日下部保雄の悠悠閑閑
都会のフォーミュラ
2025年6月2日 00:00
土曜日のKYOJO CUPを取材した翌日はフォーミュラEを観戦。2日間連続で違うフォーミュラとは珍しい経験だ。前日の東京は雨だったようだが日曜日は曇りで暑さもしのげて過ごしやすい天候。しかもサーキットのスタンドまで私鉄と臨海線を乗り継いで40分ほどで行けるなんて夢のようだ。
昨年は1コーナー先のU字ターンでの観戦でこの狭いコースで抜くのかと驚愕した。今年はグランドスタンド前。普段行き来している公道がレース時には遮断され、目の前のパドックはモーターショーではプレス駐車場になるところだ。
特設コースの随所には大型モニターが設置されレース展開がよく分かる。実況のピエールさんも共にレースを楽しんでいるような感じで分かりやすい。
フォーミュラEは内燃機の象徴であるエキゾーストノートがなく聞こえるのはヒューンという独特の音だけ。会場のアナウンスもよく聞こえる。都会ならではのレースと世界最先端の技術を間近で見られるのはフォーミュラEの最大の特徴だ。20世紀のレース観戦とは大きな違いである。
日曜日のレースでは日産23号車のオリバー・ローランド選手が華麗な戦略でポールポジションから優勝を飾った。隣のスタンド席に陣取る日産応援団は大盛り上がり。レース中盤から声援にも熱が入る。席を提供してくれたジャガーTCSレーシングはニック・キャシディ選手が入賞圏でいいレースをしていたが7番手でフィニッシュした。残念だったのは20歳のFEドライバー、マクラーレンのテイラー・バーナード選手。初入賞を目前に接触で左後輪にダメージを受けてウォールの餌食となってしまった。
コース上の一定箇所に設けられるアクティベーションゾーン(アタックモード)は少し分かりにくい。レーシングラインを外れた既定のアウトラインを通過することで4WDとエクストラパワーが使え、300kWから350kWに出力がアップする。チャンスはどのチームにも平等に与えられ、回数と持続時間はFIAが直前に決定してチームの戦略にも大きな影響を与える。東京では2回の使用義務付け。4分間+4分間か2分間+6分間を選定でき日産は後者を選択してレースを制した。レース巧者のNISMOのレース戦略を見るようだった。
こうしてみると全てピットからの指示で動いているように見えるが、そこはレース。ドライバーの神業的なテクニックがいたるところで見られ、スタンド前のストレートエンドのせめぎ合いはちょっとドキドキする。
車体も今年の仕様は小さな接触にも耐えられるようにバージョンアップされ、レースはギリギリのところで繰り広げられた。故意の接触はペナルティになりドライバーも細心の注意を払っているのが分かり、いっそうヒヤヒヤドキドキだ。
しかもバッテリ容量は47kWh(Tokyo E-Prixで定められた使用可能エネルギーは32kWh)。回生力も使いながら限られたエネルギーをフィニッシュラインで使い切るという耐久レースの妙も入り交じったユニークなスプリントレースだ。
そして帰り。大勢の観客がいたにもかかわらず電車も大して混まず座って帰れた。昼食をウチで済ませ、夕食も家で一杯飲んでるなんてなんと素晴らしい! 素敵な週末でした。





