まるも亜希子の「寄り道日和」

新しい視点、技術、アイデアが盛りだくさんの「バリアフリー 2018」

「バリアフリー 2018」開催初日に発表となった、N-BOX スロープ仕様。開発責任者(LPL)の白土清成さんに、開発段階でのいろんなお話を伺うトークショーをお手伝いさせていただきました

 早朝から珍しく新幹線で向かった先は、大阪でした。美味しいお好み焼きを食べるため……ではなく、お目当は4月19日~21日にインテックス大阪で開催された、高齢者・障がい者の快適な生活を提案する総合福祉展「バリアフリー 2018」。今回で24回目の開催となって、関係者によれば「昨年とは比べものにならないくらい賑わってる印象です」とのこと。私はここで、絶好調のホンダ「N-BOX」に3番目のバリエーションとして登場し、まさに開催初日が本邦初公開となった「N-BOX スロープ仕様」にちなみ、開発責任者(LPL)を務めた白土清成さんとのトークショーに出演させていただいたんです。

 この「スロープ仕様」は、これまでなら「車いす仕様」と呼んでいたはずでした。でもそうしなかったのは、普段の買い物やレジャー、仕事や子育てにも便利に使えて、車いす用の装備を付ければ福祉車両にもなる、誰にでもどんなシーンでも使ってもらえるクルマにしたかった、との想いが込められているからなんです。

 トークショーの中で、実際に私も車いすに座ってN-BOX スロープ仕様に乗り込ませてもらったんですが、まず驚いたのはその準備をする手順が、たったの5行程ということ。先代は11行程でしたから、半分以下ですよね。これなら、介助をする方の手間もほとんどないし、介助される側の方が、本当はもっと出かけたいのに遠慮をしてしまう、といった心の負担を感じなくていいし、毎日がアクティブになるんじゃないかなと思いました。

車いす専用装備を付ければ、こうしてウインチで自動昇降が可能です。傾斜がゆるやかなので安心感があり、乗り込んでも広くて手すりやドリンクホルダーもあって快適

 そして先代より2.5kgも軽量化したスロープは、片手でも引き出せて簡単。傾斜がゆるやかなので、上っていく時も降りる時も、ひっくり返りそうな怖さがまったくなくて、ゆっくりだけどあっという間に完了する印象でした。

 さらに魅力的なのは、立派なN-BOXの1バリエーションという位置付けなので、カスタムデザインも選べるし、ボディカラーだってすべてのタイプから選べるんです。ブースに展示してあったホワイトルーフ×ピンクのスロープ仕様車なんて、見てるだけでウキウキしてきますよね。

一般的な福祉車両はデザインや色が限られちゃいますが、スロープ仕様はカスタムデザインや全ボディカラーから選べるのが魅力的

 ウキウキと言えば、会場内をブラブラと見て回っていたら、思わず駆け寄ってしまったものがいくつかあったんです! まず1つ目は、段差もジャリ道もなんのその、クルリとUターンだって自動でできちゃうのに、とってもスタイリッシュな次世代型電動車いす「WHILL(ウィル)」。最小回転半径76cmは、一般的なシニアカーの約半分。従来の車いすでは難しかった、最大5cmの段差を乗り越えられるというのがスゴイですよね。実際に試乗してみたら、指1本で前進も後退も回転も自由自在。でこぼこの道もしっかり進むことができました。この技術、ベビーカーにも活用してもらえないかしら……。ベビーカーって、段差もジャリ道もすごく苦労するんですよね。こんなベビーカーがあったら、私の子育てはもっとラクだっただろうなぁ、なんて思いながら感心していたのでした。

思わず「カッコイイ!」と駆け寄ってしまったのが次世代型電動車いすのウィル。パネルの色が好きな色にカスタムできます
手前に用意されたジャリの部分や段差も、ヒョイと簡単に乗り越えられたウィルに感心

 そしてもう1つ車いすでは、階段の上り下りができちゃう可搬型階段昇降機と車いすが一体になった「トランサポータ」。最大21cmまでの段差がある階段を、介助者と一緒に上り下りできるとのこと。学校などエレベーターがない施設はもちろん、自宅で使っている方も多いそうです。お友達の家に遊びに行きたいけど、階段があるんだよね~、なんて心配もこれなら解決。まだちょっとお値段が高めなんで、レンタルも含めてもっとリーズナブルに使えるようになったらいいですね。

階段の上り下りが電動でできる車いす「トランサポータ」はレンタルで月額5万5000円。もうちょっとリーズナブルになるといいですよね

 お次は、カラフルな色や柄に惹かれたシルバーカー&ショッピングカー「ウィズワン」です。歩くときに掴まって支えになってくれて、荷物が入る大きなバッグがあり、疲れた時には椅子としても使えるという、素晴らしい機能性。スーパーのレジカゴを乗せて、そのままお買い物できるタイプとか、いろんなバリーエーションがあるんですね~。あと何年かしたら、うちの母にもプレゼントしようかな? 祖母なら今すぐにでも喜んでくれるかも。

歩行の支えになり、荷物が運べ、疲れたら椅子にもなるシニアカー「ウィズワン」は、カラフルな色や柄にウキウキ。お値段は2万1500円~3万1000円ほどです

 さらに、自分でも欲しいと思ったのが、常に身体全体がリラックスした状態に導くというヘルスケア・シーティング「EXGEL(エクスジェル)」。フクロウのデザインが可愛いマットなんですが、ここにはすごい秘密が隠されていて、座るときに起こる「衝撃」「圧力」「ズレ」という問題をすべて解決する弾力性、柔軟性、流動性が実証されているんだとか。座ってみたら、その瞬間にホッと全身の緊張がほどけていくような気持ちよさ。厚みや形状もいろんなタイプがあって、もちろん車いすのシートに敷くためのものなんですが、私も原稿書いてるとすぐに腰や背中が痛くなってツライので……デスクの椅子に敷いてみたいなぁと思ったのでした。

フクロウの顔が可愛いマットには、すごい秘密が……。運転中に腰が痛くなる人も多いので、クルマのシート用マットも作ってほしいです

 こうしてバリアフリー 2018を見て回ってみると、普段は気付かない新しい視点、技術、アイデアが盛りだくさんでびっくり。「福祉」って言葉はちょっと近寄りがたい印象を持ってしまいがちだけど、実際には私たちみんなに身近で、役立つことやもっとハッピーになるためのものがたくさんあるんですよね。これを機に、日常の中でももっとアンテナを張っていきたいと思います。

まるも亜希子

まるも亜希子/カーライフ・ジャーナリスト。 映画声優、自動車雑誌編集者を経て、2003年に独立。雑誌、ラジオ、TV、トークショーなどメディア出演のほか、モータースポーツ参戦や安全運転インストラクターなども務める。海外モーターショー、ドライブ取材も多数。2004年、2005年にはサハラ砂漠ラリーに参戦、完走。日本自動車ジャーナリスト協会(AJAJ)会員。17~18年日本カー・オブ・ザ・イヤー選考委員。女性のパワーでクルマ社会を元気にする「ピンク・ホイール・プロジェクト(PWP)」代表。ジャーナリストで結成したレーシングチーム「TOKYO NEXT SPEED」代表として、耐久レースにも参戦している。過去に乗り継いだ愛車はVWビートル、フィアット・124スパイダー、三菱自動車ギャランVR4、フォード・マスタング、ポルシェ・968など。ブログ「運転席deナマトーク!」やFacebookでもカーライフ情報を発信中。