日下部保雄の悠悠閑閑

BYD・シーライオン6

シーライオン6。エンジンとモーターを持つためにボンネットはBEVのシーライオン7より高くなっている。シーライオン7とは全く別系統のモデルだ

 日本に導入されるBYD初のPHEVがシーライオン6だ。シーライオンシリーズはすでにBEVのシーライオン7が導入され、流麗なデザインとパフォーマンス、コストバリューの高い質、価格で注目を集めた。

 シーライオン6はそのシーライオン7のPHEV版と思われがちだが、同じなのはシーライオンという名前だけで6と7は全く別のクルマ。駆動方式、プラットフォーム、デザインも異なる。

 日本市場初の内燃機付車両で、ボンネット内には発電/駆動用の熱効率43%と言われる1.5リッターのNAガソリンエンジンを搭載し、145kWのモーターを回す。駆動方式は前輪駆動。遅れてやってくる4WDでは後輪はモーター駆動になる。このエンジンには日本車ではあまりなじみがないが、EURO6に対応するガソリンパティキュレートフィルター(GPF)も装着されている。

DM-i(Dual Mode intelligent)は2つの動力源を制御して使うスーパーハイブリッドシステムの略称。エンジンはGPFを持ちEURO6にも対応するクリーン化を進める。燃焼効率43%と言われる4気筒エンジンはレギュラーガソリン仕様。60Lの大型ガソリンタンクを持ち、航続距離はWLTCで1200kmにも及ぶ

 搭載バッテリはBYD得意の安定性の高いリン酸鉄リチウムイオンを使ったブレードバッテリ。バッテリメーカーらしくモデルによって自在に変更しており、シーライオン6では密度を上げた出力が高いタイプで、容量は18.3kWh。145kWの駆動用モーターで余裕のある駆動力を持つ。

 デザインはシーライオン7よりボンネットが高い。デザインイメージは一連の海洋シリーズ同様に空気抵抗が少ない角の取れた流れるようなデザインだ。特にサイドに入ったキャラクターラインは光の当たり方で色が変わって見える手の込んだ造形を実現している。世界的に金型で有名な館林モールディングの技術力の高さが分かる。

 ボディサイズは4775×1890×1670mmのワイドボディ。着座位置が高く幅はつかみやすかった。

 内装は上級車らしいBYD特有の質感の高さが特徴。大型シートはホールド性がよくクッションストロークもタップリして心地よい。

 13インチの大型センターディスプレイは従来モデルのように回らないが、これだけ大きいとナビゲーション使用時に回す必要はないだろう。周囲を監視するカメラは大きく見やすい。アンダーフロアカメラは省かれているが、狭い駐車場でもストレスがない。前後席ともレッグルームも広く、ラゲッジルームは床が高いが容積は大きい。

シーライオン6のインテリア。ダッシュボードはスッキリして洗練されている。大型のセンターディスプレイからの操作は慣れてしまえば簡単だ

 PHEVのシステムはシリーズ・パラレルだが、クラッチを使う機構はホンダの巧みなシステムを連想させる。

 実際の走行もEVメーカーらしく電動駆動を主として高速巡航ではエンジン駆動となる。静かなEV走行からエンジンが始動するとそのノイズが気になることも多いが、シーライオン6ではモーターまわり、ダッシュボードに配置した遮音材、フロント/フロントサイドウィンドウの遮音ガラスにより、車内の静粛性はかなり高い。風切り音もボディ形状でよく抑えられている。

 バッテリ残量がある限り発進から高速までEV走行で引っ張り、巡航になってからエンジンに切り替わるがその領域は曖昧で、この領域になるとロードノイズも大きくなっているため音質に大きな違いが感じられない。また頻繁に回生しており、バッテリ消費は少ないように感じられる。エンジンが介入する際はクラッチでコントロールするがその際のショックは全くない。非常に滑らかだ。

 タイヤはGiti「Control P10」。サイズは235/50R19を履く。日本ではなじみはないが、シンガポール製でBYDとの共同開発。ウェットでの強みが特徴という。シーライオン7に履いたコンチネンタルとはちょっと味付けが変わりトレッド面が少し強い。

BYDとの専用開発タイヤはGiti社製。シンガポール生産でウェットに特徴があるという

 乗り心地は基本的にフラット。荒れた路面ではリアから少し突き上げがあるが、シートクッションがタップリして細かいショックを吸収する。

 ハンドリングは操舵応答と旋回時のグリップ力変化につながりの悪さを感じたが、ロール量は少なくて安定性は悪くない。操舵力は少し重めとしている。

 動力性能はBEVのような圧倒的な加速力はないがこのSUVでは電気らしい立ち上がり加速で十分な力強さを持っている。

 398万という価格、この質感とPHEVの価値。破格である。

日下部保雄

1949年12月28日生 東京都出身
■モータージャーナリスト/AJAJ(日本自動車ジャーナリスト協会)会員/日本カー・オブ・ザ・イヤー選考委員
 大学時代からモータースポーツの魅力にとりつかれ、参戦。その経験を活かし、大学卒業後、モータージャーナリズムの世界に入り、専門誌をはじめ雑誌等に新型車の試乗レポートやコラムを寄稿。自動車ジャーナリストとして30年以上のキャリアを積む。モータースポーツ歴は全日本ラリー選手権を中心に活動、1979年・マレーシアで日本人として初の海外ラリー優勝を飾るなど輝かしい成績を誇る。ジャーナリストとしては、新型車や自動車部品の評価、時事問題の提起など、活動は多義にわたり、TVのモーターランド2、自動車専門誌、一般紙、Webなどで活動。