日下部保雄の悠悠閑閑

CX-80の珍道中

徳島でデザインのプレゼンテーション。サイドウィンドウラインが伸びやかに後方に伸びて3列シートの空間を感じさせる

 マツダ「CX-80」のマイルドハイブリッドと標準のディーゼルエンジン車に乗って、徳島-神戸の往復を淡路島通過のルートで走った。

 今回はこの仕事を始めて実に初めてとなる家内との試乗だ。ダンナが何をやっているのか目にモノ見せてくれんと張り切ったものの、こちらはいつものように運転しているだけだし、メーカーとの懇親会も女性同士楽しそうだったし、同業者との奥さまとは焼き鳥とお酒で盛り上がっているし、柴田主査は安住さんだと思っているし、まったく逆効果だったに違いなく、目には「タノシイ!」、そして薄く「フシン」と書いてあるように見えた。

 CX-80では途中道の駅に寄り、キャンピングトレーラーを牽引したCX-80でバックする経験をさせてもらうなど、CX-80の世界観を感じられた。

キャンピングトレーラー。下の箱にはキャンプ道具がたくさん入る。これをたたんでCX-80につなぎ後進させてもらった。真逆の動きをするので難しい。牽引する人は偉い!

 CX-60と共通のプラットフォームだが3列シートのCX-80に合わせてホイールベースは3120mmと長い。3列目シートは爪先のスペースが少ないもののレッグスペースは広く実用性のあるシートだ。

サードシートへのアクセス。2列目シートのスライドが少し重かったが、前方にスライドさせると意外と乗りやすい
サードシートから。ちょっと分かりにくいがレッグスペースは思いのほか広い

 ところがクルマを返す段になって、それまで2列目シートで悠々としていた家人は3列目に移動しており、クルマから降りるなり「狭い」と口走った。口をふさぎたかったがうれしそうだったのでまんざらでもなかったのだろう。フラグシップたる質感にこだわった内外装も気に入ったようだ。

セカンドシートから。質感のあるインテリアは家人にも好感度が高かった

 直列6気筒の3.3リッターディーゼルターボは発進時に一瞬ガラガラ音がするが基本的に静かだし、高速クルージングは8速ATとの組み合わせで快適そのもの。高回転まで伸びるマツダのディーゼルだが、高速道路では低回転でユルユル回り、しかも力強い。途中加速もレスポンスよくガッと加速する。日本初の48Vマイルドハイブリッドは頻繁に回生してスタート直後のアシストは意外と強力だった。

 室内は風切り音も抑えられ、どの席でも静かな室内とゆったりしたシート、それに高速でのフラットな乗り心地は家内も満足そうだ。一般道の荒れた路面ではリアからの突き上げが強くなるが、初期のCX-60で感じた鋭角的な突き上げは丸くなっていた。

徳島側から瀬戸大橋を望む。巨大な建造物は力をもらえる

 ゆったりしたクルージング中、アレクサにつないでみた。いや、つなごうとしたが滑舌がわるかったのか会話ができず、隣の住人はイラっとしたようだ。慌てて会話を変えたのは言うまでもない。次の機会にまたトライしてみよう。

 全長4990mm、全幅1890mmの大きなクルマだが思い通りに動くのでサイズはほとんど感じなかった。手の内に入るフットワークのよいLクラスSUVとしては意外なほどだ。

 マツダはカラーの奥深さや過剰でない高級感などの演出が巧みだ。次はメルティングカッパーという不思議な質感を持った薄茶色の標準車に乗る。発進直後のヒューガラという独特なエンジン音は変わらないが、出力も十分で自然で滑らかな加速は好ましい。欧州車のディーゼルの強いパンチは薄いけど伸びやかな加速は軽やかさがあり、新しいディーゼルの目指すところを垣間見た。

 のんびりと道草を食って約束の時間に遅れそうで少しペースを上げた。高速安定性やハンドルのスワリもよくACCに頼ったクルージングは遅れ気味のタイムスケジュールも気にならなかった。ラクチンは心に余裕をもたらす。

 大排気量車らしいゆったりした味わいとマツダが大切にする人馬一体がうまくバランスして珍道中は思い出深い旅になった。

神戸の夜。光に包まれた神戸の街は美しかった

 良好な燃費は標準車でも16km/Lから落ちることはなく、マツダの提唱する大排気量ディーゼルの燃費のよさを知ることができた。

CX-80の珍道中の締めくくりはJAL便で羽田へ。久々に来た徳島空港は様変わりしており昔日の面影はない。青空がすがすがしかった
日下部保雄

1949年12月28日生 東京都出身
■モータージャーナリスト/AJAJ(日本自動車ジャーナリスト協会)会員/2020-2021年日本カー・オブ・ザ・イヤー選考委員
 大学時代からモータースポーツの魅力にとりつかれ、参戦。その経験を活かし、大学卒業後、モータージャーナリズムの世界に入り、専門誌をはじめ雑誌等に新型車の試乗レポートやコラムを寄稿。自動車ジャーナリストとして30年以上のキャリアを積む。モータースポーツ歴は全日本ラリー選手権を中心に活動、1979年・マレーシアで日本人として初の海外ラリー優勝を飾るなど輝かしい成績を誇る。ジャーナリストとしては、新型車や自動車部品の評価、時事問題の提起など、活動は多義にわたり、TVのモーターランド2、自動車専門誌、一般紙、Webなどで活動。