日下部保雄の悠悠閑閑

クラシックミーティング・日本アルペンラリー

ホテルの窓から見える、第5回クラシックミーティング・日本アルペンラリー2024のために集まった26台のラリー車たち

 久しぶりにシャルマンを引っ張り出した。10月4日~5日に長野で行なわれたクラッシック・アルペンラリーに参加するためだ。2年前、そろそろ準備を始めようかなと思っていた矢先、長年の戦友だった田口次郎の訃報で中止に……。

 久しぶりのタイムラリーとはいえ2日間シャルマンが耐えられるか。前回このラリーではイグニッションコイルがパンクして山の中で立ち往生。オフィシャル(箕作さん、その節はありがとうございました)に押してもらってやっとUターン。そのまま惰性で降りてきたのが田口との最後の思い出となってしまった。

シャルマンとの2年ぶりの再会がラリー会場。いつもと同じで元気です

 4灯ヘッドライトのダイハツ・シャルマンはカローラとは違った高級路線を狙って成功作となったA20カローラの兄弟車だ。

 シャルマンの装着タイヤは横浜ゴムのベーシックタイヤ、ECOS。実は165-13のサイズは数多いヨコハマのラインアップの中でもこれしかない(最近Classicシリーズにラインアップされた)。1.6リッタークロスフローOHVエンジンには有り余るほどのグリップでウェットにも強いのでちょうどいい。

 それでもパワーアシストのないハンドルはクソ重く、据え切りなんてそれこそ内掛けになってしまうほど。昔のドライバーは腕っぷしが強いのです。

ドライバー視点。今のクルマよりAピラーが細く、ドアも薄い。直前にいるのは栗山/小平組のP411型ブルーバード。SOLEXとマフラーで力強い音でした

 シャルマンは1972年~1979年に生産されたラリーコンピューターを持たないクラス。他にカリーナやTE27レビンやTE47トレノがいる。

 どちらにしても指示速度は遅くパワーは必要ない。もっぱらナビゲーターの計算力にかかるラリーだ。

シャルマンのナビ席。ハルダのツイントリップが2個、デジタル時計が2個の計算ラリー仕様。今のラリー車よりにぎやか

 時としてエンストしそうになるエンジンをなだめながらラリーはスタートした。コースは諏訪湖畔のホテルを起点とした2日間のデイラリー。霧ヶ峰に向かいビーナスラインも走ったが、その昔はグラベルだったコースも今では舗装の観光道路となっているが、金曜日の山は交通量も少ない。

 交通量のある街道では流れに乗せて走ったらやっぱり早着減点を受けてしまった。何しろ計算ラリーのスペシャリストが大勢いるのでちょっとした減点の積み重ねで勝負権はなくなる。事実そうなった。

 ネンイチドライバーの私。今回乗ってもらった森川修君は何十年ぶりかの計算ラリー。iPhoneにラリー計算のソフトを入れて計算機代わりにしていた。ちなみに森川君はラリーを始めたときのナビゲーターだ。計算、よく思い出したなというくらいである。今やラリーコンピューターがスマホに入る時代。全チェック、オンタイムの0点も夢ではないが……。

森川君が減点を計算中。何十年ぶりかの計算ラリーにしては手慣れたもの

 扉峠、和田峠、ビーナスライン、晴れていれば絶景が広がるはずだが、先週に続き今週も長野は雲の中。おまけに強い雨の中、電気系トラブルでエンジンがぐずりだし、坂が上れなくなってしまった。何回かトライしてハタと気付いたのは電力不足。ワイパー、ヘッドライト、ハルダトリップの照明まですべて消したら復活して回り出した。山の中、ワイパーをたまにしか動かせないのはちょっとつらかったが、曲がりくねったコースを走るシャルマンに現役時代を思い出した。原因は単純なバッテリーターミナルの緩みでした。

汚れているけど、ストロンバーグツインキャブの1.6リッター。緩んでいたバッテリーターミナルを締めて、念のためにスペア配線もした

 最年少でも30代、50代でも若造と言われるベテランたちは車両トラブルの1台を除き、全員HQのある諏訪湖に帰った。

 アナログで当時の駆け引きを楽しむのもクラッシクラリーと胸を張りたいところだが、こちらは実力どおり減点を重ねてクラス3位、クラストップはTE47トレノの寺島/上坂組で20CPで35秒、われわれは131秒で大差だが上出来。帰ってこられただけ目的は達した。でも僕のミスだけにちょっと悔しい。

 アナログクラスのトップは計算ラリー常勝の丸島/浦野組のインテグラで27秒。1CPあたり1.35秒! すごいです。こちらは早着減点があるとはいえ6.55秒。いつもながら圧倒された。

 宿泊組の酔っ払いでにぎわう表彰式の中、ウーロン茶で切り抜け久しぶりのJAF銅メダルに満足して帰路に就いたのでした。

シャルマンはAMSのトランスポーターに積まれて帰っていきました
日下部保雄

1949年12月28日生 東京都出身
■モータージャーナリスト/AJAJ(日本自動車ジャーナリスト協会)会員/2020-2021年日本カー・オブ・ザ・イヤー選考委員
 大学時代からモータースポーツの魅力にとりつかれ、参戦。その経験を活かし、大学卒業後、モータージャーナリズムの世界に入り、専門誌をはじめ雑誌等に新型車の試乗レポートやコラムを寄稿。自動車ジャーナリストとして30年以上のキャリアを積む。モータースポーツ歴は全日本ラリー選手権を中心に活動、1979年・マレーシアで日本人として初の海外ラリー優勝を飾るなど輝かしい成績を誇る。ジャーナリストとしては、新型車や自動車部品の評価、時事問題の提起など、活動は多義にわたり、TVのモーターランド2、自動車専門誌、一般紙、Webなどで活動。