日下部保雄の悠悠閑閑

v.Granzとシミュレーター

RiNoAのv.Granz。群馬トヨペットなど里見君の出身地である群馬の企業のサポートを受けてスプリントや耐久に大活躍

 富士スピードウェイでテストしていたとき、隣のピットに真っ白なシングルシーターのレーシングカーが入っていた。結構大きく見えたが、ホイールベース2450mm、全長3840mmのv.Granzだった。

 本格的なレーシングカーを手がけるのはウエストレーシングカーズ。価格を抑えるだけでなく、ランニングコストも抑えたコンセプトで、VITAは日本だけでなくアジアを中心に人気で男女を問わず幅広い世代でレースが身近なものになった。

 2022年にデビューしたv.Granzは、2.0リッターのトヨタ製M20-FKSエンジンと5速シーケンシャルトランスミッションを組み合わせる。アルミモノコックとスペースフレームによる車体は、さらにレーシングカーらしい仕上がりだ。イニシャルプライスは795万円。本格的なレーシングカーとしては破格で、メンテナンスコストの安さでも群を抜いていると言われる。

 知り合いの里見君率いるRiNoAが、今年からv.Granzを使って、スプリントや耐久レースに参戦している。新進のレーシングチームだ。

曇天の中、テストに向かうRiNoA号。本格的なレーシングカーだが、耐久性の高いトヨタエンジンや本格的なシーケンシャルトランスミッションを備えながら、コストを抑えたマシンで人気が高まっている

 もっと身近で見たくて、VITAとv.Granzで行なわれるMEC120(2時間耐久)をもてぎに見に行った。レース前のテストデイだ。

 あいにく時折雨の降る天気。タイヤはミシュランのワンメイクで、レインタイヤでスタートした。ドライバーは、マツ耐のナイトスポーツでNDに乗ってもらっている永井さんと、レーシングネーム「箱入り娘」さん。MEC唯一の女性チームである。もちろん男女のハンデはない。

ミシュランのワンメイクタイヤ。レインタイヤはこちら。ヘビーウェットもいけそうだ

 わずか590kgの車重ではタイヤが温まらないときのグリップは想像できる。ようやくタイヤが温まってくると、徐々に安定してきた。しかし事前に送っておいたサスペンションセットも何となく乗りにくそうだ。

リアサスペンションのショックアブソーバーはTEINが提供する。減衰力は伸び圧同時調整タイプ

 2回目のテストはスリックでのスタート。まだウェットパッチが残っていたため、2人とも納得できていない様子だが、走行後にインカービデオを見せてもらったり、コメントを聞いたりしていると、フォーミュラとは違ったv.Granzの汎用性が感じられて興味深かった。

 さて今度は自分のこと。実車ではないがシミュレーターを経験させてもらった。初めてではない。ちょうどコロナが始まったころ、友人の森岡君が持っているシミュレーターでレースやラリーをやらせてもらったが、実車とモニターのギャップを埋めることができず、困惑の極みである。

 今回は時間も置いたので、もう少し慣れるかと思ったが、現実は厳しい。そもそも肩に力が入って、まっすぐ走ることすら難しい。昔、ドライビングレッスンで最初に教えていたことである。ブレーキの踏力やステアリングの操舵感も手ごわく、イメージと合わせられない。

 しかし、モニター内のクルマの動きは、操作に対して正確で容赦がない。操作を誤れば、あっという間にコースアウトやスピンをする。速く走れるようになるのは遠い未来である。

 しかし、頭が疲れて終わった今回の挑戦でも、シミュレーターは今やなくてはならないものだという認識に変わりはない。リスクを冒すことなく、いろいろなトライができる。高価だが、その価値は大きい。

 グランツーリスモをやっておけばよかった……。

マツダマイスターの加藤さんにお付き合いいただいてシミュレーターを経験。このドライバーは進化著しい小林編集長
日下部保雄

1949年12月28日生 東京都出身
■モータージャーナリスト/AJAJ(日本自動車ジャーナリスト協会)会員/日本カー・オブ・ザ・イヤー選考委員
 大学時代からモータースポーツの魅力にとりつかれ、参戦。その経験を活かし、大学卒業後、モータージャーナリズムの世界に入り、専門誌をはじめ雑誌等に新型車の試乗レポートやコラムを寄稿。自動車ジャーナリストとして30年以上のキャリアを積む。モータースポーツ歴は全日本ラリー選手権を中心に活動、1979年・マレーシアで日本人として初の海外ラリー優勝を飾るなど輝かしい成績を誇る。ジャーナリストとしては、新型車や自動車部品の評価、時事問題の提起など、活動は多義にわたり、TVのモーターランド2、自動車専門誌、一般紙、Webなどで活動。