日下部保雄の悠悠閑閑

アルファード三昧

富士の遺産、30度バンクを背にしたアルファードPHEV。まだ大学生のころ、富士24時間レースで走ったのが印象的。そのときのクルマはフェアレディ2000。夜は暗闇に吸い込まれるようだった。当時からするとアルファードPHEVは夢のようなクルマに違いない

 アルファード人気はすごい。押し出しのいいフロントマスク。Lサイズミニバンにふさわしい丁寧なプレスラインと面の張りの艶やかさ。街を走ると立ち止まって振り返る人も少なからずいて、こんな光景は久しぶりだ。現代のスーパーカーなのかもしれない。

 試乗会を経て翌週にはPHEVを富士スピードウェイまで回送した。乗り心地は緩くておおらか。ドライバーシートはクッションストロークもタップリして、のんびりと走れる。少し上下動のバウンシングが大きめだが、鋭角的なショックはうまくいなされて快適そのもの。高速道路では全車速ACCをONにして首都高速から東名高速の足柄スマートICまでのんびり走る。ワンタッチでできるのは便利だが、ほかのタッチスイッチは表示もなく何を指しているのか忘れてしまったので触れないことにした。

 一方、ドライバーモニター付きで渋滞時にaccessに任せて雑用をこなすこともできる。東名の綾瀬BS付近ではいつものダラダラ渋滞に引っかかったが、このシステムで乗り切った。楽勝である。

 この渋滞のおかげで集合時間にわずかに遅れそうだ。山北周辺の上りコーナーが連続するところは重心位置の高いミニバンらしいロールをするが、ロール速度が遅くバッテリによる低重心を活かした安定した姿勢で落ちついた運転ができる。おかげでGoogle マップに案内されて目的地の富士スピードウェイにギリギリ到着することができた。

 その次の週は改めてアルファード E-FOURのExecutive Loungeを借りだした。こちらは2.5リッターの第4世代ハイブリッドになる。何しろ注目のアルファード、しかもボディカラーはブロンズ色のような「プレシャスレオブロンド」というオプションカラーはいかにもゴージャスだ。

アルファード Executive Lounge。プレシャスレオブロンドカラー。春の雪に埋もれてしまったがすぐに溶けた

 もとはと言えば、わが家のアウトランダーで移動するつもりだったが、大人4人+チャイルドシート1席の乗員を乗せるには3列目も出動させなければならない。事前プレゼンでウチの後席マスタードライバーから速攻NGを出されて、アルファードに再度ご登場願った。

 ホイールベース3mのミニバンは3列目シートも常時使用できる厚いクッションと広いレッグルームがある。この状態だと3列目後方のラゲッジスペースは限られるが、アルファードはフロア下に格納スペースがある。すぐに出さない荷物やスーツケースはここに収納すれば室内はスッキリする。

3列目シートを後ろにずらすとスペースはこれだけ。もっと前にずらすこともできるが床下収納が意外と使える
ぶしつけながらその状態でサードシートを撮影した。十分なスペースがあるし、2列目は余裕をもっと前にずらしても2列目の人にも十分なスペースがある。さすがに振動は伝わってくるがよくできている

 さてPHEVと違ってエンジン稼働の比率が高くなり、エンジンのブロック剛性をもう少し上げたいところだ。アルファードはかなり遮音が進んでいるが、静かなクルマだけに気になってしまう。ドライバーシートの印象はLクラスミニバンらしいゆったりしたものでキビキビ感はないが王道を進むミニバンだ。ドライブフィールはややロールが大きいがロングホイールベースを活かして安定性は高くリアサスも柔らかく設定できている。リアのバウンシングはほとんど感じない。

 運転席も楽ちんだがやはりExecutive Loungeだろう。ドライバー交代で豪華な2列目に移動。テーブルを出したり備え付けモニターからマッサージさせたり、イルミネーションを切り替えたりして遊んでいるうちに寝てしまった。ここに座ったらもう寝るしかないです。

 さて3列目シートには一番長く座った。わが家の序列では自分はこの席らしい。3列目は使わないときは折りたたんで左右に跳ね上げるタイプ。これ以上シートクッションを厚くすると荷室スペースを侵食するため妥協点だ。それでも十分なレッグスペースと適度なクッション、サイドカーテン、カップホルダーや読書灯も装備するサードシートは思いのほか快適だ。

 さすがに車軸の上にあるサードシートは上下動が直接的に伝わってくる一番疲れやすいポジションになるが、実用的な3列目シートはやはり大きな魅力だ。サードシートでもうとうとしながら目的地に到着したのは最高だ。

 アルファードはおもてなし精神も徹底しており、やはり唯一無二に違いない。

 長瀞の宿に一泊した朝、あたりは雪景色。夏タイヤのままだったので唖然とした。気を取り直してみると幸いにして路面に積もった雪はそれほどでなく、春の雪は湿気を含んでいてすぐに溶けた。

長瀞の宝登山(ほとさん)にロープウェイで登ると小さな動物園があった。敷地は意外と広く鹿や猿などが放たれている。目玉はモルモット。よくなついており触らせてくれる。一列になって小屋に帰るところは想像以上のかわいさ
埼玉県立自然の博物館。これは1500万年ほど前、埼玉が海だったころに栄えていたパレオパラドキシア。海辺に住み、草や貝などを食べていたと考えられているそうだ。このほかにも8mにもなる巨大鮫の歯や模型、現在の森に住む小動物たちのジオラマもあり、古代と現代の埼玉が楽しめた

 高速道路が多かったとはいえ、車重約2.3tに人も荷物もタップリ積んでの平均燃費が13.5km/Lとはトヨタハイブリッドは素晴らしい。

 PHEVでは1000万円の大台に乗り、ハイブリッドのExecutive LoungeのE-FOURで882万円、試乗車はオプションつきで910万1920円。やはりスーパーカーですな。

日下部保雄

1949年12月28日生 東京都出身
■モータージャーナリスト/AJAJ(日本自動車ジャーナリスト協会)会員/日本カー・オブ・ザ・イヤー選考委員
 大学時代からモータースポーツの魅力にとりつかれ、参戦。その経験を活かし、大学卒業後、モータージャーナリズムの世界に入り、専門誌をはじめ雑誌等に新型車の試乗レポートやコラムを寄稿。自動車ジャーナリストとして30年以上のキャリアを積む。モータースポーツ歴は全日本ラリー選手権を中心に活動、1979年・マレーシアで日本人として初の海外ラリー優勝を飾るなど輝かしい成績を誇る。ジャーナリストとしては、新型車や自動車部品の評価、時事問題の提起など、活動は多義にわたり、TVのモーターランド2、自動車専門誌、一般紙、Webなどで活動。