日下部保雄の悠悠閑閑
砂の中
2026年10月12日 00:00
ダカール・ラリーで砂漠を疾走するクロカン車。サスペンションストロークがたっぷりあり、起伏の大きな砂漠を超ハイスピードで駆け抜ける一方、砂丘からの長~いジャンプをした先で転倒しているラリー車もある。砂漠は冒険に満ちている。
そんな豪快なアドベンチャーラリーだが、違った意味でドキドキする。冒険は苦手なのである。しかもラリーは注意してもスタックするときはする。クルマを脱出させるのは容易ではない。
ラリーで言えば、僕らの世代にとってオールド・サファリがベースにあり、スタックも日常茶飯事だったと思う。そして、当時の車両はほとんどがFRで、ナビゲーターがリアバンパーのステップに乗り、トランクのハンガーで体を支えながらクルマを前後にゆする。つまり、トラクションをかけて脱出するための装備も必須だった。また、駆動輪の下に毛布を入れることもあるので車載していた。
そうなると、ラリーどころではない。幸いそんな目に遭ったことは数えるほどしかなかったが、スタックしてクルマから降りるのはやめようと誓った。
本当に厄介なのは雪と砂とぬかるみだ。つまりラリーとは限らない。いったんスタックしてしまうと、とんでもなく厄介だ。
そして話はゴビ砂漠につながる。ショックアブソーバーのTEINの試乗会の舞台がゴビ砂漠だった。車両はもちろん全車クロカン4WD。TEINのサスペンションシステムは、元TTE(トヨタ・チーム・ヨーロッパ)のラリードライバー、藤本吉郎さんの会社だけに、スポーティな方向に仕上げられている。砂の上ではその違いは分かりにくいが、普通のグラベルを走るとよく分かる。
砂漠の路面はどこも同じように見える。アップダウンが意外と多く、突然崖のように切り立っている場所もあり、アリ地獄のようなすり鉢もある。しかも、登坂では勢いをつけて突進しなければ砂にパワーを奪われてにっちもさっちもいかなくなる。
こんなとき、下手にUターンしようとすると転倒する危険もあるので、そのままバックするしかない。また、直進しているつもりでも傾斜によって横滑りすることもあり、砂は油断大敵だ。
丘を登るときは、頂点まで進んでから止めるようにアドバイスをもらった。とはいえ、その先が崖っぷちになっていることもあるので、うかつに前輪を突き出すこともはばかられる。
試乗車はパワーのあるTANK 400(PHEV)。これまでの試乗ではモーター制御が微妙に行なわれ、面白いクロカンだ。
クロカン4WDはタフで、大抵のところは行けてしまうが、スタックするときはする。このときもそうだった。
いくつかの丘を登り、尾根を進んでいたときのこと。左側はすり鉢状になっており、ズルズルと後輪が横に滑りだした。アクセルで逃げようとしたが、あっという間にフロアが砂につき動けなくなった。「やっちゃったな」。
さらに空気圧を0.8kg/cm 2 まで落としていたことが災いした。横滑りしながら駆動力をかけたことで、リアタイヤがリムから外れる「リム落ち」になってしまったのだ。さすがにこの状態では、いかんともし難い。
床下の砂をスコップでかき出すが、サラサラの砂はすぐに押し寄せてきて、かき出したそばから埋まってしまう。
途方に暮れていると、有料の巡回サービスがやってきた。慣れた手順で砂をかき出し、クルマのバッテリから電源を取るエアジャッキを使って、スタックしたクルマを持ち上げて砂から離した。
次はどうするのかと思ったら、1台ではパワー不足で牽引できないと判断し、仲間を呼び寄せて2台の4WDを牽引ロープで連結して横方向に引っ張り出したのだ。
見事にTANK 400は砂の地獄から脱出した。おまけにエアジャッキは空気入れに変身し、リアタイヤに空気を充填して、普通に走れる状態に戻してくれた。
慣れているとはいえ、その見切りのよさには驚くばかり。FORD BRONCOに乗った大関・霧島似のドライバーは、事もなげに電子決済を済ませて立ち去った。砂漠の中で……。
何から何までビックリさせられたゴビ砂漠だった。





