まるも亜希子の「寄り道日和」

“憧れのクルマ”「300SL」と「SVX」

石原裕次郎ファンだった母の影響もありつつ(?)、ずっと憧れていたメルセデス・ベンツ「300SL」で、念願叶ってドライブできた最高の日。ガルウイングのドアを開けたらチェック柄のシートがキュートだったり、驚いてばかりのドライブでした

 死ぬまでに1度は乗ってみたい“憧れのクルマ”。皆さんそれぞれ胸に秘めているのではないでしょうか?

 私にはそんなクルマが3台ありまして。どれも、幼いころに映画で見て「いつかは」と思ったものだったり、この業界に入ってから先輩たちに話を聞いて、「うわ~、乗ってみたい!」と鳥肌立ったり、きっかけはイロイロなんですが、そのうちの1台であるメルセデス・ベンツ「300SL」は、2012年6月になんとイギリスで、念願叶って乗ることができました。

 1950~1960年代に現在の「SLクラス」の初代モデルとして登場した300SLは、なんと言ってもガルウイングが特徴的。最初に見たのはどこだったか、私は丸目のヘッドライトやセクシーなボディラインにもひと目惚れで、こんなに美しいクルマがミッレミリアをはじめとしたモータースポーツで大活躍していたなんて、生で見てみたかったなぁと憧れたものでした。もしかしたら、母が石原裕次郎さんの大ファンだったので、その愛車として有名だった300SLを見たのが最初かもしれませんけどね(笑)。

 そんな憧れの300SLでのドライブを叶えてくれたのは、メルセデス・ベンツが本国で大切に動態保存している1台。2012年はSLの50周年記念の年だったこともあって、グッドウッド・フェスティバル・オブ・スピードで記念の催しがあり、たまたまそれを取材するツアーに参加させてもらったところ、くじ引きでドライブ権をゲット! ジャーナリストの先輩・佐藤久実さんと2人1組になって、イギリスのモータースポーツ発祥の地であるブルックランズから走らせてもらいました。

1952年に登場した300SLのインテリアはとてもエレガント。細いスポークの大きなステアリングも当時らしいものですね。並んでいるスイッチは、どれが何の役割なのかもはや不明。エアコンはなく、メーターも合っているのか怪しい感じでしたが、ドライブフィールは世界初のガソリン直噴エンジンということで、いい味があって素晴らしい体験になりました

 当時の私のブログには、「ガルウイング開けて、ヨイショと幅広サイドシルを乗り越えてシートに座れば、そこは1950年代☆ 窓は三角窓しか開かないし、シートは意外とふかふかだし、カルチャーショック満載でしたよ」と書いてあります。

 途中、グッドウッドに向かうクルマで大渋滞になり、ジリジリと上がる水温に心臓がバクバク! 車内にはモワーッとした熱風が出てきて、たまらずガルウイングを開けたままノロノロと走ったことを思い出します。それでも、あの「時代を飛び越えてドライブしている」感覚はもう、夢の中にいるような気持ちでした。またいつか、再会できたらいいな。

 さて、時は巡って2019年。しかもつい1か月前。2台目の憧れのクルマ、スバル「アルシオーネ SVX」に乗ることができたのです! きっかけは、数年前に何かのアンケート企画で「いつか乗ってみたい憧れの国産車はなんですか?」という質問に私が「SVX」と答えていたのを、「SUBARU MAGAZINE(スバルマガジン)」の編集者さんが覚えていてくださってのこと。同誌ではボロボロの状態からコツコツとレストアして仕上げたSVXを所有していて、「タイヤも替えて、いい状態になったので、よろしければ試乗しませんか?」とお声がけいただいたわけなのです。そりゃもう、速攻で「ぜひ!」とお返事しましたよ~。

つい先日試乗した“憧れのクルマ”2台目、スバル「アルシオーネ SVX」とご対面! 同じように憧れていたという、ジャーナリストの先輩・竹岡圭さんとワイワイ女子会的な試乗会で楽しかった~。お台場周辺を2周したぐらいでしたが、欲しいと思うほどいいクルマでした

 アルシオーネ SVXは1991年~1997年に販売されていた、スバルとしてはとても珍しい2ドアクーペモデルで、3.3リッターの水平対向6気筒エンジンを搭載。デザインのベースはかの有名なジウジアーロということで、どこか宇宙船のような雰囲気さえ漂う独創的なところがたまらないじゃないですか!? 私は20年前に、ジャーナリストの大先輩からこのアルシオーネ SVXに乗った時の衝撃をとーとーと聞かされ、そんなにすごいクルマがあるんだ!と、密かに「いつか乗ってみたいリスト」に仲間入りさせていたのでした。

 20年越しでついにドライブした感想は、ぜひスバルマガジンの最新号 Vol.22をご覧いただきたいのですが、偶然にも同じようにアンケートでSVXと書いていた(笑)という先輩・竹岡圭さんとご一緒して、大盛り上がりしちゃいましたよ。

ベースがジウジアーロデザインということもあって、この独創的なグラスエリアがSVXの大きな魅力。ドアウィンドウなんて、こんなにガラスが大きいのに開閉するのは内側の小さな窓だけという(笑)。昔のクルマはこういった「無駄の美学」みたいなところもいいですよね

 そして残るはあと1台。それは小学生のころに映画で見て以来、ずっと心に刻まれている1959年のキャデラック。そう、プレスリーやマリリン・モンローもこよなく愛したという、とんでもなく大きなテールフィンが特徴的なオープンカーです。できればやっぱり、色はピンクがいいなぁ……。いつかドライブする日が来るのかどうか、ドキドキしながら楽しみにしていたいと思います。

まるも亜希子

まるも亜希子/カーライフ・ジャーナリスト。 映画声優、自動車雑誌編集者を経て、2003年に独立。雑誌、ラジオ、TV、トークショーなどメディア出演のほか、モータースポーツ参戦や安全運転インストラクターなども務める。海外モーターショー、ドライブ取材も多数。2004年、2005年にはサハラ砂漠ラリーに参戦、完走。日本自動車ジャーナリスト協会(AJAJ)会員。17~18年日本カー・オブ・ザ・イヤー選考委員。女性のパワーでクルマ社会を元気にする「ピンク・ホイール・プロジェクト(PWP)」代表。ジャーナリストで結成したレーシングチーム「TOKYO NEXT SPEED」代表として、耐久レースにも参戦している。過去に乗り継いだ愛車はVWビートル、フィアット・124スパイダー、三菱自動車ギャランVR4、フォード・マスタング、ポルシェ・968など。ブログ「運転席deナマトーク!」やFacebookでもカーライフ情報を発信中。