日下部保雄の悠悠閑閑
隣の国の手ごわいやつ
2025年4月28日 00:00
日本でのヒョンデ最新のバッテリEV「インスター」。ヒョンデのR&Dは横浜に大きな拠点があり、日本をはじめ海外のヒョンデ車の適合も行ない、日本仕様のインスターにも活かされている。
デザイン力の高さはヒョンデの強みでもある。インスターのボクシーなデザインは機能的でシンプル。インテリアもデザイン性と質感で心地いい空間になっている。
ボディサイズは3830×1610×1615mm(全長×全幅×全高)で、軽自動車以上小型車以下の絶妙なサイズ。室内は大人4人が足をのばして座れる。特に後席は前後に80mmずつ計160mm移動し、リクライニングもできるためにかなり広い。
バッテリは42kWhと49kWh。実際には49kWh仕様がデフォルト。航続距離はWLTCモードで458km(49kWh)。航続距離の長さは1400kg(Lounge)に抑えられた重量の効果も高い。
試乗したのは最上級モデルのLoungeで消費税込み357万5000円。ほぼフル装備のVoyageに加えてシートベンチレーションや電動スライドサンルーフ、17インチタイヤなどを備えている。
安全装備も小型車に求められる装備はほぼすべて装着され、日本仕様でペダル踏み間違い防止機能が含まれる。
装着タイヤはKUMHO ECSTA HS52 EVで205/45R17 88Vを履く。十字形デザインのちょっと懐かしいホイールと組み合わされる。
加速力はBEVらしく力強く市街地ではアクセルペダルの開度は小さい。さらに85kW/147Nmのモーターは高速でも息の長い加速をする。
静粛性ではフロントウィンドウとサイドガラスの厚さを増し、ボクシーなデザインにもかかわらず風切り音はよく抑えられている。ロードノイズはそれなりにあるがクロスメンバーの補強と床下のバッテリでの遮音でスモールカーとしては感心するほど静かだ。
日本仕様はEPSの操舵力を軽く設定し、市街地での取りまわしはもちろん、高速の直進性でも自然な保舵感で好印象だった。
さらにサスペンションではバネ、スタビライザー、ショックアブソーバー、ブッシュも専用チューニングされ、乗り心地では韓国試乗で感じた荒れた路面での付き上げが大幅に緩和されていた。段差通過ではリアの上下動が大きめだが丁寧にチューニングされた印象でこちらも好感が持てる。
ハンドリングもコンパクトらしいフットワークのよさがあるがキビキビ感よりも安定性を重視した設定だ。背の高いコンパクトカーだけにロールが大きく感じるがスタビリティは意外と高い。タイヤともよくマッチしている。
市街地では着座位置が高く直前視界がよい点と、日本の軽が先鞭をつけたヘッドクリアランスの大きさで開放感がある。
ADAS系ではACC使用時に首都高速のような車線幅の狭いレーンでも車線中央を維持しコーナーでも追従性が高い。
EVならではの回生ブレーキは最大0.2Gで停止まで制御する。ドライブモードはSPORT、ECO、SNOWが選択できSPORTは日本仕様ではマイルドに設定されている。
とにかく突出した感覚がなく普通に使えて飽きが来ないのがインスター。ヒョンデらしいインターフェースも明るい室内によく合っている。コンパクトカーらしい楽しさとBセグメント以上の心地よさを併せ持った手ごわい相手がやってきた。カップホルダーが少ないのがちょっと残念だけど。







