まるも亜希子の「寄り道日和」

ちょっとマニアックな自動車雑誌「Tipo」編集部員時代の思い出

ステージMCを一緒に盛り上げていただいた、芸人こにわさん(中央)とエンドレスレディの大隅麻以ちゃん。こにわさんは、もともとクルマが好きだったそうですが、SUPER GTの公式応援団長&オフィシャルステージMCとして6年目を迎え、モータースポーツ愛がハンパなくて驚きました。そこにテニスなどの話題も加えたトークはさすがの面白さ! 各地のサーキットで生こにわさん、エンドレスレディに会えると思います

 大学時代にたまたま手に入れた、1970年代のイタリアンオープンカー、フィアット「124 スパイダー」。本当はフォルクスワーゲン「カルマンギア」のカブリオレが欲しかったのに、当時は価格が300万円以上ついていて貧乏学生には買えず、「そんなら似たようなクルマがあるから70万円でいいよ」とショップ定員さんの言うまま、わけもわからず食いついてしまったのでした。でもまぁ、見た目はさすがピニンファリーナデザインでステキだし、剥げかかった朱色のボディカラーをイエローにオールペンしたら見違えるようになったし、すっかりお気に入りに。そしてショップ定員さんが、「イタ車に乗るならこれ読まなきゃ」と貸してくれたのが、1989年創刊のちょっとマニアックな自動車雑誌「Tipo」でした。

 時はまさに、超買い手市場の就職氷河期。編集者になりたくて出版社への就職を希望していたものの大苦戦していた私は、Tipoを読み終えて最後のページに小さく出ていた「編集部員募集」の告知に気がついたのです。これが、私のその後の運命を大きく変えた瞬間でした。Tipo編集部初の新卒社員として、1995年の9月から研修と称してまずはアルバイトで編集部に仲間入りし、1996年4月に正式に入社。形ばかりの入社式のようなものをやっていただいたのですが、創刊編集長であり社長でもあったヤマケンこと山崎憲治さんの話が長すぎて、貧血で倒れたのを今でも覚えています(笑)。

 編集部に入った当初は、クルマが好きという気持ちはあるものの、知識も経験も皆無。周囲で飛び交う「ウェーバーのほにゃららパイのウンたらかんたら」なんて会話にはまったくついていけず、空き時間を見つけてはTipoのバックナンバーを読み漁り、書庫にズラリと並んでいた「カーグラフィック」をつまみ読みしたりして、懸命に覚えようとしたものでした。製作費が潤沢にあるわけではなく、というかむしろ、「これっぽっちの予算でどうやって面白い企画を作るか」というのが肝みたいな編集部だったので、「できる・できないを考えるより先にやってみる」というのを叩き込まれた気がします(笑)。

 そして、「どんな状況も楽しんじゃう」というのもTipo編集部みんなの得意技。19年前に、「西日本でもTipoのイベントをやってほしい」という声に応えて、岡山国際サーキットで「ティーポ・オーバーヒート・ミーティング(TOHM)」を開催した時に、もちろん私も編集部員として参加したんですが、イベントで展示したり同乗試乗で走らせたりするクルマたちは、ぜんぶスタッフが東京から自走して行ったんですね。きっと、普通なら積載車を手配して運んでもらって、自分たちは飛行機でサクッと岡山入りすることが多いと思うのですが、当時はそんなことはまったく考えつかず、自走していくのが当然だと思っていました。みんなでちょっと長いツーリングみたいな気分で、SAに寄り道しながらワイワイ行くのも楽しかったんですよね。時にはその珍道中まで記事にしちゃったりして。

 そして2019年、7月14日に開催された創刊30周年の記念すべきTOHMに、私は5年ぶりに夫とともに参加させてもらうことになりました。あれからもう19年も経つんだから、さすがにみんな飛行機で行くんでしょ? と思いきや! 出発前日にTipo編集部の竹内さんがピンポーンと自宅にやってきて、「明日乗って行ってもらうクルマで~す」って(笑)。今でも自走で岡山まで行くのが変わっていないことに驚くやら、あきれるやら……。でも、それでこそTipoだよね、と嬉しくなりました。

 そんなわけで、イベント前からすでにスタッフは長旅に加え、会場の準備も自分たちでやるから疲労困ぱいです。でもどこかからアドレナリンが湧き出てきて、イベント当日には参加者の皆さんに混じってサーキットを走っちゃうスタッフまでいるくらい、全身全霊で楽しんでいるんです。

Tipoの2代目編集長を務め、現在はフリーとして大活躍している嶋田智之さんとも、久しぶりにステージでオイル添加剤「ZOIL」のスペシャルトークをご一緒させていただきました。編集部ではしょっちゅう、ヘマをすると「お前マジかよ~」と怒られてましたが(笑)、今では優しい大先輩です

 私はメインステージのMCとして、編集部では2年先輩のナパこと三宅康朗さんと、松岡修造さんのモノマネで大人気の芸人・こにわさんと一緒に、トークショーやジャンケン大会を盛り上げさせていただきました。イベントを仕切ったことのある人なら驚くと思うのですが、台本一切ナシ! 最初から最後まですべてアドリブ、フリートークで、ブースを出展してくださっているフォルクスワーゲンやルノー、ロータスの皆さんにまで無茶ぶりで困らせて巻き込んじゃうという(笑)。でも、私にとってはそのライブ感がたまらなく楽しくて、ラストは突然降り出した雨の中、豪華商品をかけたジャンケン大会で完全燃焼でした。

TOHM名物とも言える、フィナーレの全員参加のパレードラン。雨がちらつく中、3列に並んだ長~いクルマたちの列がゆっくりと岡山国際サーキットのコースをまわります。各ポストのオフィシャルさんたちが、旗を振って見守ってくれるのも感動的なんです。みんな、雨の中最後まで残ってこれに参加するのを楽しみにしてくれるので、本当にありがたいことですね。ジャンケン大会でずぶ濡れになった皆さん、風邪など引いてないでしょうか? それだけが心配です

 そしてTOHMのフィナーレは、クルマで来場くださった人なら誰でも参加OKのパレードラン。長い歴史の中には、岡山国際サーキットのコース1周が参加車両でつながってしまった、なんて時もあったと聞いていますが、今年も本当にたくさんのクルマがライトONで長~い列を作ってくれて壮観でした。私はサーキットタクシーで活躍したジャガー「I-PACE」に娘と一緒に乗って参加。まさか、自分がママになってもこの感動が味わえるとは、19年前は想像もしていなかったことです。フリーになってもこうして仲間に入れてくれるTipoに感謝! そして、いつもTipoを支えてくれる皆さんがいるから、この感動も続いていくんだということと、もう1つ。自動車メーカーがいつまでも魅力的なクルマを作り続けてくれないと、こういうイベントも途絶えてしまうでしょう。みんなが気持ちを1つにして、クルマの楽しさが続いていく、ということを改めて実感させてもらった1日でした。

5年ぶりに参加したパレードランは、スタッフの粋なはからいで、助手席に娘を乗せてジャガー「I-PACE」を走らせました。ちなみに夫はすぐ前でホンダ「NSX」に乗っていて、家族3人でこのイベントに参加できたことが本当に嬉しかったです。ま、娘は乗ってすぐにスピ~と気持ちよさそうに眠ってしまい、パレードの間ずっと起きなかったのですが(笑)。少しでも記憶に残っていてくれたらいいなぁと願うばかりです

まるも亜希子

まるも亜希子/カーライフ・ジャーナリスト。 映画声優、自動車雑誌編集者を経て、2003年に独立。雑誌、ラジオ、TV、トークショーなどメディア出演のほか、モータースポーツ参戦や安全運転インストラクターなども務める。海外モーターショー、ドライブ取材も多数。2004年、2005年にはサハラ砂漠ラリーに参戦、完走。日本自動車ジャーナリスト協会(AJAJ)会員。17~18年日本カー・オブ・ザ・イヤー選考委員。女性のパワーでクルマ社会を元気にする「ピンク・ホイール・プロジェクト(PWP)」代表。ジャーナリストで結成したレーシングチーム「TOKYO NEXT SPEED」代表として、耐久レースにも参戦している。過去に乗り継いだ愛車はVWビートル、フィアット・124スパイダー、三菱自動車ギャランVR4、フォード・マスタング、ポルシェ・968など。ブログ「運転席deナマトーク!」やFacebookでもカーライフ情報を発信中。