日下部保雄の悠悠閑閑
埼玉県立自然の博物館にいた古代生物
2025年3月31日 00:00
東京から近いこともあって逆に何も知らない埼玉県。秩父長瀞への小旅行で立ち寄った「埼玉県立自然の博物館」はそんな知らないことだらけの埼玉の自然をちょこっと教えてくれた。
公園の中にあるいかにも県立らしい律義な建物だ。出迎えてくれたのは不思議なカバのようなモニュメント。なんじゃこれは? 何も表示はなさそうで館内に入ってみた。
入口で真っ先に目に入ったのは巨大なサメの顎。東京と群馬に挟まれた海のない埼玉にサメは似合わない。説明によると全長16mにもなる巨大ザメが活動していたのは400万年~2500万年前の新生代。当時は世界中の海に生息していたポピュラーなサメだったとか。こんなのがウヨウヨした海のなんと恐ろしいことか。新生代は秩父はもちろん高崎も海の中で化石が出てくるのも不思議ではない。クジラなどを捕食していたらしい。ジョーズの世界だな。
古代ザメの歯はなんと72本が上下の顎に生えている。展示されていた顎の復元模型は歯の内側に予備の歯がスタンバイしており、抜けると起き上がってくる構造だという。
「カルカロドン・メガロドン」の学名が付けられてた巨大ザメ。鮮新世と呼ばれる時代に絶滅したが、その昔のホホジロザメはマグロみたいなもんだな。
さて最初になんじゃこれと思った動物は前回も紹介した1500万年前の新生代に生きた哺乳類。分類すると象の仲間で生態は海辺のカバのようなものらしい。歯が植物をすりつぶすのに便利なよう何本もまとめて臼歯のような形に発達していることから海藻や貝を食べていたらしい。「パレオパラドキシア」の学名が付けられた大きな手足の指は海を泳ぐのに適していそう。化石で盾のような大きな胸骨は何のためにあるのか分かっていない。
発見された化石は体長23m、体高1mでそこそこ大きい。この博物館には歩く姿、泳ぐ姿、食べ物をあさる姿の3体が展示されている日本屈指の博物館だ。化石はおどろおどろしいが復元された姿はおとなしそうで、でかいムーミンみたい。巨大ザメ同様に新生代の埼玉の海を悠々と泳ぎまわっていたのだろう。
ところで世界でたくさんいると思っていた象。現在はアジアゾウとアフリカゾウの2種類しかいないのは意外だった。考えてみればそれしか思い浮かばない。そのアジアゾウの祖先の系譜にあるのがアケボノゾウで、この博物館にあるのは狭山市から見つかった化石。関西では比較的多く見つかっており、北陸や神奈川県からも発見されている。体高1.8m前後の小型の象で250万年~100万年前の新生代の最後の時代に生きていた。
ムーミンみたいな哺乳類や、巨大ザメが海を泳ぎまわっていたのだから象がいたっておかしくないが、地球に生まれてきた生物のなんと多彩なことか。このほかにも地層に興味のある人なら面白いに違いない。秩父は地層の宝庫でもある。
期待以上に面白かった博物館めぐり。今度はどこへ行こうかな。