日下部保雄の悠悠閑閑

JMSとKia「PV5」

5人乗りと2人乗りのKia「PV5」。赤いボディカラーはパッセンジャー

 ジャパンモビリティショー(JMS)が始まった。Car Watch編集部もてんてこ舞いだと思う。会場のビッグサイトは東館と西館に加えて今年は南館にも規模が広がるとともに、混雑緩和にもなるのではないかと期待が持てる。少し離れた南館にはトヨタ・レクサス・そして注目のセンチュリー、ダイハツがデンと構えているので行かない手はないでしょう。みんながいつも探しているトミカも南館の上の階にある。

 東館には新参のKiaが大きなブースを構えていた。Kiaは日本ではなじみが薄いがヒョンデグループにあって先鋭的なデザインで存在感があるメーカーだ。プラットフォームやインフォティメントはヒョンデと共通だが、上物は独自にデザインされている。Kiaの初お披露目は商用車のPV5から始まった。展示されていたのは5人乗りのパッセンジャーと2人乗りのバン。バンは純粋な貨物とキャンピングカーベース、そして福祉車両の3バリエーションが展示された。

 日本ではBEVのバンはこれからなので、KiaのPV5はその先駆けになる。注目したのはパッセンジャー。BEVの振動のない乗り心地と静粛性はいまさらだが、チョイ乗りしたPV5は想像以上に静かで快適だった。ボディサイズは4965×1895×1899mm(全長×全高×全幅)とグローバルカーらしくワイド。ホイールベースも2995mmとロングで、狭い道では小まわりがどうかなと思ったがハンドルの切れ角が大きく意外と取りまわしがいい。

 トラムを思わせる秀逸なデザインはウエストラインが低く、運転席からの視界もいい。さらに室内はEV専用プラットフォームの恩恵で、フロアが低くて後席への乗降性も抜群だ。ステップは不要。

PV5パッセンジャー。トラムを連想するエクステリアは秀逸
風洞内のPV5。EVにとって空力は重要。電費に直接影響するだけに細部にわたる造形の工夫がされている。とくにリアエンドの風の流れが素晴らしい

 室内高も高く開放感あふれるキャビンだ。ミニバンとしてはインテリアはシンプルだが、商用車ベースだけにいろいろ架装できそうだ。現状は5人乗りだが近い将来は7人乗りも追加されるという。このサイズのミニバンが選べないだけにPV5はちょっと心惹かれる。快適さに絞ればミニバンとBEVは相性がよいと思っているのだが。

パッセンジャーのセカンドシート。商用車のバリエーションだけにシンプル。自分でアレンジするのも楽しそう
ダッシュボードもシンプル。見やすく使いやすそうだ

 バッテリ容量は71.2kWh。航続距離はWLTCモードで521km。実走行距離7割としても実用性は高そうだ。価格は補助金なしで769万円と表示されている。

 一方の商用車は標準仕様で790kgの積載。バッテリ容量は51.5kWh。WLTCモードで379kmの航続距離は、積載を考えると物流ではルート配送が想定されるのかな。CO2削減が命題の企業にとっては使いやすい貨物車の可能性も持っている。

 JMSはコンセプトカーから発売間近のクルマ、サプライヤーも含めて見どころ満載。きっとワクワクすると思う。歩きやすい靴で行ってください。

日下部保雄

1949年12月28日生 東京都出身
■モータージャーナリスト/AJAJ(日本自動車ジャーナリスト協会)会員/日本カー・オブ・ザ・イヤー選考委員
 大学時代からモータースポーツの魅力にとりつかれ、参戦。その経験を活かし、大学卒業後、モータージャーナリズムの世界に入り、専門誌をはじめ雑誌等に新型車の試乗レポートやコラムを寄稿。自動車ジャーナリストとして30年以上のキャリアを積む。モータースポーツ歴は全日本ラリー選手権を中心に活動、1979年・マレーシアで日本人として初の海外ラリー優勝を飾るなど輝かしい成績を誇る。ジャーナリストとしては、新型車や自動車部品の評価、時事問題の提起など、活動は多義にわたり、TVのモーターランド2、自動車専門誌、一般紙、Webなどで活動。