日下部保雄の悠悠閑閑

Kia PBV登場

Kia PBVジャパンの記念すべき「Kia PBV東京西」オープニングセレモニー。左はキム・サンデKia PBVビジネス事業部副社長、右はKia PBVジャパン田島靖也CEO

 5月中旬、2025年のジャパンモビリティショーで日本初公開されたKia(キア)のPBV(Platform Beyond Vehicle)が正式発表された。

 キアはヒョンデグループの一翼を担う重要なブランドだ。プラットフォームやパワートレーンをヒョンデと共用しながらも独自の研究開発体制を持ち、近年はエッジの効いたインテリアやデザインで韓国国内はもちろん、グローバル市場でも人気を高めている。

 大手商社の双日が設立したKia PBVジャパンは、BEV(バッテリ電気自動車)商用車シリーズ「PBV(Platform Beyond Vehicle)」の販売とサービスを担う会社で、西東京市の新青梅街道沿いに直営ディーラー第1号店をオープンした。今後は厚木、町田、名古屋、三重、岡山、福岡へと展開し、2026年中に1000台という意欲的な販売目標を掲げている。

 PBVの最大の特徴は、BEV専用に開発したプラットフォームとモジュール化されたパワートレーン、ボディを組み合わせることで、多彩なバンを生み出せることだ。また、床下に大容量バッテリを搭載するBEVでありながら、フラットで低い荷室床面を実現。荷物の積み下ろしがしやすく、利便性に優れるだけでなく、乗員の乗降性も高い。

PV5 カーゴのインパネは商用車らしくシンプルだが、Kiaらしいディスプレイなどしっかりデザインされている

 2人乗りの「PV5 カーゴ」では、用途に応じて43.3kWh、51.5kWh、71.2kWhの3種類のバッテリを選択できる。71.2kWh仕様では、最大積載量700kgを積載した状態でWLTCモードで約520kmの航続距離を、また欧州では一充電で最大693kmを走行し、小型商用BEVとしてギネス世界記録に認定されている。

 一方、5人乗りの「PV5 パッセンジャー」には51.5kWhと71.2kWhの2種類のバッテリが用意され、43.3kWh仕様は設定されない。

 エクステリアはキアらしく、商用車でありながら未来への期待感を抱かせるデザインだ。大きなウィンドウエリアは商用車の新しい時代を感じさせる。インテリアはシンプルかつクリーンで、商用車らしく無駄を削ぎ落とした仕上がり。あとは架装業者の腕の見せどころだろう。

 ボディサイズは4695×1895×1925mm(全長×全幅×全高)。特に全幅が広いため、都市部よりも拠点間輸送などに適しているかもしれない。PV5 カーゴは4400Lものスクエアなカーゴスペースを備え、かさばる荷物も効率よく積載できそうだ。

 また5人乗りのPV5 パッセンジャーの後席は非常に広く、ホテルや空港の送迎用途にも適していると感じた。

PV5 パッセンジャーとカーゴ。韓国での事前説明会でのひとコマ。手前がパッセンジャーで、ウィンドウラインの低さが分かる
こちらも韓国でのカット。ドライバー席と後席のフロアの差が分かる。バッテリの収納が巧みで低床を実現している

 駆動方式はFF。韓国で試乗した際には、2995mmという超ロングホイールベースながら、ワイドトレッドとBEV専用プラットフォームで、ステアリングの切れ角が大きく、予想以上に小回りがきいたことが印象的だった。良好な視界と相まって、サイズを感じさせない扱いやすいバンに仕上がっていた。

タイヤは韓国のネクセンタイヤ。韓国では3割のシェアを持つ。サイズは215/65R16で、EV用に開発された低転がりの高剛性タイヤ。韓国の試乗ではマッチングがよかった

 また、バッテリを保護するフレーム構造でボディ剛性は高く、カチリとした印象を受けた。BEV特有の静粛性に加え、低重心とロングホイールベースがもたらす快適な乗り心地は、従来の商用車の概念を大きく変えるものだ。商用車専用のBEVプラットフォームをゼロから開発したことで、これまで実現できなかった価値を提供している。

 PBVは商用車であるため、販売の中心はBtoB市場となるが、特にPV5 パッセンジャーはその個性的なデザインとPBVならではの利便性を活かした、新しいタイプのミニバンとしての可能性も秘めている。

5人乗りのパッセンジャーは、後席の後ろにもこれだけの容積のラゲッジルームがある

 Kia PBV ジャパンの田島社長は、「30年先を見据えた長期事業として取り組む」と語り、日本専用の用品や部品の開発・供給体制を整え、日本市場に適した組織づくりを進めていくという。その言葉は頼もしかった。

 商用BEVはカーボンニュートラル実現に向けて企業ニーズが高まっている分野だ。すでに軽商用BEV市場では、トヨタ・ダイハツ・スズキ連合や三菱のミニキャブEVが浸透し始めている。そうした中、ハイエースクラスに匹敵する積載能力を持つPV5は今後注目される1台になりそうだ。

日下部保雄

1949年12月28日生 東京都出身
■モータージャーナリスト/AJAJ(日本自動車ジャーナリスト協会)会員/日本カー・オブ・ザ・イヤー選考委員
 大学時代からモータースポーツの魅力にとりつかれ、参戦。その経験を活かし、大学卒業後、モータージャーナリズムの世界に入り、専門誌をはじめ雑誌等に新型車の試乗レポートやコラムを寄稿。自動車ジャーナリストとして30年以上のキャリアを積む。モータースポーツ歴は全日本ラリー選手権を中心に活動、1979年・マレーシアで日本人として初の海外ラリー優勝を飾るなど輝かしい成績を誇る。ジャーナリストとしては、新型車や自動車部品の評価、時事問題の提起など、活動は多義にわたり、TVのモーターランド2、自動車専門誌、一般紙、Webなどで活動。