まるも亜希子の「寄り道日和」

日本とタイの子供たちの“夢のクルマ”を見た「子どもアイディアコンテスト国際交流会」

タイの小学4年生・アースくんと、日本の小学1年生・南友乃ちゃんが共同で作り上げたのは、こんなに可愛いウサギの乗り物。室内は病院のようになっていて、移動して患者さんを助けられるんだそうです。これをたった3時間でゼロから作り上げた“夢のパワー”、本当に素晴らしいです!

 私はすごいモノを見てしまいました。何もないゼロの状態から、わずか3時間で「夢のクルマ」がカタチになっていく……! これがまさに、人間だけが持つパワー、“夢のパワー”なんだと感動で胸いっぱいになりました。

 そんな奇跡が起こったのは、ツインリンクもてぎの会議室。その日、日本から6人、タイから6人の子供たちが集まって、「子どもアイディアコンテスト国際交流会」が開催されていました。

 小学生の子供たちが、未来にあったらいいなと思うものを考え、描き、形にしてプレゼンするという「子どもアイディアコンテスト」は、本田技研工業が毎年開催している素晴らしいイベント。私はそこで審査員を務めさせてもらっていますが、実はこのコンテストはタイやベトナムでも開催されていて、今回はその受賞者たちがツインリンクもてぎに集合し、交流を図ろうという会だったのです。

タイと日本、それぞれの子供たちの自己紹介では、自身が「子どもアイディアコンテスト」で受賞した作品と、将来の夢を披露。タイの小学6年生・ナティくんの作品は、世界でプラスチックゴミが増えて環境汚染しているのを懸念し、ゴミを減らすための「食べられる食器」。絵もとっても上手ですよね。将来の夢は英語の先生で、「自分の教えた子が世界中の人とコミュニケーションできたらいいな」と笑顔で発表してくれました

 タイ語は「サワディカー(こんにちは)」くらいしか分からない私は、ちょっとドキドキで参加させてもらったのですが、子供たちには「ポケトーク」という自動翻訳機が渡されていて、さっそくいろいろとコミュニケーションをとっている模様。たまに、ポケトークがトンチンカンな翻訳をして戸惑っている子供もいましたが(笑)、国境を超えてすぐに仲よくなるのは子供たちの特権ですね。

 和気あいあいとランチを楽しんだあと、スタートしたのが「ドリームスケッチ」というワークショップ。子供たちが3つのグループに分かれて、「夢の乗り物」を考え、描き、立体作品に仕上げるというものです。各グループには、普段から子供たちに接している3人の先生たちがファシリテーターとしてつき、サポートをします。

石堂先生がファシリテーターを務めたグループでは、子供たちの似顔絵に次々と意見を貼っていき、気持ちを1つにしていくというのが最初のステップ。タイ語と日本語でいろんな想いが出ています

 グループ内のリーダーや役割、発表者を決めたり、みんなから出た意見をまとめて次のステップに繋げたりと、最初は先生方が先導していたのですが、だんだんと子供たちの意見が1つになり、進むべき道すじが見えてくると、それが変わってくるんですね。いつの間にか、子供たちそれぞれが率先して自分の仕事を探し、行動するようになっていく。

タイの小学6年生・マンモスくん、小学5年生・スーガスくん、日本の小学4年生・西岡史織ちゃん、小学1年生・渡邊実桜ちゃんがポケトークを駆使してアイデアを出し合い、協力して作り上げていく様子は感動的でした。完成した夢のクルマと、その過程のプレゼン用紙を前にニッコリ

 ファシリテーターの1人として参加していた石堂裕先生いわく、「目指すべきものをハッキリと決めて、それに向かって子供たちが1度走り出したら、もう僕は何にもやることないですよ」と。最初はバラバラだった子供たちが、だんだん気持ちを1つにしていって、画用紙に描いたものが子供たちの共通のゴール地点になる。それを見ながら何をすべきかを自分で考えて、仲間同士で助け合ってアイデアを出し合って、少しずつ立体作品になっていく。3時間という短い時間に、その過程がギュッと凝縮されていた「ドリームスケッチ」を目の前にして、私は心から子供たちを尊敬しました。そして、まだまだ彼らに眠っているだろう、無限の可能性を感じて嬉しくなってしまったのでした。

 この子供たちが本気で取り組んだら、きっと今の私たちが想像もしないようなクルマが、未来には生まれるにちがいありません。だからみなさん、長生きしてその姿をこの目で見ましょうね。そして私たちも、どこかに忘れてしまったかもしれない“夢のパワー”を、もう1度呼び起こしてみませんか。

まるも亜希子

まるも亜希子/カーライフ・ジャーナリスト。 映画声優、自動車雑誌編集者を経て、2003年に独立。雑誌、ラジオ、TV、トークショーなどメディア出演のほか、モータースポーツ参戦や安全運転インストラクターなども務める。海外モーターショー、ドライブ取材も多数。2004年、2005年にはサハラ砂漠ラリーに参戦、完走。日本自動車ジャーナリスト協会(AJAJ)会員。17~18年日本カー・オブ・ザ・イヤー選考委員。女性のパワーでクルマ社会を元気にする「ピンク・ホイール・プロジェクト(PWP)」代表。ジャーナリストで結成したレーシングチーム「TOKYO NEXT SPEED」代表として、耐久レースにも参戦している。過去に乗り継いだ愛車はVWビートル、フィアット・124スパイダー、三菱自動車ギャランVR4、フォード・マスタング、ポルシェ・968など。ブログ「運転席deナマトーク!」やFacebookでもカーライフ情報を発信中。