日下部保雄の悠悠閑閑
フィアット・600 Hybrid
2025年6月23日 00:00
フィアット・600(セイチェント)はチンクエチェントのデザインテーマを引きついだ5ドアのBEVだったが待望のハイブリッドが加わった。プラットフォームはステランティスグループで共有するものでプジョー・308やジープ・アベンジャーとは近い親戚だ。
ステランティスのハイブリッドはユニークだ。ちょっとだけハイブリッドのマイルドハイブリッドを謳っているが、電気で走行できる距離はマイルドハイブリッドの割には長く、スタートからしばらくは0.89kWhのバッテリから供給される48Vの電気で16kWのモーターが頑張って1330kgのセイチェントを走らせる。
主力のエンジンも1.2リッターの3気筒ターボで100kW/230Nmの出力があり、これがなかなか気持ちよく、元気に走らせてくれる。
トランスミッションは6速のデュアルクラッチ。ひと昔前のデュアルクラッチとは違ったマイルドな変速で、元気よくガシンガシンと変速するイメージはない。
このプラットフォームとパワートレーンはステランティス各社で使われる。
セイチェントのポイントはなんといってもフィアットと言えばチンクエチェントを思い出すほど強烈な個性を放つデザインを踏襲していることだ。しかもそこに現代のフィアットらしい新鮮さを感じられるのが素晴らしい。
内装もフィアットらしい。丸形クラスターメーター、2本スポークのステアリングホイール、FIATモノグラム入りのシートなどチンクエチェントの世界観を膨らませている。
4200×1780×1595mm(全長×全幅×全高)というBセグメントでコンパクトとSUVを掛け合わせたようなデザインで、大きくなっているけど贅肉がついた印象はない。
後席はBセグだけに大きな余裕はないが、つま先がシート下に入って座ると見た目以上に広く感じる。
ついでに言えばラゲッジルームも全長の割には意外と広く385L、後席シートバックを倒せば1256Lと広い。小物の収納場所は日本の軽ほどの気配りはないけど、ざっくり30Lほどの置き場あるのはありがたい。
スタート直後は「アレ、BEVだったかな?」と思うほどしずしずと電動走行を開始し、幹線道路に出るまで電気は頑張っている。幹線道路への合流でアクセルを踏み込むと3気筒ターボの出番になるが、ガサツな音ではなく振動の抑えられたトルクフルな加速力を示す。意外と速い。
タイヤはグッドイヤーのEfficientGripで215/55R18(La Prima)と大きなサイズを履いている。ロードノイズとしなやかさももう少しほしいが陽気なセイチェントの性格を考えると合っているようだ。
高速でのアダプティブクルーズコントロールは前車が停止するとこちらも停止する機能も持っている。ドライバーがいつでもブレーキを踏めるようにスタンバイする必要があるのは他社と同様だ。いいなと思ったのはレーンキープ。車線内で自車の位置を決められるので安心感がある。
やがて、富士山の麓で郊外路に入るが、富士山の雄大さもあってなんとなく運転が楽しい。
ただ路面の荒れたところだと後ろ足がバタバタする。凹凸路の凹部でリアサスが暴れるような印象だが、そういえばイタリア車はこんな感じだったなと思い出す。だからといって方向性が乱れるわけではないので、これはこれでBセグフィアットの味だ。
WLTC燃費は上級グレードのLa Primaで23km/L。本格的なストロングハイブリッドほどの燃費ではないが、マイルドハイブリハイブリッドで実用燃費も高く好感度が高い。
価格はLa Primaが419万円だが、先着600台がローンチスペシャル価格で399万円となる。イタリア車に乗ってみたいが家族もいるし……そんな層にはピッタリではないだろうか。







