日下部保雄の悠悠閑閑
スズキ・eビターラとBYD
2025年7月14日 00:00
スズキにとって初のBEV、eビターラのプロトタイプ試乗会が袖ヶ浦フォレストレースウェイで行なわれた。
eビターラは4ドア+ハッチゲートのBセグメントのBEV。コンパクトカーに徹しているスズキがどんなバッテリEVを作るのか興味津々だったが、eビターラは欲張らないスズキらしいBEVに仕上がっていた。
サイズは4275×1800×1640mm(全長×全幅×全高)。BEVらしく2700mmのロングホイールベースだ。
2WD(フロント駆動)と4WDがあり、駆動モーターは2WDは106kWか128kW。4WDはフロントに128kW、リアに48kWのモーターを積む。
心臓部のバッテリは2WDで49kWhか61kWh。4WDで61kWhを搭載する。大きすぎないバッテリで重量も軽く、2WDで1700kg/1790kg。4WDでも1890kgに仕上がっている。EV専用のプラットフォームに搭載されたバッテリは安定性で定評のあるBYDのリン酸鉄リチウムイオンだ。BYDは関連会社からバッテリを販売しており調達も容易だ。
比較的コストが抑えられ、充電の際も一定に安定して入るメリットが大きく、衝突でのバッテリそのものの発火は皆無に近いという。BYDのプレゼン動画で有名なバッテリへの釘刺し試験があるが、破壊により火災もトラブルも起きなかったのは衝撃的だった。
航続距離は満充電で106kW仕様では400km以上、128kW仕様だと500km以上とうたわれており、充実してきた充電網で不自由はなさそうだ。
走らせてみるとハンドリングは安定志向。低重心もあってコーナーでの安定性も高い。軽快な面白さは持ち合わせていないが、スズキ初のBEVとしては落ち着きどころに収まった感だ。ただ高速で荒れた道を走破したときに姿勢の乱れを抑えるため、操舵力は重く設定されているからか、市街地想定では少し重く感じた。
また市販された際にOTAによるアップデートをはじめ、ユーザーが使いやすいアプリが用意できるのかもポイントになりそうだ。
eビターラはすべてインドのグジャラート工場で生産され、欧州、日本、インドで販売される。小型車でありながらBEVらしい広い室内にSUVの利便性。面白い展開が期待できそうだ。
タイムリーにBYDで勉強会が開かれ、BYDの目指すSDVやバッテリについての丁寧な解説があった。
BEVの購入検討の際、バッテリの消耗問題が躊躇する要因のひとつだ。新しいパワーソースだけにバッテリの交換時期が使用状況によって大きく変わるのではないか、SOCが下がればクルマの価値は大幅に下がってしまうのではないかとの懸念が持たれていることも障害だ。
個体差はあるものの最近のBEV用に使われるリチウムイオン電池は使用条件による大きな落差はないとの説明があり、BYD車では最近の新車ではバッテリに10年30万kmの保証を行なっている。多くのBEVの中でも最長の保証だ。BYDの中古車ユーザーにも有償で保証が提供される。
併せて使用中のバッテリの状態を可視化してユーザーに知らせる施策も準備中という。中古車価格の安定はBEVの普及を後押しするに違いない。
同じリチウムイオン電池でも三元系とリン酸鉄(LFP)の充電特性の違いがあるとの説明もあった。
三元系は80%充電と20%残が推奨されているが、BYDのリン酸鉄系は0から100%充電も問題ないとのこと。
また三元系はバッテリ残量が予測しやすいがLFPは難しく、実際の走行可能距離と表示がずれることもある。各セルの電圧がバラバラになることが要因だが、通常の使い方では問題にならないものの、より正確なバッテリ残量を表示するためのキャリブレーションプログラムが年内を目途に導入される。
さらに10年使用でもSOCは90%以上あり、普通充電、急速充電でのバッテリの損耗差はないとの説明だった。いずれにしてもバッテリに対する不安解消にはバッテリコンサル+キャリブレーションなど年内に実現させ、ユーザーの不安を払拭していく。
スズキのeビターラのバッテリもBYDのLFPを使っており、BYD本体の情報が共有される部分も多いだろう。








