まるも亜希子の「寄り道日和」

富士スピードウェイに復活した24時間レース。BBQをしながら楽しくレース観戦

夫が今回の24時間レースでお仲間に入れてもらったのは、S耐にフル参戦している「CUSCO RACING」。ドライバーはターザン山田こと山田英二さん、86ワンメイクレースのクラブマンクラスチャンピオンでもある遠藤浩二さん、今年の86ワンメイクレースではライバルでもある中島保典さん、先日のニュル24時間レースにも参戦していた松井猛敏さん、そして橋本洋平という5人体制。予選はマシンの調子が今ひとつでクラス11番手からのスタートでしたが、決勝では一つずつ上がってクラス5位で見事完走を果たしました

 日本では10年ぶり、富士スピードウェイではなんと50年ぶり! 24時間レースが復活したんです~。夫がそのピレリスーパー耐久シリーズ2018 第3戦「富士SUPER TEC 24時間レース」に参戦することになったと聞いて、最初に頭に浮かんだのは……。BBQしながら楽しくレース観戦した~いってこと。フランスのル・マン24時間レースなんかでも、コースサイドでクルマの横にテント張って、仲間たちとBBQしてる光景がとっても素敵で、ずっと憧れてたんですよね~♪ それが日本でできるなんて、夢みたい。さっそく、いつも夫の応援に来てくれるファミリーたちと「よし、やろう!」と盛り上がりました。

 24時間レースのスタートは6月2日の15時。私たちがお昼くらいに富士スピードウェイに到着すると、すでにコースの脇にはズラリと観客が思い思いに設置したテントが並んでいて、いつものサーキットとは大違い。もうその光景だけで感動ですよ~。

 私たちは小さな子供もいるので、コースから少し離れた森の中に陣取り、テントやタープを設置。といっても我が家には日除け用のワンタッチテントしかなかったので(笑)、ほとんと友人たちが持ってきてくれたんですけどね。2日分の食料や水などの買い出しもしてくれて、ぜんぶ頼りっぱなしで申し訳ないっ。持つべきものはデキる友だち……深謝。

 24時間レース復活の記念すべきスタートをドキドキしながら見守り、10Lapくらいコース脇で声援を送ったら、さっ、私たちはテントに戻ってBBQはじめ~! 先は長いですからね。お肉を焼いて、焼きそば作って、自然に囲まれた中で食べるのってやっぱり美味しいな~。そして振り向けば、熱い闘いが繰り広げられているコースが見えて、ブーンブーンとエグゾーストノートが響いてくる。いや~、こんな贅沢ってあるでしょうか。

 ずっと炎天下で観戦してたらこちらも体力が持たないけど、木陰でビール飲みながらだったらぜんぜん余裕(あ、私はノンアルコールビールでしたが)。子供たちも自然という遊び道具がたくさんあるから、飽きずにず~っと森の中を走り回ってました。ある意味、こちらも耐久レース(笑)。

コースサイドから「パパがんばれぇ~」と拳を突き上げて応援する娘。どのマシンがパパなのかは、よく分かってなかったようですが(笑)、ちょうどシケインの目の前だったので、クネクネ走る姿が面白くて一生懸命見ていました
行く前は、24時間なんて子供が飽きずにいられるかしら? と心配だったものの、子供にとっては立派な「森」が広がる富士スピードウェイ。自然の中で思いっきり走り回るだけで、充分に楽しかったようです

 まぁいくらのんびりできても、やっぱりレース観戦だからレース状況が分からないと面白くないものだけど、テントでも場内アナウンスはよく聞こえたし、YouTubeの「Super Taikyu TV」というスーパー耐久公式チャンネルでライブ配信をしてくれてたので、夫のいるチーム「CUSCO RACING」の77号車「CUSCO RACING 86」の順位をチェックすることもできてバッチリ。富士スピードウェイ専用のFMラジオでも実況が流れるので、それを聞いている人も多かったですよ。

私にとっては20数年ぶり、娘にとっても初体験となったナイトレース観戦。夜はぐっと冷え込んできたので、防寒着をたくさん持ってきて正解でした。虫対策も心配してましたが、100円ショップで売っていた虫除けシールを洋服のあちこちに4枚くらい貼ったら、どこも刺されず

 そして陽が落ちてくると、サーキットは幻想的な雰囲気に包まれてきて、美しいものですね。コースを照らすライトの数を増やしたり、ゼッケンが光るようになっていたりで、夜になってもちゃんとマシンの判別ができて、それは観客にとってもよかったですよね。逆に、観客のクルマのライトがドライバーに悪影響を与えてしまうことがあるので、駐車場にもライト消灯の注意書きが。でもそこは皆さん、あらかじめライトがコース側を向かないように駐車したり、マナーのいい観客が多いなぁという印象で嬉しくなりました。

 そろそろ夕食にする人たちが多いのか、そこかしこにお肉の焼けるイイ香りが漂っていた夜の20時15分。富士スピードウェイの空には美しい花火が! みんなで並んでコースサイドに座りながら、走るマシンと花火を一緒に観るというのはとっても不思議な感覚で、子供たちも大喜び。いつまでもこうして眺めていたい、幸せな時間です。思えば私は夜のレース観戦そのものが、もう20年前の鈴鹿1000km以来。あの時も花火があがったけど、レースが終わってからだったから……。レース中の花火は初めての体験になりました。

24時間レースをキャンプ&BBQしながら観戦するというのは、初めての体験。3家族が集まって、こんなに大がかりな「橋本洋平応援団ベースキャンプ」ができました(笑)。昼間は木陰で涼しく、夜は夜でまたいい雰囲気で、長年の夢が1つ叶った感じです

 そして夜も更けてきた23時過ぎから、いよいよ夫の出番。だったのですが、宿泊用テントがない私と娘は残念ながら、近所のホテルへと一時退散。テントに残る友人たちに「応援たのんだよ~」と言い残し、後ろ髪を引かれながらサーキットを後にしました。ホテルでもずっと、ライブ中継を見ながら応援してましたけどね。何事もなく次のドライバーへと引き継いだようで、よかったよかった。さ、私も少し寝よう~と思ったのもつかの間、朝一番でまた夫から「今から走るよ」と連絡が入ったので、慌ててサーキットへ急行! 応援する方もなかなかハードです(笑)。

 レースはすでにクラッシュやマシントラブルで姿を消したチームもチラホラあり、夫のマシンもミッショントラブルで5速を失ったとの情報が。交代で走るとはいえ、ずっと待機しているドライバーの疲労もピークで、もうどのチームも死に物狂いの闘い。なんとか完走だけでもしてほしいと、祈るような気持ちで声援を送りました。まぁ、友人が焼いてくれたベーグルサンドをつまみながらですけどね(笑)。

キャンプ慣れしている友人夫妻のアウトドア料理は、どれもとっても美味しくって大満足。中でもこのベーグルを熱々に焼いて、クリームチーズを塗ってレタスとトマトとゆで卵を挟んだベーグルサンドは、家でも作りたいほど絶品でした~

 2回目のランチタイムを楽しんだら、私たちはレースの行方を気にしつつ、ゆっくりと撤収作業をスタート。長いと思っていた24時間も、あと少しで終わりなんだなぁと寂しくなってきちゃいますね。最後の最後にまたSC(セーフティカー)が入ったりして、ハラハラさせられた過酷なレースもついにチェッカーが振られ、77号車は無事にST-4クラス5位で走り抜き、ホッとひと安心。私たちもほぼ撤収が済んだので、全員でパドックへ駆けつけました。

 ピットでは5人のドライバーをはじめメカニックさん、監督さん、マネージャーやスタッフの皆さん、みんなが清々しい顔でお互いの労をねぎらっていて、これぞ耐久レース。ライバルだったドライバー同士も「お疲れさん」と握手したり、あちこちで笑い声が響いていて、レースっていいなぁとあらためて感じる瞬間でした。

 憧れていた「BBQしながら24時間レース観戦」という夢が、日本で、しかも自分の夫が走るレースという、最高の形で叶えられたことに心から感謝します。ファミリーや仲間同士で楽しめるレース観戦が、もっと日本に定着したらいいなという意味でも、今回の24時間レース復活は大きな一歩となるんじゃないでしょうか。富士スピードウェイの皆さん、S耐の皆さん、いろいろとご苦労もあるかと思いますが、ぜひまた来年もやってくださ~い!

CUSCO RACINGのドライバー控室、本邦初公開!? 仮眠をとるためのボンボンベッドなのに、遊び場と勘違いして大はしゃぎの娘。チームの皆さん、すみませんでした~

まるも亜希子

まるも亜希子/カーライフ・ジャーナリスト。 映画声優、自動車雑誌編集者を経て、2003年に独立。雑誌、ラジオ、TV、トークショーなどメディア出演のほか、モータースポーツ参戦や安全運転インストラクターなども務める。海外モーターショー、ドライブ取材も多数。2004年、2005年にはサハラ砂漠ラリーに参戦、完走。日本自動車ジャーナリスト協会(AJAJ)会員。17~18年日本カー・オブ・ザ・イヤー選考委員。女性のパワーでクルマ社会を元気にする「ピンク・ホイール・プロジェクト(PWP)」代表。ジャーナリストで結成したレーシングチーム「TOKYO NEXT SPEED」代表として、耐久レースにも参戦している。過去に乗り継いだ愛車はVWビートル、フィアット・124スパイダー、三菱自動車ギャランVR4、フォード・マスタング、ポルシェ・968など。ブログ「運転席deナマトーク!」やFacebookでもカーライフ情報を発信中。