まるも亜希子の「寄り道日和」

新型センチュリーを堪能した、わが家の超贅沢ロングドライブ

伊勢湾岸自動車道の刈谷ハイウェイオアシスにて、観覧車をバックに新型センチュリーをパチリ。全長5.3m超え、全幅1.9m超えのわりには駐車がしやすいのですが、乗り降りには気を使います。やはり白手袋をした運転手がドアを押さえていた方がいいですね(笑)

 これは夢か幻か!? 一生一度の超贅沢家族旅行か!? なんとなんとわが家は岡山から東京まで、760kmものロングドライブを新型「センチュリー」で堪能させていただいちゃいました~。

 と言っても、これはもちろん重要な任務でございまして。岡山国際サーキットでのイベント展示で使用した新型センチュリーを、傷1つなく丁寧に運転して帰京し、トヨタ自動車さまにお返しする役目を仰せつかったのでございます。なんたって、2018年に21年ぶりに全面改良されて、価格は2000万円に届こうかという超高級車のセンチュリー。飛び石なんて跳ねてきた日には一大事ですから、慎重に任務を遂行せねばなりません。

 とはいえ、朝10時に岡山国際サーキットを出発するところから、もうウキウキして大はしゃぎのわが家(笑)。後席にジュニアシートを設置して娘を座らせ、リアウィンドウのレースのカーテンを少しだけ開けて外から見れば、「うわ~、どこのお嬢さまって感じ!」なんて写真を撮りまくって親バカ全開です。だってだって、こんな機会は本当に一生一度かもしれないんですもの~。なんてもう、庶民まるだしですよね(笑)。

 ひとしきり新型センチュリーとの記念写真を撮りまくったあと、いよいよ出発です。高速道路に入るまで、約1時間30分ほどは一般道を走ってみました。

 まずは運転を夫に任せ、娘の隣りで後席に並んで座った私なのですが、実は朝から珍しくひどい頭痛に悩まされていまして、優雅に後席の快適性を満喫するにはほど遠い状態。なので、のちに気がつくのですが、のっけから大きな間違いを犯してしまっていたのです。ただこの時は、強い日差しを遮ってくれるカーテンと、電動リクライニングで身体をリラックスさせてくれるシート、寄りかかるのにうってつけのセンターアームレストに「ありがたや~」と感謝しつつ、ひたすら眠りながら頭痛が治るのを待っていたのでした。

 そんなグロッキーな状態でも、後席の乗り心地になんともいえない「懐かしさ」を感じ取っていた私。路面への当たりがソフトで、凸凹を乗り越えてもグニャッとした感じで車体が動くのですが、そのあとすぐに収束して揺れが長引かない感覚。これって、昔のクラウンみたいというか、タクシーみたいというか、子供のころから「ちょっと高級な日本車」に乗った時に感じてきたあの乗り心地じゃないですか。もちろん、そこからかなり進化していることは間違いないのですが、目指す路線は変わってない印象です。例えばロールス・ロイスやマイバッハのような欧州のショーファーカーだと、もう少しビシッとした硬さが前面に出た乗り心地なので、それとは違う日本車ならではの、柔らかさと安定感を両立させたような感覚があって嬉しくなりました。

 運転手の夫は淡々と走り続け、いつしか新型センチュリーは高速道路を降りて大阪市街へ。大阪在住のカメラマンさんに聞いた、オススメのお好み焼き屋さん「かく庄」でランチタイムです。お店の前に横付けした新型センチュリーは、順番待ちしている人たちからかなり注目されてしまって、そこからドアを開けて降りていくのはめちゃめちゃ勇気がいりました。いや~、えらいすんません、乗ってたのが私なんかで(笑)。

 にしても、お好み焼きの美味しさは格別でした。おかげで私の体調もだんだんよくなり、再び高速道路をひた走って名古屋を過ぎ、娘が「観覧車に乗りたい!」というので伊勢湾岸自動車道の刈谷ハイウェイオアシスに立ち寄ったところで、ようやく復活! なのでここからは私が運転手になり、夫を要人扱いにしてあげることに(笑)。

刈谷ハイウェイオアシスからは、いよいよ私が運転席へ。どんなに後席が快適なクルマも、やっぱり運転してみたくなってしまうのは職業病ですかね~。前席と後席は完全に区切られていて、当たり前ですが子育てには向いておりません(笑)

 で、どれどれ~と夫が後席に座ろうとした時に、「そういえばオットマンってあったよな?」と言うではないですか。ん? んんん?

 そうです。私が最初に犯してしまっていた間違いとは、娘を助手席の後ろ側に座らせ、自分が運転席の後ろに座ったことだったのです。なぜなら、オットマンは助手席のシートバック裏側に付いており、運転席の後ろに座ると使えないのでありました。まだ身長110cmの娘に、オットマンは必要ないですからね~。ほんと、大失敗! 助手席を最前端にスライドさせて、靴を脱いでオットマンを引き出し、リクライニングでシートを寝かせてゴロリと横になった夫はもう、満面の笑みです。しかも大画面でTVが見られることに今さら気がつき、家でもTV大好きの夫には最高のおもてなし。娘と2人で楽しそうに盛り上がっております。

私が運転席に収まったころ、後席では左右をチェンジした娘と夫が大はしゃぎ。助手席の後ろにオットマンが付いているので、まるで浜辺のビーチチェアーのように足を伸ばしてリラックスできます。100Vコンセントや手元を照らせるLEDライトもあるので、バリバリのビジネスマンが仕事をしながら移動するのもバッチリ

 ま、私はここから運転手ですからね。後席のことは気にしないことにして、さぁV8エンジンよ、唸りを上げろ~!とばかりに走りはじめます。しかし、その加速フィールのお上品なことといったら。よく考えたら新型センチュリーは5.0リッターV8エンジンのハイブリッドですものね。発進から唸りを上げるはずなんかないのでした。そして車両重量が2.3tを超えていますから、鋭い加速という感じでもないのですが、速度が乗ってきてからはアクセルを踏み込むとドカ~ンッという波のようなパワーが押し寄せてくる感覚。そして乗り味も、ザッブ~ンと来る波を捕まえて滑るように走る、まるでクルーザーを操っているような錯覚さえ覚えてしまいます。ずっと運転していると、「世間の荒波よ、どんとこい!」なんて、大船に乗ったように心の余裕が出てくるというか……。なんでしょうかこれは、センチュリーマジックなんでしょうか。

 それにしても、全長5.3m超えの巨体だというのに、夕食をいただこうと立ち寄った浜名湖SAで駐車するときも、給油しようとガソリンスタンドに寄ったときも、まったく扱いにくさを感じないことに感心しました。まぁ、ボンネットが長~いのでそこはちょっと気を使いますが、前方視界は開けているし、車両の幅はつかみやすいし、後方も見やすいので取りまわしのストレスがないんですね。ここはやはり、「運転手」という職業のことをちゃんと考慮してあるんだなと感じました。

 それから、長い距離を運転していると、どうしても単調な時間に飽きたり眠気を感じたりしがちですけど、新型センチュリーはちょいちょい、「運転中に失礼します。もしよろしければ、道路に関する雑学でもお聞かせしたいのですが、いかがでしょうか?」なんてユーモアあふれる執事のように、突然話しかけてくるんです。最初はギョッとしたんですが、試しに「はい、お願いします」と答えて雑学を聞いてみると、「日本で一番大きい道路標識は畳◯畳分もある」だとか、思わずへぇ~と前のめりになっちゃうネタが満載。これなら退屈しないで済みそうですよね。

 さぁ、いよいよ760kmロングドライブのゴール、自宅が見えてきました。私が運転を交代してからは360kmほど走ったでしょうか。ほとんど疲れを感じないのは、やっぱりシッカリと作られているクルマだからかなと感じます。最後の心配ごとは、わが家の狭い駐車場に新型センチュリーが入るのかどうか? ということでしたが、なんとかギリギリで収まり、ホッとひと安心。で、お偉い方々なら気にもしないでしょうが、庶民の私たちには気になるのが……。そう、燃費ですよね~。新型センチュリーの実用燃費、知りたいなぁと思ってちゃんと測ってみましたよ。760kmのうち9割は高速道路を走って、トータルで12.2km/Lという結果に。JC08モード燃費の13.6km/Lには及びませんでしたが、どの国のV8エンジン搭載車よりきっと優秀だと思います。

 というわけで、わが家の夢のような超贅沢ロングドライブ。私は後席で足を伸ばして優雅にくつろげなかったことだけが心残りですが(笑)、運転してもなかなか快適ということが分かったので、クルマ好きとしてはヨシとしましょうかね。日本が誇るショーファーカーの新型センチュリーは、日本人の心を継承していくクルマでもあるのだと感じさせてくれたのでした。

たっぷりの容量が確保されている新型センチュリーのトランクルームで、普通のクルマにはないものを発見。そうです、ホコリ取りに欠かせない「毛ばたき」と、ボディの汚れを優しくふき取る「セーム革」。この革は素材を傷つけずに皮脂汚れなどもキレイにすることができるそうで、高級アクセサリーのお手入れに使われることが多いのだとか。いや~、やっぱり高級車はお手入れの道具もお高そうだし、手間ヒマかけて大切にしていくべきものだということですね

まるも亜希子

まるも亜希子/カーライフ・ジャーナリスト。 映画声優、自動車雑誌編集者を経て、2003年に独立。雑誌、ラジオ、TV、トークショーなどメディア出演のほか、モータースポーツ参戦や安全運転インストラクターなども務める。海外モーターショー、ドライブ取材も多数。2004年、2005年にはサハラ砂漠ラリーに参戦、完走。日本自動車ジャーナリスト協会(AJAJ)会員。17~18年日本カー・オブ・ザ・イヤー選考委員。女性のパワーでクルマ社会を元気にする「ピンク・ホイール・プロジェクト(PWP)」代表。ジャーナリストで結成したレーシングチーム「TOKYO NEXT SPEED」代表として、耐久レースにも参戦している。過去に乗り継いだ愛車はVWビートル、フィアット・124スパイダー、三菱自動車ギャランVR4、フォード・マスタング、ポルシェ・968など。ブログ「運転席deナマトーク!」やFacebookでもカーライフ情報を発信中。