日下部保雄の悠悠閑閑

ブリヂストンの新タイヤ

レグノ GR-XIII TYPE RVを履いたLクラスミニバンの代表選手アルファード

 従来、セダンが支えていたポジションにSUVやミニバンが進出している。特にミニバンではLクラスミニバンがプレミアムセダンにとって代わられつつある。

 アルファードはその先鋒で、VIPも使っているケースが急増している。居住空間の広さと乗降性のよさは魅力だろう。

 一方でSUVもミニバンも全高が高く、重心位置も高い。特にミニバンの全高は1.8m~2m近い。新しい需要を創出すべくブリヂストンが発表したのは2024年に発表されたレグノ GR-XIIIをベースにしたTYPE RVだ。

上がGR-XIII、下がGR-XIII TYPE RV。ハイト系車に合わせたチューニング

 試乗したのはアルファードとクラウン クロスオーバー。大磯の広い駐車場に設定された段差路と緩いスラローム。それにアルファードは大磯周辺のバイパスと郊外路を走った。

 アルファードのキャビンの静粛性の高さは定評があるが、GR-XIIIゆずりの静粛性でパターンノイズが非常に小さい。低速ではわずかなロードノイズがするだけでほとんど気にならない。60km/h以上に上げてもパターンノイズに急激な変化はない。ロードノイズは速度なりに高くなるが静粛性が謳い文句のレグノらしい。

 乗り心地はダンピングに優れたもので、軽い感じだが腰の強さを感じる。専用コースに設けられた40mm高のゴムの段差では、乗り上げのショックはあるがバネ上の動きは小さい。段差の乗り下げ時もわずかな振動で収束する。

 GR-XIII TYPE RVはブリヂストンの新しいタイヤ製造技術のコンセプトであるENLITENに則ったタイヤで、より丸く、より軽くを目標にしており235/50R18ではGR-XIIに比較して1.5kgほどの軽量化が図られている。驚異的な軽量化だ。

 ENLITENは言ってみればタイヤのモジュール化で、目的に応じて最良の構造を選択し、コンパウンドもそれに応じた最良のものを選ぶ。これによって軽量化が図られ、短期間で完成度の高いタイヤがコストを抑えて作ることができる。

 AIを駆使した分子配合までコントロールしたコンパウンド技術と、過去のデータの蓄積を解析した構造の組み合わせがポイント。この技術を明確にしたのがブリヂストンの自信の表れだ。

 一方コンパウンドも再生部材を多く使い、合成ゴムの比率を減らしながらも性能を落とさない技術で、アルファードサイズでは転がり抵抗「AA」、ウェット指数「a」を確保している。

上がGR-XII、下がGR-XIII。スチールベルトでもシンプルになっているのが分かる

 GR-XIII TYPE RVはサイズに合った構造になっており、例えばアルファードサイズは静粛性だけでなく重心の高さに応じた剛性を確保し、ロールに対して腰砕け感のない性能を持っている。軽量タイヤでバランスさせたのはENLITENの効果だ。

 ブリヂストンは2列目の乗り心地と静粛性の向上をセールスポイントとしているが、ドライバーシートからも振動の小ささは感じられた。チャンスがあれば2列目インプレッションを試みたい。

 試乗では自動車専用道路でも外乱に強く直進性が高く、コーナリング時のロール特性がよく緊張感が少ない。

 225/55R19を履くクラウン クロスオーバーでも、振動収束の早さと静粛性の高さのバランスの高さが感じられた。

 車種に応じてマッチングの差はあるものの、プレミアムミニバンとの相性のよさを感じたタイヤだった。

クラウン クロスオーバー。GR-XIII、GR-XIII TYPE RV両方にサイズがある
日下部保雄

1949年12月28日生 東京都出身
■モータージャーナリスト/AJAJ(日本自動車ジャーナリスト協会)会員/日本カー・オブ・ザ・イヤー選考委員
 大学時代からモータースポーツの魅力にとりつかれ、参戦。その経験を活かし、大学卒業後、モータージャーナリズムの世界に入り、専門誌をはじめ雑誌等に新型車の試乗レポートやコラムを寄稿。自動車ジャーナリストとして30年以上のキャリアを積む。モータースポーツ歴は全日本ラリー選手権を中心に活動、1979年・マレーシアで日本人として初の海外ラリー優勝を飾るなど輝かしい成績を誇る。ジャーナリストとしては、新型車や自動車部品の評価、時事問題の提起など、活動は多義にわたり、TVのモーターランド2、自動車専門誌、一般紙、Webなどで活動。