日下部保雄の悠悠閑閑

東京オートサロン2026

GR GTのパワートレーンレイアウト。湿式多板クラッチのATトランスミッション。古典的だが丁寧になぞったレイアウトが素晴らしい

 レーシングカーショーに端を発する東京オートサロンは年々にぎやかになる。今年も初日の金曜日から大勢の人が詰めかけた。9時からのゲートオープンで早速、各ブースのプレスカンファレンスが始まり、いつもより混んでるなぁ~と思っていたら、時間が経過するに従って自分のペースでは歩けなくなった。これ、なかなか疲れる。

 モタモタ歩いているとたちまち賀詞交歓会になる。1か所の滞留時間が長くなるのはいつものことだが、ラリージャパンでお世話になったエムリットの友田監督にも会えてラリー話で盛り上がり、北海道の大橋チーフメカにも会えて嬉しかった。さすがに短パンじゃなかったのが残念。

 トヨタはGR GT。人だかりで全景は見えなかったがフレームに乗ったパワートレーンが隙間から見えた。リアアクスルの後ろに湿式多板クラッチ式ATトランスミッションを置き、その後端から出したパワーアウトプットをUターンさせてアクスル上に置いたデフに持っていくという凝ったやり方だ。

 そもそも新開発のV8エンジン(!)はドライサンプで重心高を下げフロントミッドシップに置いている。すごい! トヨタの本気度が分かる。

 英国の名門、アストンマーティンはかつて重いV8を逆手に取って、フロントミッドシップに置き、リアにトランスミッションを置くことでFRでありながら前後重量配分を47:53ぐらいにしていた。もちろんドライサンプで低重心。ハンドリングは抜群だった。

 GR GTは必然的にロングノーズでドライバー位置はリアホイールの前。デザイン上は難しかったに違いない。優雅というよりも機能的。ドライビングプレジャーを最優先した結果だと考えると必然の美というのだろうか。

 全てを新開発したリアルスポーツカー、GR GTは2027年ぐらいには登場するはずだが売価は想像もつかない。

 隣のダイハツブースではラリーの相原さんがコペンの前で何やら説明している。おや、ボンネットの中は空っぽ。イヤ、横置きの3気筒エンジンを縦置きにしてバルクヘッドの中まで押し込んでいる。短い5速MTはその奥にあり、見えない。

K-OPENランニングプロト2。つまり横置き3気筒を縦置きにしたフロントミッドシップのFR。エンジンルームはスカスカだ。いずれにしても人もクルマもクーリング対策がポイントだと思う

 ちょっと座らせてもらった。ロールゲージをまたいで中にスッポリと収まる。ドライバーの着座位置は変わっていないようだが、足が伸ばせるのでドライビングポジションはのびのびとしている。なかなか心地いい。電動トップを外したトランクは広い。このぐらいのスペースがあると便利だ。本格的なミニスポーツは軽枠に収まるらしく、手の内に入りそうな楽しさがありそうだ。今年のラリーに出るのかな。

K-OPENランニングプロト2のドライバーシートに座らせてもらった。フロアは上がっているが縦置きエンジンレイアウトで足はスッキリ伸びる

 以前から注目していたミライースのラリー車も本格的に始まる雰囲気だ。ダイハツの地道な努力が結ばれる年になると良い。

ミライースの手軽にモータースポーツを楽しめるナンバー付き競技車。ゼッケンの915は何を意味するのかな?

 日産ではe-POWERのオーラNISMO RSコンセプトがひな壇に上がっていた。ワイドボディにエクストレイルの可変圧縮比ターボ(VCターボ)を搭載したプロトタイプだ。NISMO製のチューニングe-POWERはどんな走りをするんだろう。

オーラRSはエクストレイルの1.5リッターVCターボを搭載してワイドボディにしたNISMOの手によるコンセプトカー。e-POWERの新たな境地を切り開くか

 今年からNISMOのスーパーGT総監督に就任した木賀さんはVCターボの生みの親。正直言ってe-POWERにスポーツのイメージは持っていなかったが、NISMOマジックに期待できそうだ。モータースポーツにも参加してほしい。

 他にも見るとこ満載だった今年の東京オートサロンでした。

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日下部保雄

1949年12月28日生 東京都出身
■モータージャーナリスト/AJAJ(日本自動車ジャーナリスト協会)会員/日本カー・オブ・ザ・イヤー選考委員
 大学時代からモータースポーツの魅力にとりつかれ、参戦。その経験を活かし、大学卒業後、モータージャーナリズムの世界に入り、専門誌をはじめ雑誌等に新型車の試乗レポートやコラムを寄稿。自動車ジャーナリストとして30年以上のキャリアを積む。モータースポーツ歴は全日本ラリー選手権を中心に活動、1979年・マレーシアで日本人として初の海外ラリー優勝を飾るなど輝かしい成績を誇る。ジャーナリストとしては、新型車や自動車部品の評価、時事問題の提起など、活動は多義にわたり、TVのモーターランド2、自動車専門誌、一般紙、Webなどで活動。