まるも亜希子の「寄り道日和」

心から拍手を送りたい「子どもアイディアコンテスト」

第16回子どもアイディアコンテストの最終審査会に選ばれた、28組の作品たち。アイデアを絵に描くところから、こうして立体の作品にするまでには、素材をどうするか、動かす方法、組み立て方などいろんな問題を自分で考えてクリアするわけで、頭をフル回転させて手先を使って、本当にすごいことだなぁと感じます

 未来にこんなモノがあったらいいなぁ~って、皆さん何か考えたことありますか? 私はありますよ~。それは、手で持たなくていい傘! 勝手に自分の頭の上に浮かんで、歩いたり走ったりすると一緒に移動してくれるんです。それなら大荷物を抱えていても、子供を抱っこしていても、まったくわずらわしくないじゃないですか。杖をついて歩くお年寄りも、自転車や車いすでも、雨の日のお出かけが億劫でなくなると思うんです。もちろん、バイク乗りにも嬉しいですよね。

 とまぁ、私のアイデアなんて大したことないんですが(笑)、小学1年生から6年生までの子供たちが、もっともっとすごいアイデアを考えて、それを実際に立体の模型作品にして、さらにさらに作品のプレゼンテーションまで行なうという大会、「子どもアイディアコンテスト」の最終審査会が12月1日にホンダウェルカムプラザ青山で開催されました。今年でもう16回目を迎えますが、時代とともにこのコンテストのよさがますます注目され、全国から6409作品もの応募があったそうです。

 最初はアイデアをイラストで表現したもので予備選考会が行なわれ、立体作品となったもので一次審査会があり、それを突破した「低学年の部」14作品、「高学年の部」14作品の計28作品が最終審査会にやってきました。1組ずつステージに上がり、大勢の人の前で自分の作品についてプレゼンテーションするのです。私は審査員の1人として参加させていただいたのですが、もう、自分が小学生だったころはそんなこと絶対に怖くてできなかっただろうから、このコンテストにチャレンジして、この最終審査会の場に来たというだけで、子供たちはもちろん保護者の皆さんにも心から拍手を送りたい気持ちです。

 開会の挨拶をしている時は、子供たちの緊張がこちらにまで伝わってきて、本当にドキドキ。いよいよ低学年の子供たちから発表がスタートしたのですが、大きな声でハキハキと、身振り手振りを加えて堂々と喋る様子にビックリです。プレゼンは1作品に2分の持ち時間が与えられていて、作品を動かしたりライトを点けたり、そうした作業もテキパキやらないと時間をオーバーしてしまうんですよね。それをやりつつ、なぜこのアイデアを思いついたのか、どんなよさがあるのか、これが実現すると未来でどんなことができるようになるのか、といった要点をシッカリと盛り込んでくるのが、もう素晴らしいのひと言。大人顔負けとはこのことです。

 アイデアも多彩で、環境問題から地震や豪雨といった災害、安全、医療、心のケアといったさまざまな分野が見られました。例えば、低学年の部で最優秀賞に選ばれたのは、東京都の小学1年生・南友乃ちゃんが考えた「みんながにこにこあったかーい ひまわりのおうち」。ヒマワリの花は太陽の動きに合わせて向きを変えることから思いついたそうで、いつもポカポカ快適、太陽光で発電するのでエコ。地震など災害にも強いという、理想的なおうちが見事な作品として表現されていました。

低学年の部の最優秀賞と、子供たちの投票で選ぶキッズ大賞をダブル受賞した作品がこちら。「みんながにこにこあったかーい ひまわりのおうち」(東京都の小学1年生・南友乃ちゃん)は、細部まで精巧に作られたヒマワリをはじめ、最後にこんな驚きの仕掛けもあって会場を沸かせてくれました

 また、審査員特別賞を受賞した佐賀県の小学2年生・西郡己子ちゃんの作品は、兄弟げんかをしてイヤな言葉を言ってしまうと、ずっと心がモヤモヤしているので何かいい方法はないか、と考えついたという「スイトール」。イヤな言葉を吸い取って、みんなを笑顔にしてくれるというアイデアです。

 高学年の部の最優秀賞は、三重県の小学4年生・柏木晴太くんの作品「電気をためるライチョウ」で、雷が落ちた時の電気をなんとか他のものに利用できないか、と考えたものだそう。EV(電気自動車)の電力としても使えるとか、いろんな視点が盛り込まれたアイデアで感服してしまいました。

高学年の部の最優秀賞、「電気をためるライチョウ」(三重県の小学4年生・柏木晴太くん)はとにかく金色のライチョウがド迫力で、ライトまで点灯する懲りよう。貯めた電気がカプセルで取り出せて、街灯や災害時の給電、EV(電気自動車)の電力など、いろんなものに使えるというアイデアで、プレゼンテーションもとても上手でした

 ちなみに、審査員として参加されていた本田技術研究所の松橋剛さんがおっしゃっていたのですが、今回の作品の中に「あれ? ホンダの機密事項がどっかから漏れてるのかな?」とヒヤヒヤしたくらい似ているアイデアがあったのだそうです(笑)。頭に浮かんだものをまず絵に描いて、それを立体にしてみて、さらに試行錯誤して実現させていくというプロセスは、ホンダのモノづくりもこのコンテストも同じとのこと。やっぱり子供のころからこうした体験を積んでいけば、のちのち必ず生きてくるんだろうなと痛感しました。

 また、審査委員長を務めた脳科学者の茂木健一郎さんのお話も印象的でした。茂木さんによれば、日本の教育も受験も世界的に見ればとても遅れていると。それがようやく、「アクティブラーニング」の積極的な導入などによって変わりつつある。そしてすでにハーバード大学など世界トップレベルの大学で採用されているように、筆記試験の点数ではなく、こうしたコンテストでファイナリストになった、受賞した、といったことが重視されるようになるだろう、ということでした。

 この最終審査会で、「ゼロから何かを創り出す」という大変なことをやってのけた子供たちを見ていると、絶対にその方が日本の未来は明るいのではないかと思います。世界をアッと驚かせるような、私たちの暮らしを瞬時に変えてくれるような、クルマや家電やサービスをこの子たちがきっと生み出してくれる。そう期待して、楽しみにしていようと思います。

右から審査員長の茂木健一郎さん、日本科学未来館で科学コミュニケーターをされている綾塚達郎さん、私を挟んで本田技研工業・総務部長の仁藤康雄さん、本田技術研究所・執行役員でデザイン推進担当の松橋剛さんの5名で審査員を務めました。どの作品も素晴らしくて、審査は難航(毎年ですが……)。惜しくも受賞を逃した子供たちも、自信を持って、胸を張って、またいろんなことにチャレンジしてほしいなと心から思っています

まるも亜希子

まるも亜希子/カーライフ・ジャーナリスト。 映画声優、自動車雑誌編集者を経て、2003年に独立。雑誌、ラジオ、TV、トークショーなどメディア出演のほか、モータースポーツ参戦や安全運転インストラクターなども務める。海外モーターショー、ドライブ取材も多数。2004年、2005年にはサハラ砂漠ラリーに参戦、完走。日本自動車ジャーナリスト協会(AJAJ)会員。17~18年日本カー・オブ・ザ・イヤー選考委員。女性のパワーでクルマ社会を元気にする「ピンク・ホイール・プロジェクト(PWP)」代表。ジャーナリストで結成したレーシングチーム「TOKYO NEXT SPEED」代表として、耐久レースにも参戦している。過去に乗り継いだ愛車はVWビートル、フィアット・124スパイダー、三菱自動車ギャランVR4、フォード・マスタング、ポルシェ・968など。ブログ「運転席deナマトーク!」やFacebookでもカーライフ情報を発信中。