日下部保雄の悠悠閑閑

ステア・バイ・ワイヤ

ギヤ比を自在に設定できるので、翼型ハンドルは小径でスペースを取らない。乗る前に緊張はすぐに解消されて、乗ると面白かった

 別項のインプレッションでも取り上げたが、量産車では国内2車種目となるステア・バイ・ワイヤを装備したレクサスに試乗した。

 最初の体験はアメリカで試乗させてもらったインフィニティで、広い駐車場のようなコースに設定されたパイロンとひび割れた白いコンクリートが妙に印象に残っている。

 インフィニティ(スカイライン)でスラロームを切り返しなしで走れる初めての体験にビックリしたのをよく覚えている。しかし感覚が追い付かないところもあり違和感が残ったのも事実。それにしても新しい技術は面白い。将来のクルマはこうなるんだという感激もあり、いつ日本に投入されるんだろうと関心はそちらに向かう。

 このステア・バイ・ワイヤはその後2014年11月にスカイラインGT-Tにオプション設定され、無事に日本市場でデビューする。のちに登場したハイパフォーマンスモデルの400Rはそのエンジンも素晴らしかったが、角の取れた自然な操舵フィールにも目を見張った。

 さてレクサス・RZに搭載されたステア・バイ・ワイヤは、転舵角200度に設定されて半回転で完結する。当初のプロトタイプはもう少しピーキーだったと思うが、さすがに量産車は自然で何より翼型ハンドルは見た目のインパクトが大きく期待も高まる。

 ギヤ比を自在に設定できるのでハンドル径を大きくする必要もなく、小さいのがひと目で分かる。ステアリングの右側にACC系、左にディスプレイのメニューパネルがあり、整理されている感じだ。上下に開放感があり、ハンドルの上を通してメーターパネルが見え、下は膝との間隔が広いため乗降性にも優れている。

 RZの試乗では速度とハンドル操舵角によってタイヤの切れ角が連続的に変わるステア・バイ・ワイヤの特性を活かし、違和感のない操舵フィールになっている。

 また、ステアリングロッドがギヤボックスから切り離されたことで、路面からのキックバックを遮断してハンドルからの振動を感じることが少ない。知らず知らずのうちに蓄積する疲労の軽減に役立つ。

 まだステア・バイ・ワイヤを装備した量産車は限られているが、スペースの自由度が高まり、クルマの作り方も変わってくるだろう。自動車技術の進化はとどまることを知らない。クルマは面白いぞ。

ムクさんの肉球です。全く緊張なくへそ天で伸び切ってます
日下部保雄

1949年12月28日生 東京都出身
■モータージャーナリスト/AJAJ(日本自動車ジャーナリスト協会)会員/日本カー・オブ・ザ・イヤー選考委員
 大学時代からモータースポーツの魅力にとりつかれ、参戦。その経験を活かし、大学卒業後、モータージャーナリズムの世界に入り、専門誌をはじめ雑誌等に新型車の試乗レポートやコラムを寄稿。自動車ジャーナリストとして30年以上のキャリアを積む。モータースポーツ歴は全日本ラリー選手権を中心に活動、1979年・マレーシアで日本人として初の海外ラリー優勝を飾るなど輝かしい成績を誇る。ジャーナリストとしては、新型車や自動車部品の評価、時事問題の提起など、活動は多義にわたり、TVのモーターランド2、自動車専門誌、一般紙、Webなどで活動。