まるも亜希子の「寄り道日和」

話題の「ベルト型幼児用補助装置」を試しに使ってみたら

近ごろ話題の「ベルト型幼児用補助装置」。チャイルドシート(ジュニアシート)の代替品として国が認めたということで、試しに使ってみました。私と同じようにリアシートに直接座っていることに、大人に近づいた喜びがあったのでしょうか、最初はテンションが高かった娘なのですが……

 ここ最近、小さい子供を持つパパたちをザワつかせている「ベルト型幼児用補助装置」なる製品があるのをご存知ですか? 5月の終わりくらいから急に、幼児を持つ編集部員やカメラマンといった人から「まるもさん、知ってます?」とよく聞かれるようになったのですが、どうもTVなどでニュースとして取り上げられて注目を集めたようですね。私も以前から気になっていたので、さっそく購入して使ってみました。

 見た目は、「両端にクリップがついている短いベルト」なんですが、それがなぜそんなにザワつかせているかと言うと、チャイルドシートの代替品として国が認めたからなんですね。チャイルドシートの価格も下がってきているとはいえ、まだまだ有名メーカーの製品は相場が2万円~5万円ほど。重いし設置場所をとるし、座る子供にとっては窮屈だし暑いし、なんて文句ばかり出ちゃいますが、ベルト型幼児用補助装置は5000円ちょっと。しかも、コンパクトで軽いのでバッグに入れて簡単に持ち運びができ、大人用のシートベルトがそのまま使えるから、子供にとっては圧迫感もないし、後席に3人並んで座ることだってできちゃう。

 とまぁ、一見するといいこと尽くしな感じなのです。うちの4歳の娘は生まれた直後からチャイルドシートに座り、どこへ行くにもずっとそうやって育ってきましたから、まったくチャイルドシートを嫌がることもなく、むしろチャイルドシートがないクルマには乗ろうともしません。兄弟もいないので、後席が窮屈になることもなく、わが家には必要ないかな~と思っていたのですが……。

 先日、仕事でやむなく娘を同行させた時に、私が仕事中にスタッフさんが自分のクルマで娘を迎えに行ってくれることになり、「チャイルドシート、どうしよう!」と焦りまして。いや、焦っても仕方がないので、大変な思いをしてチャイルドシートをわが家のクルマから外し、重いのをガマンしてスタッフさんに預け、使ったらまたその逆をやる、という面倒なことがあったんですね。なので、「そうか、こういった時にベルト型幼児用補助装置があったら安心なのかな~」と考えたわけです。

 インターネットで注文してすぐに届いた商品は、どうぶつビスケットの箱ぐらいの小さなパッケージで、開けると軽くてコンパクトなベルトが出てきました。説明書もB5用紙ほどのもので、とくに使い方も難しいところはなさそう。ちょうどドライブに出かける用事があったので、さっそく試しに使ってみました。

 まずは通常のリアシートにそのまま娘を座らせるのですが、この時に背筋をまっすぐに座らせることと、シートベルトアンカーの近くに座らせないことが注意点。そしてベルト型幼児用補助装置の下側のクリップを、娘の腰とシートベルトアンカーの間に挟んで固定します。ここまではスムーズ。次はベルト型幼児用補助装置を娘の肩の後ろ側に置き、上部のクリップが肩の真上に来るように長さを調節します。というのがちょっと難しい。片手で車両のシートベルトを押さえながらだと、残りの手で長さを調節することができません。「だいたいこれくらいかな~」とアタリをつけて調節するのですが、ちょっと長い、ちょっと短いとなって、3回やり直すことになりました。でも、それさえクリアすれば、あとは上側のクリップを挟んで固定し、車両のシートベルトがしっかりと娘の肩の真ん中を通っているかを確認すれば、もう完了です。慣れたら1分もかからない程度でしょう。

ベルト型幼児用補助装置はこんな感じで、アジャスターで長さを調整できるベルトの両端に、大きなクリップが付いています。このクリップで車両のシートベルトの角度を変えることで、幼児でもシートベルトが体にフィットするように使えるのです

 娘は最初こそスカスカして落ち着かない感じでしたが、そのうち慣れてくるといつもよりテンションも高めに。やっぱり、生まれた時から慣れていても、なんだかんだいって体が固定されていると不自由なこともありますよね。ただ、クルマがベイブリッジにさしかかるころになると、娘から不満が出始めました。

 そうです、いつも娘はこのあたりで海が見えるのを楽しみにしてたのですが、リアシートにそのまま座っていると、身長110cmの娘ではアイポイントが低く、何も見えなかったようなのです。確かに、チャイルドシートに座っていれば10~15cmぐらいは座面がかさ上げされていますからね……。これは手痛い誤算。そのうち娘は「何にも見えないじゃん!」とご機嫌ナナメになり、ふて寝に入ってしまいました。

 すると今度は、いつものチャイルドシートなら頭が寄りかかれるような形状でサポートがあるのですが、今回はそれがないので、首から頭にかけてダラ~ンと横に倒れてしまいます。リアシートのセンターアームレストを出して、そこに寄りかからせようとしましたが、かなり低いので相変わらず頭がダラ~ン。首が辛そうな体勢です。これはうすうす予期していたことですが、4歳児はまだ首の骨格がもろいので、できれば頭部のサポートがあった方が安心です。ベルト型幼児用補助装置の適用年齢は3歳~12歳となっていますが、幼児に使用するにはこのあたりがちょっと不十分かなと感じました。

装着した完成形がこちら。確かに腰ベルトはちゃんと骨盤から下腹部を通っていますし、肩ベルトも肩の真ん中に来ていて、首にかかることがなくなります

 ただ、チャイルドシートが高価だから、面倒だからと何もしないよりは絶対にいいですよね。米国と欧州の衝突試験規格を取得済みとのことなので、安全性はかなり高まるはず。それに普段、自分のクルマではチャイルドシートを使っていても、旅先のタクシーや観光バス、友達や実家のクルマでは「ちょっとくらいいいか」と気が緩むケースもあると思うんです。そんな時にこのベルト型幼児用補助装置があれば、悲しい事故を1つでもなくすことができますよね。

 さらに、このベルト型幼児用補助装置でいいなぁと思った点がもう1つ。日本の道交法では、6歳未満の子供へのチャイルドシート着用が義務付けられていますよね。なので、車両のシートベルトが適正に装着できるか否かではなく、単に「うちの子、もう6歳になったからチャイルドシートいらないよね」と、違反になるか否かで判断する親も多いと感じます。でも、本当に子供の安全を考慮するなら、それはナンセンス。何歳になろうが、ちゃんと車両のシートベルトが適正に使える体型になるまで、何らかの補助装置を使ってあげるべきだと私は思います。

 その点、これなら推奨年齢が3歳~12歳、推奨体重が15kg~36kgと幅広いので、6歳を区切りとすることなく使い続けようという意識を喚起する効果もありそう。そこがよい点だと思っています。

 というわけで、わが家ではこれまでどおり、日常的にはチャイルドシートを使いますが、友達のクルマに乗せてもらう時や、わが家のクルマに友達を乗せる時などもたまにはあるので、スペアとして常に携帯しておくことにしました。いざという時のための命綱みたいなものですね。これなら置き場所を取らないので、じぃじ、ばぁばにも気軽にプレゼントできますから、帰省時のためにあらかじめ贈っておくのもよさそうです。

まるも亜希子

まるも亜希子/カーライフ・ジャーナリスト。 映画声優、自動車雑誌編集者を経て、2003年に独立。雑誌、ラジオ、TV、トークショーなどメディア出演のほか、モータースポーツ参戦や安全運転インストラクターなども務める。海外モーターショー、ドライブ取材も多数。2004年、2005年にはサハラ砂漠ラリーに参戦、完走。日本自動車ジャーナリスト協会(AJAJ)会員。17~18年日本カー・オブ・ザ・イヤー選考委員。女性のパワーでクルマ社会を元気にする「ピンク・ホイール・プロジェクト(PWP)」代表。ジャーナリストで結成したレーシングチーム「TOKYO NEXT SPEED」代表として、耐久レースにも参戦している。過去に乗り継いだ愛車はVWビートル、フィアット・124スパイダー、三菱自動車ギャランVR4、フォード・マスタング、ポルシェ・968など。ブログ「運転席deナマトーク!」やFacebookでもカーライフ情報を発信中。