイアでグラベルの走りを見ることができなかった。うーん、残念!
XCRクラスで大きなトライトンを走らせている竹岡圭ちゃんも堅実に走っている。どうやらトライトンも気に入ったようで危なげない。
翌日の音更は土手の上からの観戦で、すぐ下をラリー車が通過する。グラベルのラリーカーを間近で観戦できるのはやはりワクワクする。
もっともこちらは見ているだけなので気楽なものだが、ドライバーとコ・ドライバーは次々と現れるコーナーに集中しているに違いない。そしてブレーキの使い方がとてもうまい。直線的にブレーキをかけてヒラリと向きを変えるタイミングが絶妙だしコーナリング速度もギリギリに保たれて速い。トップ争いするクルーはやっぱり素晴らしいぞ!
優勝は既報のようにダントツだった新井大樹選手のシュコダ・ファビアR5。2024年の全日本ラリーチャンピオンに輝き2度目の戴冠となった。
ところで国内ラリーの黎明期から女性ナビゲーターが一定数いた。その冷静な対応はクルーを組んで初めて知ることになり、ある意味、天職なんじゃないかと思ったものだ。
近年ではラリーチャレンジで間口が広がった効果もあったと思うが、女性の参加者も増えている。ラリー北海道ではプログラムに掲載された79台の参加チームの30%を女性コ・ドライバーが担っており、今ではなくてはならない存在だ。ドライバーも増えておりラリーの醍醐味を多くの人に伝えてほしい。