日下部保雄の悠悠閑閑
上陸したBYD「ラッコ」と老舗のアウディ「A6」
2026年8月3日 00:00
海外メーカーとして初となる本格的な軽自動車が日本に上陸した。BYDの「ラッコ」である。わずか4年で企画から製品化までやってのけたという、その開発スピードには驚かされる。実質的な開発期間は約2年。部品点数の少ないEVとはいえ、軽専用プラットフォームに加え、新開発のパワーコンポーネントを採用するなど、ラッコ専用にほぼすべてを新設計した意欲作だ。
最大のポイントは、バッテリ内に配置された「X-パック」である。これまでボンネット内に搭載されていたコントロールユニットを、床下バッテリスペース前方に移設したことで、衝突安全性を高めた。コントロールユニットは一般的に大きなスペースを必要とするが、ラッコではコンパクト化することで限られたスペースへの搭載を可能にしている。
BYDのバッテリは、熱安定性に優れるリン酸鉄リチウムイオン電池を採用。BEVらしくフロア下に敷き詰められ、強固なフレームに収められている。フロア高も低く抑えられており、自然な着座姿勢と広い室内空間を両立している。
衝突安全基準のJ-NCAPでは5スター獲得を目指しているというが、その実力は十分に期待できそうだ。
EVで気になる航続距離は、WLTCモードで210kmと340kmの2種類を設定。210km仕様には22.4kWh、340km仕様には35.84kWhのバッテリを搭載し、後者が実質的な標準グレードとなる。日常使いだけでなく、行動範囲にも余裕が生まれる。
リアシートも薄さを感じさせず、細部まで丁寧に作り込まれている。
国の補助金は15万円にとどまるものの、22.4kWh仕様は補助金適用後で200万円を切る価格となる。35.84kWh仕様も約240万~250万円で、装備内容を考えればかなり意欲的な価格設定と言える。
左右スライドドアは電動式を採用し、使い勝手を高める便利な機能も数多く備えている。軽初となるEVハイトワゴンとして見どころは満載。試乗後にあらためて取り上げたい。
一方、アウディでは人気のコンパクトSUVのQ3に続き、主力モデルであるA6がフルモデルチェンジをした。Q3ではメリハリのあるドライブモード制御と、コンパクトカーとは思えないフラットな乗り味に感心したが、新型A6も期待を上まわる完成度だった。
日本導入モデルはセダンとアバントの2タイプ。駆動方式は全車クワトロ(4WD)となる。エンジンはマイルドハイブリッド化された1.5リッターガソリンターボで、204PS仕様と272PS仕様が用意される。
試乗車は272PS仕様のアバント。タイヤは255/40R20のコンチネンタル・エココンタクト 6 Qを装着する。20インチの超扁平タイヤは最近のトレンドだ。さらにオプションのアダプティブエアサスペンションを装備し、フォルクスワーゲン・パサートで驚愕したソレノイド式ショックアブソーバーをエアサスペンションと組み合わせている。
サスペンションの路面追従性は実にしなやか。超扁平タイヤが苦手とする荒れた路面でもバタつくことはなく、バネ上の動きは見事に制御されている。さすがに高速域ではタイヤ剛性の高さから突き上げ感は残るものの、上下動そのものは巧みに抑え込まれていた。
ドライブモードはバランス、ダイナミック、コンフォート、AIドライブを試した。コンフォートでは凹凸を通過しても車体がうわつくことはなく、ゆったりとした動きで収束する。ダイナミックではロールとピッチが抑えられ引き締まる一方で、乗り心地は角の取れた硬さにとどまる。バランスは最もオールマイティで、お勧めしたいモードだ。AIドライブは先読み制御を行なうようで、長く付き合うほどドライバーに寄り添う味付けになっているように感じた。いずれのモードでも、ソレノイドバルブによる減衰力制御の完成度の高さが際立っていた。
試乗車にはオプションのオールホイールステアリングも装備され、後輪は同相で最大2度、逆相で最大5度まで操舵する。操舵中の違和感はまったくなく、ステアリングの追従性も自然でストレスを感じない。最小回転半径は5.4mに抑えられている。
一方で、レーンキープ機能の介入はやや頻繁で、試乗中は解除スイッチを見つけられなかった。また、メーターディスプレイとステアリング形状の関係から理想的なドライビングポジションが取りにくかった点も惜しい。とはいえ、完成度の高さを考えれば数少ないマイナスポイントと言えるだろう。







