日下部保雄の悠悠閑閑

ある朝の出来事

今回のコラムの主人公・ムク。へそ天で伸び伸びと寝ています。何もなかったことになっています

 クラウンエステートPHEVを借り出したときのこと。翌朝、谷田部にある日本自動車研究所(JARI)で開催される「JARI技術フェア2025」を取材する予定をたてPHEVに乗るのもフェアの取材も楽しみに早起きした朝……。

 ことの顛末は、昨夜脱走したタイガー(名前負けしたネコです。いつもビビリながらすぐに帰ってくる)を探しに、上がり框の窓を開けたときに始まった。タイガーの影は見えなかったが視界の下に黒い影が。さっきまで一緒に部屋から外を見ていたムクだ。タイガーを探すなんて気はさらサラサラなく、冒険を目指してどこに行こうかやる気満々だ。

 最近のムクは季節のせいか外に出ると強気になり、連れ帰ろうとすると「シャー」っと凶暴になる。

 それを忘れて慌てて抱き上げたときにネコは虎になった。全力で暴れる小さなネコを見くびってはいけない。彼らの最強の武器は爪、その凶悪な爪の連続攻撃を手首にくらってしまった。

 怒り狂う小さなネコを激痛に抗して家の中に入れるまで何秒もなかったと思うがカーテンや床はまるで乱闘事件の現場だ。

 この騒ぎに「なんだなんだ」と寝床から出てきたわが家最強のネコ、トバと鉢合わせしたムクはいつもネコに戻っていた。「ムク!!」と抗議したところで「なんでしょう~?」と馬耳東風。いやネコだからちょっと違うかも……。

 止血できずに家人を呼ぶがネコに引っかかれたぐらいでと取り合ってくれない。騒ぎを聞きつけて家族も飛び出してくる。修羅場である。

 絆創膏じゃ止まりそうもないし、ウチにあるのはオロナイン軟膏ぐらい。まだ病院が開いている時間じゃない。ようやく事態を察した家人が#7119に相談して結局救急車を要請。ネコのひっかき傷ごときで申し訳ない事態になってしまった。

 すぐに対応してくれたのは近くの総合病院。先生は開口一番「ネコ????」。でも「ありゃ~これはひどいね~」「神経は切れていないから大丈夫、フムフムここか~」「噛まれたんじゃなくてよかったね~」(噛まれるとさらにヤバイらしい)とか言いながらテキパキと処置して合計7針縫うことになった。当たり前のように会計を終えて出勤時間前ですいている電車でトボトボと帰宅した。

 さすがに「今日はおとなしくしてなさい」と包帯を巻いてくれた先生の言葉を胸にJARI行きは断念。トホホな1日となったばかりかPHEVもEV走行しか経験できないまま後日返却することになってしまった。

クラウンエステート。インプレは急遽無理になったので後日報告予定です。白いのはPHEV、赤いのがHVです。せっかくウチに連れ帰ったのに……

 人生初の縫合が飼い犬に噛まれる……じゃなくて飼いネコに引っかかれることになろうとは……。

 あの朝から2週間。ネコたちは小さな冒険を忘れたように日々を過ごし(タイガーはすぐに連れ戻された)、こちらもやっと抜糸した傷口がふさがったところ。迅速に処置してくれた消防や医師のおかげでもうすぐ完治しそうです。大感謝でございます。

小さな野獣と格闘して負けた戦傷。その下で悠々と寝ているのが犯人です

 ちなみに。前号のヒョンデ・インスターのZEV補助金は52.6万円に、東京都の場合25万円になったようです。

日下部保雄

1949年12月28日生 東京都出身
■モータージャーナリスト/AJAJ(日本自動車ジャーナリスト協会)会員/日本カー・オブ・ザ・イヤー選考委員
 大学時代からモータースポーツの魅力にとりつかれ、参戦。その経験を活かし、大学卒業後、モータージャーナリズムの世界に入り、専門誌をはじめ雑誌等に新型車の試乗レポートやコラムを寄稿。自動車ジャーナリストとして30年以上のキャリアを積む。モータースポーツ歴は全日本ラリー選手権を中心に活動、1979年・マレーシアで日本人として初の海外ラリー優勝を飾るなど輝かしい成績を誇る。ジャーナリストとしては、新型車や自動車部品の評価、時事問題の提起など、活動は多義にわたり、TVのモーターランド2、自動車専門誌、一般紙、Webなどで活動。