まるも亜希子の「寄り道日和」

ひとり「後席・オブ・ザ・イヤー」

日本カー・オブ・ザ・イヤー2018-2019の前段階、10ベストカーに選ばれたのはこのクルマたち。9台になってしまったのは残念ですが、改めて乗ってもいいクルマばかりです。この中からただ1台、大賞が決まるのは12月7日です!

 いよいよ12月目前、ということで、今年の1台を決める「日本カー・オブ・ザ・イヤー」の季節がやって参りました。11月7日に、60名の選考委員の投票によってまずは10台に絞られる「10ベスト」が決定。スバル「フォレスター」、トヨタ「カローラ スポーツ」、トヨタ「クラウン」、ホンダ「クラリティ PHEV」、マツダ「CX-8」、三菱自動車「エクリプス クロス」、アルファ ロメオ「ステルヴィオ」、BMW「X2」、ボルボ「XC40」、フォルクスワーゲン「ポロ」が最終選考に駒を進めたのですが、残念ながらスバルが10ベスト受賞を辞退したので、今年は9台での闘いとなりました。

 いろいろと思うところありますが、それはまた別の機会にしましょう。年に一度のお祭りらしく、気を取り直して楽しくいきます!

 毎年、最終選考会に向けて10ベスト受賞メーカーが富士スピードウェイのグランドスタンド裏にテントを構えて、選考委員が最後の確認のために試乗をする機会を設けてくれます。レーシングコースを走るわけじゃなくて、構内路と一般道を法定速度内で試乗するのですが、これがなかなか勉強になるんです。何しろ、同じ日に同じ道を走って9台の比較ができるんですもの~。そんなこと、滅多にない機会なんですよね。

 で、運転するのはもちろんなんですが、今年はCar Watch編集長の谷川さん、夫の橋本洋平と3人で一緒に回って試乗したもので、ここぞとばかりに私はすべての後席にも座って、ひとり「後席・オブ・ザ・イヤー」も開催してみました。

 普段からどのモデルも、試乗する際には後席の乗り心地をチェックするように心がけているんですが、どうしてもそれぞれ違う天候、違う道での試乗になるので、単純に比較するのってけっこう難しいんですよね。でも同条件だと、エッと驚くほど印象が変わったりするんです。そんな「後席・オブ・ザ・イヤー」、どんな結果になったと思います?

ボルボ・XC40の後席に乗り込もうとドアを開けたら、こんなに大きなエルクのサンタさんが(笑)。スウェーデンといえば、エルクですよね。最近、このエルクをモチーフにした「moz」という雑貨ブランドが大人気なんですが、それもスウェーデン生まれなんだそうです

 1位は予想どおりでしょうか、クラリティ PHEV。約588万円という価格を考えたら、1位で当然という見方もあるかもしれませんが、クラリティ PHEVは運転しても気持ちがいいのに後席の乗り心地もいい、というのが素晴らしいと思います。操縦安定性と乗り心地は相反するもので、一方を突き詰めればもう一方は厳しくなる。なので、そのバランスを取るのが開発者の腕の見せ所なんですよね。車両価格が高いほど、どちらにもコストはかけられるでしょうが、だからと言っていいものになるとは限らない、というところで、クラリティ PHEVは貴重な1台だと思いました。

 僅差で同率2位なのが、クラウンとXC40。でもクラウンは試乗車が「3.5 RS ADVANCE」で、新開発AVS(電子制御サスペンション)が入っているグレードだったんで、ちょっと有利だったかもしれないですね。そして同率4位に、カローラ スポーツ、エクリプス クロス、CX-8なんですが、車格を考えたらカローラは大健闘! そしてCX-8は3列目シートに座った結果なので、これも素晴らしいと思います。今年は3列シートのSUVが注目されましたが、「3列目・オブ・ザ・イヤー」をやったら間違いなく大賞はCX-8ですね。

 続く7位は単独でステルヴィオ。正直なところ、ステルヴィオは運転するとスポーティセダンみたいに俊敏なので、後席の乗り心地はいちばんダメなんじゃないかなぁ、なんて予想していたんです。でも試乗車が19インチタイヤのグレードだったのも、よかった要因でしょう。

 そして最後は同率でポロとX2なのですが、ポロは価格的にも⾞格的にも不利なので、それを差し引けばぜんぜんわるくはないんです。先ほどの操縦安定性と乗り心地のバランスの点で、やはりアウトバーンを安心して走れるクルマにするために操縦安定性を優先したということで、それはユーザーのためでもあると思います。X2は、走りはめちゃめちゃ爽快で素晴らしいので、もう少しだけ後席に優しくなってくれたらいいなぁって、贅沢ですかね。

 というわけで、私はこの「後席・オブ・ザ・イヤー」の結果も踏まえて、最終選考の投票をさせていただきましたが、以前からひとつ自分でルールを決めていることがあるんです。それは、最高得点(10点)を投票するクルマは、車両価格が350万円以下から買えるクルマであること。「いいクルマ=高価なクルマ」ではなくて、普通の人が普通に働いて買える価格帯の中でも、コスパや満足度が高かったり、誰かを幸せにできたり、今までにない提案があったり。そういうクルマこそ、大賞にふさわしいのではないかと考えるからです。なので今回の9台の中では……、おおっと、それはまだナイショでした。

 ちなみに、この試乗会にメーカーの皆さんが用意してくださるブースは、いつもいろんなアイデアあふれるテーマやおもてなしがあって、それを見て回るのも楽しみのひとつなんです。今年、私が個人的に心を鷲掴みにされたのが、ホンダ・クラリティ PHEVのテントでした。もうネーミングからして「くらり亭」って、思わず腰砕け(笑)。中に入ればN-VANのおでん屋台が出迎えてくれて、クラリティ PHEVの電源から電気を供給して熱々のおでんをご馳走してくれるんです。クラリティ PHEVとN-VANを2台所有すれば、こんな楽しいこともできるのね!? なんて、夢が広がったひと時でした。

ホンダ・クラリティ PHEVのテント内に、この日のために用意してくれたN-VANのおでん屋台「くらり亭」。電源をクラリティ PHEVから取って、熱々のおでんをご馳走してくれました。私も老後はこんな屋台で全国を旅して回るのが夢です(笑)

 こうして楽しくも興味深い10ベスト試乗会が終わり、あとは12月7日の最終選考会を待つのみ。どのクルマが大賞に輝くのか、今からドキドキしています。みなさまもぜひ、予想してみてくださいね。

まるも亜希子

まるも亜希子/カーライフ・ジャーナリスト。 映画声優、自動車雑誌編集者を経て、2003年に独立。雑誌、ラジオ、TV、トークショーなどメディア出演のほか、モータースポーツ参戦や安全運転インストラクターなども務める。海外モーターショー、ドライブ取材も多数。2004年、2005年にはサハラ砂漠ラリーに参戦、完走。日本自動車ジャーナリスト協会(AJAJ)会員。17~18年日本カー・オブ・ザ・イヤー選考委員。女性のパワーでクルマ社会を元気にする「ピンク・ホイール・プロジェクト(PWP)」代表。ジャーナリストで結成したレーシングチーム「TOKYO NEXT SPEED」代表として、耐久レースにも参戦している。過去に乗り継いだ愛車はVWビートル、フィアット・124スパイダー、三菱自動車ギャランVR4、フォード・マスタング、ポルシェ・968など。ブログ「運転席deナマトーク!」やFacebookでもカーライフ情報を発信中。