日下部保雄の悠悠閑閑

クルマ移動に欠かせないETC

多くの会社からETCカードが出ている。1枚で済ませたいが目的別に分けるとこの枚数が必要です

 ETCトラブルで主要高速道路では大渋滞。いつも高速道路の恩恵を受けている身としてはTVを通じて見る長い渋滞の列は他人事ではない。このところインフラの脆弱性が話題になるがETCも国内の重要なインフラでトラブルは怖い。渋滞は事故の引き金になってしまう。

 この渋滞で思い出したのはフランスのオートルートでの出来事だった。ある試乗会でオートルートを使うルートが設定されていた。本来課金のないフリーウェイだったがルートによって料金徴収が始まり、フランス版ETC(正式名は忘れた)が稼働し始めたころの話。案の定料金所でETCレーンはトラブルが起きて大渋滞。当方はと言えば「どうしたものか」と途方に暮れていると助手席に乗っていた試乗会関係者から「このレーンのまま直進」と指示された。なんだか分からないウチにどんどん前に出てあっけなく料金所を出てしまった。ETCレーンから入ったと思っていたのでハテナがいっぱいついた。

 皮肉なもので早いはずのETCレーンで渋滞にハマったドライバーはイライラしていたと思うが、夏のバカンス渋滞で達観しているのか粛々と並んでいた。

 また同じころ、料金所渋滞が本線にも伸び始めたとき、係員が出てきて並んだクルマをスルーできるように誘導し始めた。見る間に渋滞は減っていったが「直前に通過したクルマはどうするの?」と聞いてみたら「運だから誰も文句を言う人はいない」という答え。国によっていろいろだなと思ったがフランスらしいというか合理的。

 ETCのなかったちょっと前は1台ずつ現金を払っていたから渋滞は当たり前。東京料金所がワイドに広がっているのはクルマをさばく名残りで、当時より多い車両をソツなく通過させるETCの恩恵は偉大だ。たまに有料道路に料金所が現れると大慌てで小銭入れを捜すことになる。ダッシュボードにコインホルダーがついていたのも懐かしい。

ダッシュボードのETC2.0。すぐに挿せるところにあって便利
グローブボックス内のETC2.0はセキュリティ上安全。カードを入れ忘れたときは焦るが……

 ETC機器も2.0にバージョンアップして何気なく使っている。実感できないが交通情報を収集することで利用者にフィードバックしている。実感はないがインフラとはそんなものだろう。特に営業車に割引サービスなどのメリットが大きい。

 ETCカードを見ながらツラツラとその重要性を思い出してみた。

北京郊外の料金所(1993年)。鄧小平の改革開放のもと、急ピッチで整備された高速道路。料金所も中国風で風情があります。クルマも懐かしくノックダウンしていたサンタナが走っている。セドリックみたいだが詳細不明
日下部保雄

1949年12月28日生 東京都出身
■モータージャーナリスト/AJAJ(日本自動車ジャーナリスト協会)会員/日本カー・オブ・ザ・イヤー選考委員
 大学時代からモータースポーツの魅力にとりつかれ、参戦。その経験を活かし、大学卒業後、モータージャーナリズムの世界に入り、専門誌をはじめ雑誌等に新型車の試乗レポートやコラムを寄稿。自動車ジャーナリストとして30年以上のキャリアを積む。モータースポーツ歴は全日本ラリー選手権を中心に活動、1979年・マレーシアで日本人として初の海外ラリー優勝を飾るなど輝かしい成績を誇る。ジャーナリストとしては、新型車や自動車部品の評価、時事問題の提起など、活動は多義にわたり、TVのモーターランド2、自動車専門誌、一般紙、Webなどで活動。