日下部保雄の悠悠閑閑

アップデートされたGRカローラ

GRカローラ。夏の強い日差しだとガンメタは真っ黒に見え迫力満点

 GRカローラは4ドア5座で実用性の高い本格的なスポーツハッチバック。GRヤリスが販売されていない北米で人気がある。ご存じのようにカローラスポーツをベースにしてGRが魔改造し、心臓部はGRヤリスでデビューした名機G16E。4輪駆動システムもGRヤリスから移植した前後可変トルク配分などを持つ。安定性ではGRヤリスをしのぐが、重量が200kgほど重く全日本ラリーではほとんど見ない。

 外観からも一目で分かるのは大きな前後オーバーフェンダー、フロントのエアインテーク、3本出しのマフラーなど、ボボボーという大きなエキゾーストノートは家人が興味津々に飛び出してきたほどだ。ガンメタのちょっと悪そうな塗色もGRカローラならではで迫力満点だ。そのGRカローラがマイナーチェンジされたというので早速借りだした。

3本出しマフラーがユニークなリアエンド。3気筒ターボを表してストーリーがあって納得です

 DAT(8速AT)と6速MTの2台を交互に借りだし最初にDATに乗った。DATとMTでは外観上の差はない。乗り心地もマイルドになったと聞いていたが、確かにリアからのゴツゴツした突き上げは減少した。ステアリングフィールもスッキリして、4輪の接地性が上がったことでライントレース性も向上した。

 Dレンジでは滑らかにシフトして、乗り慣れたトルコンATと何ら変わりがない。ところがモードをトラックに変えるとアクセルワークに伴って変速する感触がクラッチのないマニュアルのようなダイレクト感がある。さすがにシフトプログラムなど実戦で鍛えただけのことはある。

 残念ながらサーキットで走らせるチャンスはなかったがサーキットで存分に走ったAJAJの走り屋、橋本君によると楽で速いし、意志通りにギヤホールドや選択が可能で「もうマニュアルに乗ってられないっすよ」とのことだった。「ふ~ん、そうなのか」。ちょっと寂しい。

冷却性能を上げたマイチェン後の新しいフロントマスク
従来型のフロントマスク。冷却性能に違いがある

 一方のMTはクラッチ踏力も妥当だし、6速MTも軽くシフトできる。5速まではハイクロスで面白いようにギヤ選択ができ、どのコーナーでもマッチするギヤが選べる。

 そしてiMT。自動ブリッピングなんてと最初は「フン」と思っていたが、これが使いやすくて試乗途中からスイッチONのままだ。シフトレバーの動きに合わせて巧みにブリッピングしてエンジン回転を合わせるので変速に躊躇がない。もう「オレのン十年分のテクニックの賜物を返してくれ」とは言わない。僕より正確で上手だ。

 乗り心地もリアサスペンサスペンションの追従性が上がり、細かい突き上げが大幅に減少した。リアのバンプラバーの形状変更もあったのか大きなギャップでもガツンとしたショックも少なくなった。DATと比べると重量配分の差が影響するのかMTの方が感触はよい。

 コーナリング中の姿勢も安定感が高くなったのはリアトレーリングアームの取り付け点が上に移動したことも大きく、リアの動きがしなやかな動きになった。こだわりのチューニングが効いている。

タイヤ/ホイール:タイヤはADVAN APEX V601。サイズは235/40R18。グリップも高く乗り心地とのバランスも取れたGRカローラによくマッチしたスポーツタイヤだ

 エンジンも冷却系が改善されたことで最大トルクが30Nmアップの400Nmになり柔軟性はさらに上げられた。フラットなトルク特性はコーナーでは加速も粘り、郊外路でも高いギヤでいつでも加速できる特性となる。MTでもACCが使えるのもうれしい。

 何日か付き合って結構気に入ってしまったのでした。奴田原選手がレッキカーに使っているのが分かる気がする。

いつものようにわが物顔でへそ天で昼寝するムク
日下部保雄

1949年12月28日生 東京都出身
■モータージャーナリスト/AJAJ(日本自動車ジャーナリスト協会)会員/日本カー・オブ・ザ・イヤー選考委員
 大学時代からモータースポーツの魅力にとりつかれ、参戦。その経験を活かし、大学卒業後、モータージャーナリズムの世界に入り、専門誌をはじめ雑誌等に新型車の試乗レポートやコラムを寄稿。自動車ジャーナリストとして30年以上のキャリアを積む。モータースポーツ歴は全日本ラリー選手権を中心に活動、1979年・マレーシアで日本人として初の海外ラリー優勝を飾るなど輝かしい成績を誇る。ジャーナリストとしては、新型車や自動車部品の評価、時事問題の提起など、活動は多義にわたり、TVのモーターランド2、自動車専門誌、一般紙、Webなどで活動。