まるも亜希子の「寄り道日和」

インストラクターも全員女性の「女性向けビギナードライバー運転講習」

講習に使ったクルマは、国産乗用車の全メーカーから1台ずつピックアップ。日産自動車「デイズ ルークス」やダイハツ工業「ミラ トコット」などの軽自動車から、トヨタ自動車「ヴィッツ」や本田技研工業「フィット」などのコンパクトカー、スバル「XV」といったSUVまで多彩なラインアップ。「フィットに乗ってみたかったので申し込みました」というようなクルマご指名の女性も多かったんですよ

 マツコ・デラックスさんと自工会の豊田章男会長がトークショーをしたり、「バック to the バブル!」という企画では、ワンレンボディコンのオネエさまたちが「アッシー君」のクルマに乗って登場したり! 熱烈なクルマ好きじゃなくても楽しめるプログラム満載で、多くの人で賑わった「東京モーターフェス 2018」が10月6日~8日の3日間、東京 お台場で開催されました。

 イベントは、メガウェブの周辺4つの会場に分かれて行なわれ、私は3日間メガウェブにいたのですが、いやもうスゴイ人の数! 毎日、もみくちゃになりながら会場まで通っていました(笑)。嬉しい悲鳴です。

 とくに嬉しかったのは、若いカップルや女性グループだったり、家族連れで楽しむ姿がたくさん見られたこと。こうした都心で行なわれるクルマイベントの役割として、今現在クルマ好きな人たちに楽しんでもらうのももちろんなのですが、それ以上に、「これからクルマに乗ってみようかな、でもちょっと不安だな」と思っている人たちを受け止めて、自信を持って乗れるように背中を押してあげたり、これからの自動車業界を担うべき子供たちに、実際にいろんなクルマに触れてもらうこと、興味を持ってもらうこと。それが重要だと考えます。なので、子供たちが嬉々として展示車両に乗り込んでいる光景なんかを見ると、本当に嬉しくなってしまうんですよね。「そうそう、そのまましっかりクルマ好きに育ってね~」って(笑)。

 今回、私が所属するAJAJ(日本自動車ジャーナリスト協会)では、そんな未来のクルマ好き&ドライバー育成に向けての取り組みとして行なっている「U-18運転予備校」というプログラムを開催しました。これは身長150cm以上で運転免許を持っていない18歳以下の人を対象に、実際のクルマを使ったドライビング・テクニックを体験してもらうもの。クルマを運転することの心がけに始まり、正確な運転ポジションの取り方やスムーズで周囲に優しくてエコな運転作法など、プロが丁寧に指導しながら、安全な環境で本物のクルマに乗ってもらうのです。

「そんなことさせて大丈夫なの? 無免許運転しちゃうんじゃないの?」と眉をひそめる人もいるかもしれませんが、実際は逆です。運転の楽しさを知ってもらう半面、運転によって社会の中で背負うことになる責任などもリアルに感じるからでしょうか、皆さんこの講習を受ける以前よりも、「運転」というものに対する心構えに重さを増して帰っていくそうです。免許取得前からそういう認識を持ってもらえれば、無謀運転なども減るかもしれないなと感じます。この「U-18運転予備校」は、クルマに親しむことだけでなく、いろんな刺激を与えてくれそうですね。

 そして今回、私がインストラクターを担当したプログラムは「女性向けビギナードライバー運転講習」です。女性は結婚や出産、就職などを機に、必要に迫られてクルマを運転しなければならないことが多いんですよね。私もそうした経験があるからこそ、常にいろんな形で女性ドライバーを応援したいと考えて活動をしているので、とてもいい機会をいただきました。

「女性向けビギナードライバー運転講習」を担当したインストラクターは、全員女性。AJAJに所属するジャーナリストの女性はまだ少ないので、レースやインストラクター経験の豊富な女性も助っ人に駆けつけてくれました。やはり、男性に教わるのはちょっと気がひけるという女性も多いので、女性同士で和気あいあいできるというのも珍しいですよね。私たちも楽しませていただきました

 講習はまず15分ほどの座学を受けていただいたあと、希望するクルマに1人1台、インストラクターがマンツーマンで乗り込み、運転ポジションの取り方からみっちり教えていくというもの。参加してくださったのは「17年ぶりに運転するんです」という女性や、「免許を取ってから今日が初めての運転です」という女性、さらに「週1度くらいは運転していますが、軽自動車しか乗ったことがないのでコンパクトカーを運転してみたかったんです」という女性まで、本当にさまざまでした。

 でも皆さん、必ず驚くポイントが2つありました。1つは適正な運転ポジションを取ってもらうと「こんなに前なんですか?」と言うのです。適正な運転ポジションを取るには5つの手順があります。

 1番目は、オシリをギュッと座面と背もたれに密着させるくらい、深く腰掛けること。オシリとシートに隙間があると、いざ急ブレーキを踏もうとしても自分の体の方が後退してしまい、しっかりブレーキを踏めなくなってしまいます。また、腰に余計な負担がかかってしまうという理由もあるんですね。

 2番目は、目線(アイポイント)をしっかり合わせること。メーターが隠れない程度に、なるべく座面を高くして視界を広く取ることが必要です。加えて、これはAJAJ公式見解ではなく私の持論なのですが、ハンドルの9時と3時の位置を両手で握った時に、指先が自分の心臓の位置よりも高いと、長時間の運転中に血液の流れがわるくなって疲れやすくなってしまいます。なので、私はいつも心臓と同じくらいか、少し低いくらいの位置を持つように心がけています。

 3番目は、右足でブレーキペダルをしっかり踏んだ時に、膝が余裕で曲がるくらいの位置にシートの前後調整をします。膝が伸びきった状態で運転していると、万一衝突した時に足を骨折する確率が約30%高まってしまう、というデータもあるんですよ。

 4番目は、ハンドルを時計に見立てて12時の位置を右腕で持ち、ヒジが軽く曲がる位置まで背もたれを調整すること。腕が伸びきった状態ではハンドル操作がしにくいですし、緊急時にも対応しにくくなってしまうんですね。ここまで合わせると、「今までぜんぜん合っていない状態でした」と驚く女性がほとんどです。

 そして最後にヘッドレストの調整。ヘッドレストという呼びかたは実は通称で、本名はヘッドレストレイントと言って、頭を拘束してくれるもの、という意味です。なので、ちゃんと合わせていないと効果がないんですよね。合わせかたは、自分の頭のてっぺんと、ヘッドレストのてっぺんが一直線になるくらいが理想的です。

 これでシートポジションはしっかり取れるはずですが、いかがですか? 皆さんはちゃんとできていますか?

 もう1つ、驚くポイントは急ブレーキの練習です。直線路で30km/hまで速度を上げた状態から思いっきりブレーキを踏んでもらうんですが、多くの女性はクルマのブレーキ性能をちゃんと使うことができません。もともと力が弱いというのもありますが、目一杯の力でブレーキを踏んだ経験がないんですね。なので、もう1度、力の限り踏んでみてください、と言うと、ようやくガガガッとABSが効くまで踏むことができます。「こんなに強く踏んでいいんですね」と納得してくれる女性がほとんどです。この急ブレーキを体験しておけば、自転車の飛び出しなどに遭遇した時に危険を回避しやすくなるのですが、一般道で練習するのはちょっと難しいので、この講習ならではの体験かなと思います。

 講習ではほかに、Uターンやスラローム、車庫入れも練習するのですが、終了すると皆さん、ホッとひと安心しながらも「できた!」という小さな自信や手応えを感じているような表情に変わっていて、その瞬間もとても嬉しくなります。1回の講習だけで運転がとびきり上手になるというわけではないですが、この小さな自信の積み重ねが、運転上手な女性を増やす一歩になると信じています。クルマは仕事や子育てや介護などのシーンでよき相棒になってくれるものなので、もっともっと女性にはクルマをうまく使って、暮らしをラクに豊かにしてほしいと思います。

 またどこかのイベントでこうした講習を開催すると思いますので、運転がちょっと苦手だなという女性の皆さん、ぜひ次回はご参加お待ちしております♪

メガウェブ手前の広場では、子供が楽しめるプログラムもたくさん。これはその1つ、「働くクルマ大集合」のコーナーで、なんと消防車に見立てた「放水体験」ができるもの。小さな消防士さんたちが、バーチャルな炎に向かってホースから水を吹き付けて火を消そうと懸命に頑張っていました。こんな体験ができるのも、東京モーターフェスの面白いところです

まるも亜希子

まるも亜希子/カーライフ・ジャーナリスト。 映画声優、自動車雑誌編集者を経て、2003年に独立。雑誌、ラジオ、TV、トークショーなどメディア出演のほか、モータースポーツ参戦や安全運転インストラクターなども務める。海外モーターショー、ドライブ取材も多数。2004年、2005年にはサハラ砂漠ラリーに参戦、完走。日本自動車ジャーナリスト協会(AJAJ)会員。17~18年日本カー・オブ・ザ・イヤー選考委員。女性のパワーでクルマ社会を元気にする「ピンク・ホイール・プロジェクト(PWP)」代表。ジャーナリストで結成したレーシングチーム「TOKYO NEXT SPEED」代表として、耐久レースにも参戦している。過去に乗り継いだ愛車はVWビートル、フィアット・124スパイダー、三菱自動車ギャランVR4、フォード・マスタング、ポルシェ・968など。ブログ「運転席deナマトーク!」やFacebookでもカーライフ情報を発信中。