日下部保雄の悠悠閑閑

ハイブリッドラリーカー

アクアGRスポーツの運転席。深いバケットシートにロールケージが入っているが、外観からは想像もできないほどおとなしい

 2025年11月に行なわれたラリージャパンを最後に、ラリーから離れている。ラリージャパンでは最高に楽しいラリーを満喫させてもらい、充実した1週間を過ごすことができた。

 そのヤリスCVTを擁するマッスルラリーチームの友田監督から連絡があったのは、まだ夏の暑い時期だった。「全日本の最終戦、モントレーに参加する予定なので、しばらくそのクルマに乗っていてください」と、赤いクルマを東京まで持ってきてくれた。

 ラリー車というのは、アクアGRスポーツだ。アクアといえばハイブリッド。ハイブリッドのラリードライビングのコツをつかむように、という意味だと受け取った。
 ハイブリッドは、電気を使えるところではトルクがあって速い。しかし、搭載するバッテリは小さく、登坂路でアクセルを踏み続けていると、瞬く間にバッテリを使い果たし、重い1.5リッターのFF車になる。なかなか難題である。

 ドライビングのコツを探るべく、しばらくアクアで走った。富士スピードウェイでも走らせてみたが、そもそも高速すぎて要領がまったくつかめない。次は峠道を走らせてみた。アップダウンのある峠道では回生するのが早いことが分かったが、やっぱり「???」が付きまくりだ。

センターコンソールの奥にバッテリ残量のデジタルゲージ。なかなかたまりません

 しかし、THS搭載車では、すでに天野さんや清水和夫選手も実績を出しており、全日本のJNXという実験車的なクラスで何年も戦っている。

 そこで清水君に教えを乞うた。まずSS前にバッテリの充電量を上げておき、減速区間ではできるだけ回生を得て、コーナリング速度を上げる。また下りでは回生できるので、それを見越したドライブモードと走り方をするという。

 これまでより、アップダウンのマークがペースノートに記載されることが多くなり、レッキから忙しそうだが、実戦でできるようになるまでにラリーが終わってしまいそうだ。

 それに、最近の走り方は、大舵角でアンダーを出しながら曲がるのが主流だという。自分にとってラリードライビングとは、コーナーに入る前にアンダーステアを出さない姿勢を作ることというのが体に染みついている。アンダー気味に走るのは、コーナーの深さと路面が分かっているときだけだ。

 やっぱり無理だな、ボクには……。

Aピラーに沿ったロールケージ。ヤリスCVTではフロントロールバーがまっすぐ降りていたので右前が死角になって溝に落ちたが、今度は大丈夫そうだ

 ところで、THSの中でバイポーラ型のニッケル水素電池を搭載したのはアクアが先駆者。ハイブリッドでも主流はリチウムイオン電池だ。バイポーラ型の特徴は、大容量の電気の出し入れが得意なことと、コスト削減につながる将来性のある技術である点だ。

 アクアは、2025年に乗ったヤリスCVTよりホイールベースが2600mmと50mm長く、その分、重量も重い。さて、どうしたものか? 悩みは深まるばかりである。

日下部保雄

1949年12月28日生 東京都出身
■モータージャーナリスト/AJAJ(日本自動車ジャーナリスト協会)会員/日本カー・オブ・ザ・イヤー選考委員
 大学時代からモータースポーツの魅力にとりつかれ、参戦。その経験を活かし、大学卒業後、モータージャーナリズムの世界に入り、専門誌をはじめ雑誌等に新型車の試乗レポートやコラムを寄稿。自動車ジャーナリストとして30年以上のキャリアを積む。モータースポーツ歴は全日本ラリー選手権を中心に活動、1979年・マレーシアで日本人として初の海外ラリー優勝を飾るなど輝かしい成績を誇る。ジャーナリストとしては、新型車や自動車部品の評価、時事問題の提起など、活動は多義にわたり、TVのモーターランド2、自動車専門誌、一般紙、Webなどで活動。