まるも亜希子の「寄り道日和」

KYBの新製品試乗会で感じたこと

新製品の開発エピソードを聞かせてくれた、KYBの柴田さんと古田さん。インタビューの模様は、KYB公式Webサイトで近日公開予定です

 10月に入ると、そろそろ2018年を総括して「一番よかったクルマは?」なんて原稿依頼が舞い込み始めるころなんですが……。私にとって、間違いなくベスト5に入るのがトヨタ自動車の「カローラ スポーツ」。正直なところ、あんまり期待していない中で試乗したのですが、その走りの楽しさ、奥深さに驚愕した、というのも印象を強めている理由です。

 走りがいいって言うけど、具体的に「どこがいいの?」と聞かれて1つ挙げるならば、サスペンション。高速道路の出口によくある、下りながらのタイトなカーブを思い浮かべてみてください。その角度に一発でピタリと沿うように沈みつつ、底付きしないように耐えてジワリとフラットに戻してくれる、柔と剛を兼ね備えたような働きをするんです。最初はトップグレードだからかな? と思っていたんですが、その後ベーシックグレードに試乗した時にも同じ印象だったので、これはスゴイなと感心したわけです。

 そして、そのサスペンションがKYB製だと知り、それまであまりなじみがなかったKYBというメーカーに興味を持つようになってしばらく経ったころ。偶然にもKYBがショックアブソーバーの新製品を発売することになり、純正ショックアブソーバーとの比較ができる試乗会にお誘いいただいたのでした。

「NEW SR MC」を装着したトヨタ自動車「ヴォクシー」のデモカーも展示していました。ヴォクシー/ノア用は第2弾として発売準備中だそうです

 KYBは1978年に「SRスペシャル」というプレミアムショックアブソーバーを発売してから40周年という節目を迎えたそうです。その記念すべき年に投入したのが、「NEW SR MS(MORE SPORTY)」「NEW SR MC(MORE COMFORTABLE)」という新製品。鮮やかなブルーはSRシリーズの伝統なのだとか。

 試乗会当日は、開発担当者から直接、開発時のエピソードを聞くことができたのですが、このNEW SR MS/MCで私がいいなと思ったのは、決して走りのよさだけを求めたものではないということ。走りを追求しながら、乗り心地も同時に高めることを目指して開発されていて、それが「MORE」という言葉に込められた想い。従来のバルブではどうしても実現が難しいという壁にぶち当たり、ついには微低速域高減衰力バルブ(通称HLSバルブ)というバルブを新開発して、ようやく実現にこぎつけたとのことでした。

 実際に比較試乗してみると、「86」のように純正状態でも十分に走りが楽しいクルマが、アレッというくらいさらにスポーティに楽しめるようになっているのに、乗り心地もとても落ち着いていてビックリ。これは、運転に安心感を求める女性にとってもすごく嬉しい効果だと感じました。

 そしてもう1つ感心したのは、1つの車種ごとにゼロから開発しているということ。例えばこの日の試乗車は、トヨタ「86」、本田技研工業「ヴェゼル」、トヨタ「アルファード」の3台だったのですが、まずはそれぞれのクルマを走りこんで、特性を見極めるところから開発をスタート。その上で、長所はより伸ばし、短所を補うようなチューニングを施して、さらに走りこんで煮詰めていくという気の遠くなるような作業です。ヴェゼルのようにガソリンとハイブリッドがあるようなモデルは、それも別々に開発を行なっているというから、もうどこまで真面目なんだ! と思ってしまいますよね。

 でも私は、なるほどと思いました。こういう仕事の仕方をするKYBだからこそ、あのカローラ スポーツの驚きが生まれたのではないかと。コンピューター上の数字の評価ではなく、人間が自分を信じてイイものを作り上げていこうと魂を込める、感性の評価。トヨタだけではなく、自動車業界では今、これが見直されてきていると感じます。

 感性評価をするには、まずそれができる人材を育てなければならず、時間もコストもかかるもの。でも、性能がよくても走らせて何の感動もないクルマと、楽しかったり心が満たされるようなクルマの違いは、きっとそれをやるかやらないかで決まってくるのではないかと思うのです。

 そんなわけで、今後もKYBをはじめとするパーツメーカーの活躍にも注目しつつ、よいクルマの登場に期待しようじゃありませんか♪

KYBから第1弾として発売される新しいショックアブソーバーは、NEW SR MSがトヨタ「86」/スバル「BRZ」。NEW SR MCが本田技研工業「ヴェゼル」(ハイブリッド)とトヨタ「アルファード」「ヴェルファイア」の3タイプです

まるも亜希子

まるも亜希子/カーライフ・ジャーナリスト。 映画声優、自動車雑誌編集者を経て、2003年に独立。雑誌、ラジオ、TV、トークショーなどメディア出演のほか、モータースポーツ参戦や安全運転インストラクターなども務める。海外モーターショー、ドライブ取材も多数。2004年、2005年にはサハラ砂漠ラリーに参戦、完走。日本自動車ジャーナリスト協会(AJAJ)会員。17~18年日本カー・オブ・ザ・イヤー選考委員。女性のパワーでクルマ社会を元気にする「ピンク・ホイール・プロジェクト(PWP)」代表。ジャーナリストで結成したレーシングチーム「TOKYO NEXT SPEED」代表として、耐久レースにも参戦している。過去に乗り継いだ愛車はVWビートル、フィアット・124スパイダー、三菱自動車ギャランVR4、フォード・マスタング、ポルシェ・968など。ブログ「運転席deナマトーク!」やFacebookでもカーライフ情報を発信中。