まるも亜希子の「寄り道日和」

オフロード走行で感じた「エクリプス クロス」の魅力

 今までのミツビシとはちょっと違って、“攻めてる”デザインと言われるSUV「エクリプス クロス」。2017年末から国産・輸入車問わずSUVが豊作で、マツダ「CX-8」、スズキ「ジムニー」、スバル「フォレスター」、BMW「X4」やボルボ「XC40」など、もう百花繚乱。最後にホンダ「CR-V」も駆け込んできましたが、ジムニーと1、2位を争うくらいエクリプス クロスのデザインが好みな私です。

 最近は都会派SUVも市民権を得ていますし、デザインの選択肢の1つとしてSUVを選ぶという人も多いですよね。もちろん私もデザインの好き嫌いは譲れないポイント。でもSUVならやっぱり、ある程度は悪路走破性にもこだわって開発してほしいと思ってしまいます。SUVを選ぶということは、気持ちのどこかで「いざという時に頼りになる」性能を期待しているということ。それに応えてくれないSUVは、いくらカッコよくても魅力半減なのです。

7月に伊豆モビリティパークのオフロードで試乗したジムニー。3輪が浮いてもなんのその、グイグイと前に進む姿は本当に頼もしい! ボディが軽いのでスピードも自在に操れて、まさに「手足のように」オフロードを楽しめるクルマでした

 2018年はジムニーやフォレスターでオフロードの試乗をさせてもらいました。どちらも、オンロードの時よりクルマが生き生きと動いているような気がして、やっぱり楽しいものですね。とくにジムニーは、オンロードの印象より何倍もカッコよく、頼もしく、何百万円もするSUVさえかなわないほど楽しめることを実感。オフロードを走ることは、着飾ったクルマを丸裸にするのと同じことで、そこで光るクルマこそが私たちが評価すべきクルマなんじゃないかな、と思いました。

1.5リッター直噴ターボエンジン+8速スポーツモード付CVTを搭載するエクリプス クロスは、わずか1500rpmくらいから力強いトルクが立ち上がり、3500rpmくらいまで最高値をキープする、余裕いっぱいのスポーティな走りが魅力。オンロードでもS-AWCならではのフラットな乗り心地が味わえます

 そして今回、エクリプス クロスでもオフロードを走る機会に恵まれたんです。ミツビシの4WDは、1987年に発売された6代目「ギャラン VR-4」で搭載した「AWC(オールホイールコントロール)」という4輪制御技術がベースとなって、今日までさまざまな進化を続けてきています。実は私、20代のころに1度その伝説のクルマに乗ってみたくて、ダートラ競技用に中古車を手にれたことがあるんですね~。当時は私のドライビング・テクニックもぜんぜんダメで、うまく乗りこなせなかったんですが、とにかくコーナリングでは負けないくらい速くて、安定感がすごかったのを覚えています。

 そのAWCが2007年の「ランサーエボリューション X」から「S-AWC(スーパー・オールホイールコントロール)」という、車両運動統合制御システムへと昇華して、エクリプス クロスにもそれが搭載されています。これは前後タイヤ間のトルク配分に加えて、左右タイヤ間のトルクベクタリング、4輪のブレーキ制御を巧みにシームレスに組み合わせて、トラクション制御、旋回制御、安定性制御を連続的に制御して走るというもの。一般的な車両制御は、その3つを状況に合わせて切り替えながら制御するので、わずかな遅れや制御不能な状況が起こりやすいところを、見事に克服しているのがS-AWCなんですね。

 さて、難しい話はこれくらいにして、実際にオフロードを走った感想を。今回は「AUTO」「SNOW」「GRAVEL」と選べる3つの走行モードを1回ずつ試して、違いを比べてみました。まず「AUTO」は、あらゆる路面で最適な4WD性能を発揮してくれるというだけあって、スラロームやヘアピンカーブ、8の字走行ではこちらがアクセルを開けすぎていても、自動で適切に抑えてくれるので、まったく挙動を乱すことなく、安定感抜群。「おっとっと~」とヒヤリとする場面もないので、もっと踏んでイケるかも!? なんて欲が出てしまうくらいでした。

 続いては「SNOW」を選択。本来は雪道の走行を想定したモードですが、ダートの滑りやすい路面でも効果アリとのことで走りはじめてみると……。加速している時はほとんど違いを感じなかったのですが、驚いたのは減速してスラロームのパイロンをかわし、立ち上がりの瞬間。先ほどより再加速が穏やかで、ボディがちゃんとまっすぐに向くまで抑えてから、加速が強まるんです。なのでリアが滑り出すこともなく、路面を掘ることもなく、より安定方向の制御を実感することができました。

 そして「GRAVEL」は、悪路走行やスタック脱出性に優れるモード。全体的に先ほどまでよりも遊びの部分、ラフな部分が許されるような制御で、8の字走行ではリアを流して旋回するなんてこともやりやすくなっていた印象。個人的にはこれがいちばん楽しめましたが、それぞれにけっこう違いが感じ取れて、よく考えられているなぁと改めて感心したのでした。

 デザインがいいだけでなく、ダートコースの試乗で中身も本物だと確認させてくれたエクリプス クロス。皆さんも、時には愛車でオフロードを走ってみると、それまで知らなかった意外な一面が出てくるかもしれないですよ。

エクリプス クロスと同時に、アウトランダーPHEVの2019年モデルにも試乗しましたが、その別人のような激変ぶりにビックリ! PHEVシステムは駆動用バッテリーの容量が15%アップ、出力が10%アップして、航続距離は従来の60kmから65kmへ。EV走行の最高速度も125km/hから135km/hになったので、最高速度規制が見直されている日本国内においても将来的にほぼどこでもEVのまま走れますね。エンジンの排気量も2.0リッターから2.4リッターにアップしているので、ハイブリッドとしての走りも大きく進化。低速域からのトルクが豊かになり、静粛性も高まりました。いやもう、乗っていてどんな高級車にも負けない上質感、安心感、運転の楽しさに感心しっぱなし。燃費も、以前とは計測方法が異なるため単純比較はできませんが、実用燃費は向上していると思います

まるも亜希子

まるも亜希子/カーライフ・ジャーナリスト。 映画声優、自動車雑誌編集者を経て、2003年に独立。雑誌、ラジオ、TV、トークショーなどメディア出演のほか、モータースポーツ参戦や安全運転インストラクターなども務める。海外モーターショー、ドライブ取材も多数。2004年、2005年にはサハラ砂漠ラリーに参戦、完走。日本自動車ジャーナリスト協会(AJAJ)会員。17~18年日本カー・オブ・ザ・イヤー選考委員。女性のパワーでクルマ社会を元気にする「ピンク・ホイール・プロジェクト(PWP)」代表。ジャーナリストで結成したレーシングチーム「TOKYO NEXT SPEED」代表として、耐久レースにも参戦している。過去に乗り継いだ愛車はVWビートル、フィアット・124スパイダー、三菱自動車ギャランVR4、フォード・マスタング、ポルシェ・968など。ブログ「運転席deナマトーク!」やFacebookでもカーライフ情報を発信中。