日下部保雄の悠悠閑閑
日産・キックス
2026年7月27日 00:00
日産・キックスがフルモデルチェンジした。2020年にデビューした初代はコンパクトSUVとして使い勝手は悪くなかったものの、e-POWER専用車であったことから、競合車に対して割高感があった。
新型もe-POWER専用車だが、ボディサイズはひとまわり以上大きい。ホイールベースは2550mmから105mm延長されて2655mmとなり、全長は75mm増の4365mm、全幅は40mm拡大されて1800mmとなった。全高は+10mmの1615mmなので、従来のやや素っ気なかったデザインから、ダイナミックで伸びやかなスタイルへ変身した。
第3世代e-POWERは、発電専用に開発されたHR14DDe(1.4リッター)エンジンを採用する。発電機と最新インバーター、大電流に対応するモーター、減速機、増速機を一体化した「5-in-1」の電動ユニットとして、軽量かつコンパクトにまとめられている。
充電時には3気筒らしいエンジン音こそ聞こえるものの、現行ノートよりエンジンルームから伝わる音圧は圧倒的に低い。排気量が200cc増えた余裕に加え、発電専用として一定回転で作動するエンジン特性とブロック剛性が上がったため、振動も大幅に低減された。
そもそもエンジンが始動する回数自体が少なく、始動しても低回転で発電するため、まるで忍者のように気配を消している。走りのクオリティは確実に高まっている。
e-POWERの魅力は、EVならではの力強い加速と、慣れるほど扱いやすく感じる回生ブレーキにある。発進時などごく自然に力強さを感じさせるところが好ましい。
最初に試乗したのはFFモデルで、モーター出力は105kW、最大トルク315Nm。従来型より、とくにトルクが大きく向上している。
Gグレードは19インチタイヤを装着しているがロードノイズはやや大きく、荒れた路面ではバタつく印象が気になった。空気圧が高いのかと思ったが、そういうわけでもないようだ。
ドライブフィールそのものは悪くない。プラットフォームは現行ノートと共通のCMF-Bで、シャシーには十分な余力を感じる。妙なピッチングや横揺れもなく、路面がフラットであれば運転中のストレスはほとんどない。
後席にも十分な余裕があり、ラゲッジスペースも広い。実用性に加え、走りの質感も向上したことで、新型キックスのマーケットでの守備範囲は大きく広がった。
一方で、俄然心をつかまれたのは4WDモデルだ。e-4ORCEの名のとおり、ブレーキ制御も含めて4輪を最適に制御する。
装着タイヤは215/60R17で、銘柄はハンコックのVentus Prime 4。ロードノイズは19インチ仕様よりもやや小さい。フロントモーターはFFと共通だが、リアには最高出力50kW、最大トルク140Nmのモーターを搭載し、こちらも十分なトルクを発生する。ノート4WDで実証済みだ。
何より印象的だったのは、パフォーマンス以上に、走り始めると肩の力を抜けたことだ。クルマが手のひらに収まるような感覚で自在に操れるのは安心感が高い。
前後重量配分もよく、クルマの挙動が常に自然でわかりやすい。さらに19インチ仕様で気になった荒れた路面でのリアからの突き上げも17インチではほとんど感じられなかった。
今回の4WDはブレーキ制御を加えたe-4ORCEに進化した。限界性能を試す場面はなかったが、積雪路の轍やアイスバーンではぜひ試してみたい。きっと楽しいに違いない。
ブレーキは電動ブースターを採用しており、走行条件が変わっても一定のリズムで踏める。ただ、制動の立ち上がりがやや鋭く、もう少しコントロール性に余裕があるとさらに好印象だった。
燃費は累計でFFが16.1km/L、e-4ORCEが15.2km/L。どちらもECOモードで走行したが、走行条件が異なるため単純な比較はできない。それでも体感としては、およそ1km/L程度の差になりそうだ。
価格はこの時代らしく上昇したが、それに見合うだけの車格感や乗り心地、ハンドリングの質の向上もあり、十分に価値のある価格設定だと思う。




