日下部保雄の悠悠閑閑

ブレーキング

本職はメカニック。パッド交換もお手のものだけどこれだけしつこくブレーキを踏んだのは初めてじゃないだろうか

 現役のころ、ブレーキは得意科目だったが年齢を重ねるにしたがって苦手科目になってしまった。早めにブレーキペダルに足がいく。踏ん切りがわるくブレーキングポイントの見極めが不正確だ。そんな自戒もあって今年のナイトスポーツのスキルアッププログラムはブレーキングの練習で始まった。

 昨年初めて2名のメンバーが富士の耐久レースに参加したが、折からの雨で初レースでは実力を発揮できなかった。オンボードカメラを見ると普段できていることがギクシャクしており相当緊張していたんだろう、それでもスピンもなく初レースを無事完走できたので上出来だ。

 今年はナイトスポーツの中村社長の意向もあってもう少し踏み込んだ練習をスタートすることにした。その第一歩はブレーキに決めた。アクセルを踏めば速度は出るが止めるのは難しい。

シンプルな構造だがもっとも重要なブレーキ。ブレーキ交換はもう自分じゃできません

 久しぶりの練習はブレーキポイントを決めて40km/hから始めた。ADVAN NEOVAは制動距離7~8mぐらいで止まってしまうが、最初のうちはブレーキを踏み切れなくて制動距離が伸び気味で一定しない。

 慣れてきたら20km/hずつ速度を上げて120km/hまで反復練習を行なう。ABSを使っての制動は距離も短くて安定する。しかし速度が上がるとブレーキングポイントがバラバラになってしまう。合図を出すことでとりあえず安定させ、速度に応じた制動距離もおよそ知ることができた。

 ブレーキの踏力を一気にかけるのは制動距離が短くなり、精度も上がるが簡単ではない。しかしぜひ覚えてほしかったブレーキだ。

 一方高速からの反復ブレーキでパッドが持つか心配したが、ナイトスポーツで扱っているディクセルのパッドは温度域が高くてフェードする気配はなかった。

 普段使いもこなすパッドだったが、もっとタッチがソフトで日常でのコントロール性が高い中速域のパッドも試してみた。パッケージに温度域が明示されて使用目的に応じて使い方を分けている良心的製品だ。今回のような競技を想定したコンマ1秒を競うには前者のほうが合っているが、柔らかいタッチはウェットでは使いやすそうだ。

夕方になり最後に周回コースで練習したが、朝より自信を持ったドライビングになっていた

 さて、1日ブレーキだけの練習という贅沢な時間を持てた。速度と制動の関係、それに直線で止めるブレーキも経験でき、少し自信を取り戻した様子だった。もちろん自分もいいイメージトレーニングになったし次回はコーナーの入り口の練習だな。

このところ遊んでないからか、やさぐれてるムクさん。気のせいかつまらなそうだ
日下部保雄

1949年12月28日生 東京都出身
■モータージャーナリスト/AJAJ(日本自動車ジャーナリスト協会)会員/日本カー・オブ・ザ・イヤー選考委員
 大学時代からモータースポーツの魅力にとりつかれ、参戦。その経験を活かし、大学卒業後、モータージャーナリズムの世界に入り、専門誌をはじめ雑誌等に新型車の試乗レポートやコラムを寄稿。自動車ジャーナリストとして30年以上のキャリアを積む。モータースポーツ歴は全日本ラリー選手権を中心に活動、1979年・マレーシアで日本人として初の海外ラリー優勝を飾るなど輝かしい成績を誇る。ジャーナリストとしては、新型車や自動車部品の評価、時事問題の提起など、活動は多義にわたり、TVのモーターランド2、自動車専門誌、一般紙、Webなどで活動。